トヨタ RAV4 のハイブリッドは速い?試乗レビュー!
更新日:2024.09.09
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けっこうゴツいイメージに振ってきた...。それが、約3年ぶりに復活したトヨタRAV4の第一印象。初代RAV4は、それまで武骨だったクロスカントリーモデルのヨンク(当時はまだSUVという言葉が定着していなかった)に対して乗用車ライクな雰囲気やメカニズム、そして乗り味が斬新でした。
文・工藤貴宏/写真・宮越孝政
文・工藤貴宏/写真・宮越孝政
RAV4を試乗レビュー!その①|初代の誕生から25年の時を経て....。
日本国内の販売を約3年間、お休みしていた期間を経てボクらの前に姿を現した新型RAV4は、以前よりもずっとたくましい姿に。このデザインのテイストは、SUVに対する世の中の空気の変化を反映したものと考えられます。
かつては「乗用車ライク」なことが個性でしたが、欧米においては新車で販売される乗用車の半分以上がSUVとなった今、乗用車ライクなことは個性にはならないということなのでしょう。トヨタでいえばクロスオーバーのC-HRは乗用車らしさを主張するいっぽうで、ひとまわり大きなRAV4は武骨な力強い雰囲気で存在感を主張するというわけですね。
それは、クルマに対してエネルギッシュな雰囲気やワイルド感が好まれる北米がメインマーケットだからなのかもしれません。ライバルであり、北米を最大のマーケットとするSUBARUフォレスターもデザインの武骨さは同じ方向であり、いっぽうでエレガントさをウリにするマツダCX-5とは逆なのはメーカーの考え方の違いなのだろうし、おもしろいところです。
RAV4を試乗レビュー!その②|スタイリングは2種類を用意。
スタイリングは2種類。ガソリンエンジンのトップグレードと「Adventure(アドベンチャー)」とそれ以外に分けられています。新型RAV4は歴代モデルとしてはじめてハイブリッドモデルをラインナップしますが、かつてのように“ハイブリッドとガソリン車”ではなく、“一般モデルとスペシャリティモデル”でエクステリアを差別化するのは興味深い試みですね。
「Adventure」において目立つ違いはワイド感を強調したフロントバンパーやサイズが大きなフェンダーアーチモールなど。個人的な好みでいえば、せっかくのタフネスイメージなので「Adventure」を選びたいと思います。
写真:Adventure
インテリアは、液晶パネルを7.0インチのTFT液晶を組み合わせたメーターパネル(「X」系は4.2インチ)、助手席前、センター、そして運転席の右と大きなトレーを3つも用意したダッシュボード、そしてダイヤルを組み合わせた走行モードセレクター(「X」系には非採用)が特徴的。ダッシュボード自体のアッパー面を低くしたことで視界も良好で、運転しやすさをしっかり考えていることが伝わってきます。
写真:Adventure
シートは「ノーマル」「スポーティ」「スポーツ」と3タイプあるTNGA用ラインナップのうち、「スポーティ」をセレクト。ノーマルに比べると背もたれだけでなく座面のサイドサポートも大きくて硬く設計され、姿勢保持性能がよくなっています。
また足元も、支点を下にした、いわゆる「オルガン式」のアクセルペダルや大型サイズかつ理想的な足の置き方を考えてドライバーの中央へやや傾けたフットレストなど、運転環境を整えるための様々な工夫を採用。シートにはヒーターに加えて空気を吸い込むベンチレーション機能を用意しているので、夏もムレにくく快適でしょうね。
写真:Adventure
後席はひざまわりにゆとりがあるのが印象的で、リクライニングは2段階。左右席は人が座る部分を抉って身体が左右に動かないように配慮していますが、これは欧州車的な手法。いずれにせよ、快適移動のことをしっかり考えているのだと理解できます。
RAV4を試乗レビュー!その③|走り出した感触は?一般道で確かめてみた
まず乗り込んだのは、ハイブリッドの4WDモデル。178psの2.5Lエンジンに120psのフロントモーターと54psのリヤモーターを組み合わせることで発生するシステム出力は222ps。これだけのパワーがあれば速さも十分で、ハイブリッドモデルはガソリン車に比べて燃費がいいだけでなく加速も速さも両立している位置づけと言えます。
とはいえ燃費はFFモデルのJC08モードでも25.2km/Lとプリウスなどに比べると驚くほどの数字でもないのですが、それがポイント。燃費最優先ではなく、走りの感覚を重視しているのです。すなわち「ラバーバンドフィーリング」と呼ばれる、トヨタ式ハイブリッド特有のアクセル操作に対する反応の悪さを、感覚的な要因も含めて排除することに注力されたシステムといえますね。
ちなみに、2.5Lエンジンを組み合わせたハイブリッドシステム自体は基本的にカムリと共通設計です(ただしカムリはFFのみの設定)。
特に印象的だったのが、爽快になった加速感。つまりアクセルを踏むとまずは回転を高めてから車速を上げるという効率重視はひとまず置き、加速開始時のエンジン回転数を落としてエンジン回転上昇と車速上昇がリニアにリンクするよう心掛けたり(ドライバーの爽快感に与えるこの効果は大きい)、あえて変速比を固定してMTやATのようにエンジン回転上昇と車速上昇をリニアにしたステップ変速を取り入れたりと、様々な工夫を組み込んでいます。
その効果はしっかりと感じられ、アクセル操作に対する挙動はこれまでのトヨタ式ハイブリッドからは想像できないほど。これならしっくりくる、と素直に思いました。
