SUZUKI JIMNY (スズキ ジムニー) は少し“見栄を張った”オフローダー【ライアン塚本のCars of Life】

カラッとした天気の南カリフォルニアでは、どんな服を着るか以上に、どんなクルマに乗るかが自分自身を最も表現する要素のひとつであることに気づく。一年を通して素晴らしい天気が続くものの、ラッシュアワーのあの大渋滞のせいで、外で過ごす時間以上に車内で時間を過ごすことが多くなるのだ。いざ外に出れば、人々は互いの顔ではなく、互いのクルマを見る。ハイブリッドなのか、SUVなのか、2ドアのスポーツカーなのか…どんなクルマを選ぶかが、その人の情熱や趣向を表すのだ。真面目なオフロードSUVに乗るということは、舗装路がない地域に住んでいるか、もしくはしばしばトランクに寝袋とランタンを積み込んで、人の群れや街のネオンから逃げるように自然の中で充実した時間を過ごすライフスタイルを持っている人間だということを意味している。

文・ライアン塚本

Chapter
どこまでいっても快適性は重要
他国のオフロードマニア達も大きな興味を示していた
「可愛い」はジムニーが誇りに思うべき特徴
唯一無二…軽自動車ながら洗練された1台
2倍以上のサイズがあるオフローダーにも恐れを見せない、謙虚なミニSUV…ジムニー

どこまでいっても快適性は重要

スズキ ジムニー 2019

しかし今、「クロスオーバー」という言葉はSUVにおいてスタンダードなものとなったのは知っての通りだ。

SUVを所有するために、週末にわざわざ森や湖で時間を過ごす必要はない。地球温暖化や空間の無駄遣いに罪悪感を感じる必要なく、スマートフォン以外何も載せず、フルサイズのSUVをカジュアルに乗りこなすこともできる。

自動車メーカーは自動車の効率を向上させようと際限ない努力を続けているが、特にここロサンゼルスの消費者は恥ずかしがることなく、環境対策よりも道路上の快適性を選んでしまう。

他国のオフロードマニア達も大きな興味を示していた

スズキ ジムニー 2019

しかしながら、新型スズキ ジムニーはレトロなスタイルとオフロードの力をコンパクトなサイズにパッケージングし、いろいろなことに無責任にならなくても、人々は真面目なオフロードSUVを持つことができるようになった。

そのスタイリングだけでも多くの人の心を掴んでいるので、ジムニーが3リンクリジッドアクスルサスペンションとパートタイム2速4WDシステムの搭載されたラダーフレームを採用していることを知る必要はない。

公式発表前にリークされた新型ジムニーの写真がネットに出回った時、世界中のカーマニア達が「ベビーGクラス」や「ミニランドローバー・ディフェンダー」や「ミニラングラー」だとこぞって呼んだ。

驚いたことに、米国のようにジムニーが販売されないような地域のオフロードマニア達は、その可愛らしい見た目に大きな興味を示していた。

「可愛い」はジムニーが誇りに思うべき特徴

スズキ ジムニー 2019

真面目なSUVに「可愛らしい」というのは、ムキムキな100kgのレスラーに対してシャベルとバケツを持った幼稚園児扱いするほどに侮辱的だろう。

熱狂的なファン達が望む性能を実現するため、汗水流して頑張ったエンジニア達をざわめかせるような言葉だろうが、実際、ジムニーにとって「可愛い」は受け入れられるものだし、より多くの特徴を与えている。

やはり日本製だからかもしれない。「クールジャパン」という言葉は日本国外の人にとって馴染みがないものかもしれないが、「可愛い」は日本を飛び出し、世界中を旅している。「可愛い」はジムニーが誇りに思うべき特徴だし、他のクロスオーバー車が望むような他の特徴も持ち合わせているのだから恥ずべきことではない。

唯一無二…軽自動車ながら洗練された1台

スズキ ジムニー 2019

アイデンティティという面でも、ジムニーは問題ない。東京の道路を駆け抜けても、舗装路において真面目なSUVがするべき走りを実現している。1,725mmという車高と1,475mmという車幅は、まるでブーツを履きながら竹馬に乗るような感じだ。

しかし一番驚かされたのは、黄色のナンバープレートながら、全てにおいて洗練されているということだった。

スズキ ジムニー 2019

ドアを開けても、他の軽自動車のように薄っぺらさは感じない。

もし大自然の中でライオンに襲われても大丈夫だという安心感を与えてくれる。車内も標準的な日本人であれば、腕も脚もゆったりとできるほどの空間がある。ただ、ヨガの上級者やとても(そう、本当にとても)静かな子ども以外、後部座席に喜んで座ってもらえるは思わないほうがいいだろう。

スズキ ジムニー 2019

あと、人を乗せるのか、物を載せるのか、決めておく必要がある。

後部座席を立てたままでは、ラゲッジスペースに数本の水のペットボトルを入れるのも難しい。前においても、ドアポケットは数枚の紙しか入れることができないし、センターコンソールは2つのカップホルダーとスマホやお財布用の小さなトレイしかついていない。

スズキ ジムニー 2019

シートポジションは高くて見晴らしが良いものの、ダッシュボードの上に浮いているような感覚はない。

奇妙なことに、箱のような出っ張りが、本来見なければならない前方の道路を遮ってしまっており、視認性はさほど良くない。そして高い目線のため、実際よりも車体が大きく感じる。

都市部での乗り心地は十分しなやかで、1時間ドライブすれば、自分が軽自動車に乗っていることも忘れてしまうだろう。一歩外に出れば、大胆なスタイリングが実際の大きさよりも大きな存在感を演出している。

2倍以上のサイズがあるオフローダーにも恐れを見せない、謙虚なミニSUV…ジムニー

スズキ ジムニー 2019

新型スズキ ジムニーは、十分な積載性やクロスオーバーSUVとしての利便性を持ち合わせていないかもしれない。

しかし、素晴らしいオフロード性能と驚くほど磨き上げられたオンロード性能は、それを補っている。2倍以上のサイズがあるオフローダーにも恐れを見せない、謙虚なミニSUVだ。

傲慢になったり、他のクルマの真似をしたりすることなく、まさに日本らしいクルマだ。スズキは大胆なスタイリングと妥協のない性能という最新車のハートを持ちながら、これまでのファンの期待に応えることに成功していることは特筆しなければならないことだと思うのである。

文・塚本ライアン|旅行写真家/エッセイスト

日系アメリカ人として米国・カリフォルニア州ロサンゼルスで生まれ、その地で育つ。日本語と英語を流暢に話し、日本の素晴らしい景色をカメラに収めつつ、日本文化と日本の乗り物について、外国人の視点で書くことを生業としている。イタリア製バイクの熱狂的なライダーでもある。