試乗車で事故にあったら責任はどうなる?

クルマの購入前には、実車をつぶさに観察して、できれば試乗まで行い性能を確かめたいところです。大手ディーラーでは、人気車種の試乗車を何台も用意していることもあります。しかし、その試乗中に事故を起こしてしまったら、どうすれば良いのでしょうか?カーディーラーで営業をしていた筆者の実体験をふまえながら、試乗中の事故について解説します。
文・赤井福
- Chapter
- 事故の責任はドライバーにあり
- 試乗中の軽微な事故
- 試乗前にはしっかりチェック
事故の責任はドライバーにあり
まず大前提として、クルマを運転中に事故を起こせば、責任はハンドルを握っていたドライバー自身が負うことになります。
助手席や後部座席にディーラーの営業スタッフが同乗していて、試乗コースの誘導などを行っていたとしても、ドライバーに代わって事故の責任を負うことはありません。
運転中のすべての責任はドライバーにかかってきますので、ディーラーのスタッフが同乗していても、公道を走行する際は細心の注意が必要です。
特に注意すべきは人身事故です。一部、試乗車にかけられている自動車保険で補償する場合もありますが、相手への対応はドライバーがしなければなりません。
このときに利用できるのが、ご自身のクルマにかかっている任意自動車保険の「他車運転特約」です。他人のクルマを運転していた際の事故を、自分のクルマにかかっている任意保険の内容に基づいて補償してくれる制度になります。
ディーラーなどで試乗をする前には、ご自身の自動車保険に他車運転特約が付帯されているか、チェックしておきましょう。
試乗中の軽微な事故
ディーラーで営業マンをしていたとき、何度も試乗中の事故に遭遇しました。事故といっても、駐車の際に壁にこすったり、縁石に乗り上げたりするような、対人及び対物損害がなく、試乗車にのみダメージが発生するような比較的軽微なものです。
このような場合だと、ドライバーが自社ユーザーであった場合は、修理費用を請求することはあまりなかったように記憶しています。
大きな損傷だった場合には、部品原価を請求するケースもありましたが、筆者が営業マンだったときには、ほぼディーラー側が修理費用をもってクルマを直していました。
これは、車検などの整備中に借りている代車でも同様です。ディーラー側としては、お客様との関係性を壊したくないということもあり、損失補填を求めることはまずありません。
しかし、車両に傷つけたことを認識しているにもかかわらず、試乗車や代車を返却する際に、傷をつけたことを告げず、隠ぺいするようなケースでは、ディーラー側も試乗歴や代車の貸し出し歴から調査することがあります。
正直に伝えれば大ごとにはなりませんので、万がいちディーラーのクルマに傷をつけてしまった場合には、素直に伝えましょう。
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