いっぽうガソリン車に乗り換えると「こっちのほうが落ち着く」という気持ちになったのも正直な印象。その理由と感じたのが日本のトヨタブランド車では初採用となる「発進ギヤ付きのCVT」の出来の良さで、CVT特有のダルさを一掃。
これはCVTに発進用の1速ギヤを追加したユニットですが、発進ギヤによって出だしの機敏さがもたらされただけでなく、加速時のアクセル操作に対する応答性もかなりよくなっていることに驚きました。CVTらしいかったるさがないのです。ベルトの狭角化による変速速度の向上やプーリー小型化で慣性を削減して変速応答性が高まっているのが効いているようですね。
というわけで個人的な購入対象として選ぶならば、よりクルマとの対話が楽しめるガソリン車のほうが魅力的というのが結論。いずれにせよ、ガソリン車もちろんハイブリッドまでドライバーの感性に寄り添った味付けや仕掛けを組み込んだことに、これまでのトヨタとの違いを感じますね。
RAV4を試乗レビュー!その④|新型RAV4にはパワートレーンを3タイプも用意
写真:走行イメージ
パワートレーンといえば、新型RAV4には3タイプもの4WDシステムが用意されているのは異例でしょう。
ハイブリッド用は新型「E-Four」と呼ぶ、後輪をモーターだけで駆動するシステムを採用。驚いたのは前後トルク配分で、FF状態の100:0から、最大でなんと20:80といいます。モーター駆動で後輪に8割というのはこれまでのE-Fourとは大きな違い。大型モーターを採用したことで、必要に応じて後輪へグググッとトルクを伝えて走行安定性を高めるというわけです。
写真:走行イメージ
ガソリン車は、「ダイナミックトルクコントロール」と呼ぶタイプをベーシックとし、上位システムとして「ダイナミックトルクベクタリング」を設定。いずれも電子制御のカップリングを使ったFFベースで、最大で50%のトルクを後輪へ送ります。ただし“トルクベクタリング”は、その名の通りにリヤの左右輪へ送られるトルク配分をアクティブに切り替える機構も搭載。左右0:100から100:0まで自在に配分します。
左右のトルクに差をつけることで、旋回中はより曲がりやすくするとともに、オフロードにおいては設置しているタイヤへより多くのトルクを送ることで走破性を高めるというのが狙い。ホンダのレジェンドやNSX、そしてSUVでもBMW・X6Mやランボルギーニ・ウルスなど高価なモデルに搭載されることがほとんどで、この価格帯の車両に組み込まれるのは珍しいことですね。
写真:走行イメージ
その違いを、フラットダートとタイヤが浮くほどの起伏があるオフロードで試すことができました。
まずフラットダートでは車速を高めてコーナリング。「ダイナミックトルクベクタリングのほうが曲がりやすいかな」と思えるものの、今回の条件でははっきりとした違いまでは感じられませんでした。コーナリング中に一瞬だけ前荷重にしたのちにアクセルを踏み込んだりもしてみましたが、トルクベクタリング4WDでもアクセルオンで積極的にテールスライドするようなダイナミックな走りを実現するというよりはライントレース性を高めてコーナリングを安定させているような印象でした。
写真:走行イメージ
さらに違いが明確だったのは、穴やこぶがあってタイヤが浮くような、いわゆるモーグル路面。リヤタイヤが浮いたときは、どちらもシステムでも接地しているタイヤへしっかりとトルクを送ることを確認できました。サスペンションストロークを長くすることでタイヤを接地させてトラクションを稼ぐのではなく、電子制御で路面にトルクを伝える今どきのSUVです。
しかし、しっかり接地しているタイヤへ駆動力が伝わるまでにタイムラグが多い「ダイナミックトルクコントロール4WD」に対し、「ダイナミックトルクベクタリング4WD」は駆動力配分の変化がスピーディかつなめらか。普通の人はそんな激しい場所は走らない……と思うかもしれませんが、部分的に凍った雪道の上り坂での発進などでの効果は相当大きいはずです。
写真:走行イメージ
雪の降らない地域や悪路走行をしない人であれば積極的に選ぶ必要がないともいえる「ダイナミックトルクベクタリング4WD」ですが、もし雪道を走る機会が多いのなら選んでおくと安心でしょう。
新型RAV4に乗って強く感じたのは走りへのこだわり。それはこれまでよりもフィーリングを重視したハイブリッドだったり、CVTを組み合わせているとは思えないほど爽快なガソリン車のパワートレインだったり、トルクベクタリングを組み込んだ4WDシステムだったりするわけです。初代RAV4から考えるとずいぶんと走りにこだわるようになったものですね。
「もっといいクルマをつくろう」。
こうして最新のトヨタ車に乗ってみると、豊田章男社長が常々口にしているそんなテーマが、しっかりと開発にも貫かれていることを実感するわけです。
工藤貴宏|TAKAHIRO KUDO
1976年生まれの自動車ライター。クルマ好きが高じて大学在学中から自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。卒業後に自動車専門誌編集部や編集プロダクションを経て、フリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジン搭載のマツダCX-5。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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