平成の名エンジン6選|2GR から RB26 まで伝説を生んだ国産パワーユニット
更新日:2025.05.30

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平成(1989〜2019)という約30年間に、日本メーカーは規制・燃費・モータースポーツという相反する要求をクリアしつつ、ハイパワーかつ独創的なエンジンを次々と投入しました。本稿では珠玉の6基を深掘りし、メカニズム・開発意図・走行フィールまで網羅します。
- Chapter
- トヨタ 2GR系|万能V6が支えた平成ベストエンジン
- 技術スペックと性能
- 開発背景と主な搭載車種
- ドライビングフィールと維持ポイント
- レクサス LFAの心臓 1LR-GUE|日本初500 ps超えの高回転NA
- 技術スペックと性能
- 開発背景と主な搭載車種
- ドライビングフィールと維持ポイント
- ホンダ F20C|9000 rpmが生むリッター125 psの高回転名機
- 技術スペックと性能
- 開発背景と主な搭載車種
- ドライビングフィールと維持ポイント
- マツダ 13B-MSP レネシス|平成最後のロータリーで味わう9000 rpm
- 技術スペックと性能
- 開発背景と主な搭載車種
- ドライビングフィールと維持ポイント
- 日産 RB26DETT|GT-Rをゴジラに変えた直6ツインターボ
- 技術スペックと性能
- 開発背景と主な搭載車種
- ドライビングフィールと維持ポイント
- トヨタ 1GZ-FE|国産唯一のV12で極上の静粛を実現
- 技術スペックと性能
- 開発背景と主な搭載車種
- ドライビングフィールと維持ポイント
- まとめ|平成名エンジンは“走る文化遺産”
トヨタ 2GR系|万能V6が支えた平成ベストエンジン
技術スペックと性能
排気量3.5L・V6・アルミブロック。2GR-FSEは直噴+ポート噴射のD-4SとデュアルVVT-iにより代表値として315 ps/38.5 kgmを発揮し、2GR-FEは可変インテークなどを採用し280 ps級の出力を持ちます。トルク特性は2500 rpmあたりから厚みがあり、高速域まで淀みなく吹け上がります。
開発背景と主な搭載車種
2000年代初頭の北米市場などでは、大排気量でも燃費と静粛性を両立するエンジンが求められました。そこでトヨタは、V6でV8級のパワーと優れた効率を目指す“万能ユニット”として2GR系を企画。FR用の2GR-FSEをクラウン、マークX、レクサスGS・ISなどに、主にFF車向けの2GR-FEをエスティマ、ハリアー、アルファードといった多彩なモデルに展開しました。さらにロータス・エヴォーラやエキシージSへもOEM供給されるなど、多様な車種での実績がその完成度を物語っています。
ドライビングフィールと維持ポイント
低回転では静粛性を保ちながらスムーズにクルーズし、高回転では官能的とも言われるV6サウンドと共にリニアにパワーが伸びる二面性が魅力です。アメリカの「Ward’s 10 Best Engines」に2GR-FSEエンジンが2006年から4年連続で選出されたことも、その総合性能の高さを示しています。直噴モデル(2GR-FSE)では定期的な吸気ポート洗浄を心がけ、メーカー推奨の高性能オイル(例:0W-20など、車種により指定を確認)を適切なサイクルで交換すれば、20万kmを超える走行も十分期待できるエンジンです。
レクサス LFAの心臓 1LR-GUE|日本初500 ps超えの高回転NA
技術スペックと性能
4.8L・72°V10・ドライサンプ。10連スロットル&チタンバルブを持ち、最高出力560psを8,700rpm(最大トルク48.9kgm/6,800rpm、レッドゾーン9,000rpm)で発生。0.6秒でアイドリングからレッドゾーン到達という驚異的レスポンスを実現し、エンジン単体重量はV6エンジン並みの約170kgと、同排気量比で世界最軽量級です。
開発背景と主な搭載車種
「世界に通用するピュアNAスーパーカーを造れ」。その命題を掲げたトヨタとヤマハがF1技術を惜しみなく投入した結果が1LR-GUE。500台限定のレクサスLFAのみに搭載され、各ユニットは“匠”が1基ずつ手組み。組み上げ担当者のネームプレートがサージタンクに鎮座し、オーナーと開発者を文字通り“直結”させます。
ドライビングフィールと維持ポイント
4000rpmを境に排気音が三段階で変化し、8000rpmオーバーではF1譲りの甲高い倍音がキャビンを満たす“天使の咆哮”。液晶タコメーター採用は指針式が回転上昇に追従できなかったためという逸話は有名です。部品はワンオフが多く維持費は桁違いですが、レクサスが専用メンテパッケージを用意しており、エンスージアストの間では、一度は所有を夢見る存在とされています。
ホンダ F20C|9000 rpmが生むリッター125 psの高回転名機
技術スペックと性能
2.0 Lの直列4気筒DOHC VTEC。ボア87.0 mm×ストローク84.0 mmというショートストローク設計に、圧縮比11.7を組み合わせることで9000 rpmまで回転を許容する。最高出力は250 ps、最大トルク22.2 kgmを発揮し、リッターあたり125 psという当時の市販NAエンジン最高比出力を記録した。
開発背景と主な搭載車種
創業50周年記念車S2000に向け、「市販エンジンの限界に挑め」と開発。低慣性ピストン&強化コンロッド、ローラーロッカーVTEC、超薄型シリンダーライナーなどレーシング技術を惜しみなく盛り込み、バランスジオメトリーフレーム&6MTでFRスポーツの理想形を具現化しました。
ドライビングフィールと維持ポイント
6000 rpmでVTEC高リフト側に切り替わる瞬間、排気音が硬質に豹変し9000 rpmへ一直線。「回してこそ本領」の刺激は今なお唯一無二です。耐久性は高いもののオイル消費は多め。粘度と添加剤を吟味し、2,000 kmごとのレベルチェックを励行すれば長く楽しめます。
マツダ 13B-MSP レネシス|平成最後のロータリーで味わう9000 rpm
技術スペックと性能
654ccの2ローターNAエンジンを搭載。世界初のサイド排気ポート方式を採り、250ps/22kgm(高出力仕様)を実現。ポートとハウジング再設計で燃焼効率を高め、同時に排ガスを大幅低減しました。
開発背景と主な搭載車種
ロータリー存続を託されたRX-8専用。4ドア&50:50重量配分を成立させるため、全長を短縮しフロントミッドシップに搭載。レネシスは2003年インターナショナルエンジンオブザイヤー最優秀新型部門などを受賞し、「ロータリーは終わらない」と世界にアピールしました。
ドライビングフィールと維持ポイント
ロータリーらしい滑らかな回転上昇と、9000rpm(高出力仕様)を味わえるタコメーターは純粋な快感。低中速トルクは控えめでもシフトダウン一発で性格が豹変します。圧縮測定値は9.0kgf/cm²以上が目安。オイル継ぎ足し・プラグ清掃といった“儀式”を怠らなければ長寿命を期待できます。
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日産 RB26DETT|GT-Rをゴジラに変えた直6ツインターボ
技術スペックと性能
排気量2.6 Lの直列6気筒DOHCツインターボ。6連独立スロットルと高効率ツインターボの組み合わせにより、カタログ値は280 ps/40.0 kgf·m(BNR34など)ながら実測では300 ps超を記録する。鋳鉄ブロックと鍛造クランクを採用した頑丈な設計で、チューニングしだいでは600 ps級の出力にも十分耐えうるポテンシャルを備えている。
開発背景と主な搭載車種
グループA制覇を使命にBNR32 GT-Rで復活。R32はJTC29勝無敗を誇り、R33はル・マン24時間レースで、R34はニュルブルクリンク24時間レースでそれぞれ活躍し、RB26の名を世界に轟かせました。
ドライビングフィールと維持ポイント
ひとたびブーストがかかると怒涛のトルクが襲来し、アテーサE-TSが四輪を路面に爪立てる加速は圧巻。チューニング耐性も抜群ですが、R32/R33純正セラミックタービンはブーストアップで羽根欠けの恐れがあるためメタルタービン換装が定番。タイミングベルト/ウォーターポンプ交換サイクルに加え、油温・油圧のモニタリングが長期保全の鍵になります。
トヨタ 1GZ-FE|国産唯一のV12で極上の静粛を実現
技術スペックと性能
国産唯一のV型12気筒の1GZ-FE型5.0ℓエンジン。最高出力280PS、最大トルクは49.0kgf·m(公称値)。左右独立ECUとイグニッション、電スロ制御で片バンク故障時も自走可能な冗長設計。アイドリング時の振動は同世代V8エンジンと比較しても極めて低振動を実現。
開発背景と主な搭載車種
2代目センチュリー専用として「ショーファードリブンの理想」を追究。欧州V12勢を凌駕する静粛性を目指し、1 mm厚吸音材や大型ハイドロマウントを車体にセット。さらに官公庁向けにCNG仕様まで用意したバブル期の遺産です。
ドライビングフィールと維持ポイント
低回転からフラットなトルク曲線が続き、2t超のボディを余裕で牽引。キャビンに響くのは僅かな排気の重低音のみ。エンジン本体の信頼性は高いものの、消耗品は12気筒分。イグニッションコイルやプラグ交換には相応のコストが掛かりますが、適切に維持すれば長期静粛性を保ちます。
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まとめ|平成名エンジンは“走る文化遺産”
電動化が主流になる今こそ、金属が奏でる機械音や高回転の振動は貴重な文化遺産です。本稿が整理した6基は、排出ガス規制・市場要求・レースレギュレーションへの対応を目的に開発された代表例です。平成期に達成されたこれらの成果は、日本の動力技術史を理解する上で基礎資料として位置づけることができるでしょう。