車のバック音が鳴らない理由とは?その背景・仕組みと対処方法を徹底解説

縦列駐車

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毎日の運転で、バック(後退)操作をしない日はほとんどないでしょう。国産車の多くはバックする際にシフトをリバース(R)に入れるとピーッピーッという警告音(バックブザー)が鳴りますが、一部の車種ではバック音が鳴らない場合もあります。特に輸入車ではバック時の警告音が鳴らないケースが多いようです。これはいったいなぜなのでしょうか?本記事では、車のバック警告音が鳴る理由とその背景、仕組みや安全装備としての役割を解説し、さらに音が鳴らない場合の原因や対処方法(故障の可能性や後付けによる対応)までを、わかりやすく紹介します。

CARPRIME編集部

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Chapter
そもそもバック時に「ピーッピーッ」と鳴る理由
バック音が鳴らない車種があるのはなぜ?
バック警告音が鳴らなくなった場合の原因と対処法
ブザー本体の故障
配線の断線・接触不良
バックランプスイッチの不良
ヒューズ切れ
バックブザーの後付けや音色の変更はできる?
バックブザーの後付けは可能
警告音の音色変更は一部車種で可能
消音は安全性の観点から推奨されない
まとめ

そもそもバック時に「ピーッピーッ」と鳴る理由

AT車でシフトをリバースに入れると鳴るピーッピーッというバックブザー音(リバースワーニングや後退音とも呼ばれます)は、日本では当たり前の装備となっています。その背景には、自動車の変速機の歴史と安全への配慮があります。

ひと昔前まで主流だったMT(マニュアル)車では、シフトパターン上リバースギアが離れた位置にあり、誤って後退に入れてしまう操作ミスは起きにくい構造でした。

しかしAT(オートマ)車が普及し始めると、ストレート式のシフトでは前進(D)と後退(R)の位置が近くなり、運転者がギアの入れ間違いに気づかずアクセルを踏んでしまう事故リスクが懸念されました。こうした誤操作を防ぐため、1980年代頃からメーカーが自主的にバック時の警告音を取り入れ始めたのです。

また元々、後方確認が難しい大型トラックやバスでは、バック時に周囲へ注意喚起するためのバックブザー(後退時警報音)が車外に向けて鳴る仕組みが使われていました。

乗用車のバックブザー音はその車内版とも言え、ドライバー自身に「ギアがRに入っている」警告する役割を果たしています。法律で義務付けられた装備ではありませんが、安全装備の一つとしてメーカーが独自に搭載しているものなのです。

バック音が鳴らない車種があるのはなぜ?

国内のAT車では一般的なバック警告音ですが、車種やメーカーによってはバック音が鳴らない場合もあります

その代表が輸入車です。

海外では長らくMT車の比率が高く、前述した通りMT車ではそもそもシフトミスによる後退事故の可能性が低いため、警告音を付ける必要性が低いと考えられてきました。

このためヨーロッパ車を中心に、AT車であってもバック時に音が鳴らないモデルが多く存在します。

一方、昨今では海外でもAT車の普及率が上がり、それに伴いリバース時の警告音を備える輸入車も増えてきています。例えばメルセデス・ベンツやBMWなどは、ここ10年ほどでバックブザーを装備し始めたと言われます。

それでも依然として、MT仕様のスポーツカーや一部の海外モデルではバックブザーが無いケースが一般的です。また国産車でもMT車の場合は同様の理由で警告音が鳴りません

要するに、バック音の有無は自動車文化の違いやその車の想定する使用状況によるものです。日本ではバック=ピーッピーッという音が浸透しており、安全確認の助けになるとの考えから、多くの車種で標準装備化されました。

逆に海外では必須の安全機能とは見なされず、搭載しないケースがあったというわけです。

ただしバックブザーが付いていない車でも、法的には何の問題もなく(車検でも不備になりません)、あくまでメーカーの判断による装備だという点を覚えておきましょう。

バック警告音が鳴らなくなった場合の原因と対処法

ブザー本体の故障

長年の使用でブザー(スピーカー)が壊れてしまうと音が鳴りません。雨水やホコリの影響で内部が腐食してしまうこともあります。

特に登録から10年以上経過した車両では発生率が高いです。交換用ブザー(1,000〜3,000円程度)に取り替えることでほぼ確実に復旧できます。

「Rに入れても静かだな……」と感じたら要注意。 整備工場のヒアリングでは、初度登録から12年超の車でブザー故障が見つかる割合はおよそ3割にのぼると言われています。

パーツも手頃な価格帯なので、車検や定期点検のついでに交換してしまえば安心です。

配線の断線・接触不良

ブザーに電気を送る配線が劣化したり、コネクタが緩んでいると電流が流れず作動しません。振動や経年劣化で配線トラブルが起きる場合があります。

リアゲート周辺は開閉に伴う屈曲で断線しやすく、テスター測定で抵抗値が無限大(∞)なら配線交換が必要です。「走行中は問題ないのに、バックだけ無音」というときは配線を疑いましょう。

特に年間1,000回以上リアゲートを開閉するような使い方では被覆が割れやすく、補修用ハーネス(5,000〜8,000円程度)で治るケースが大半です。

バックランプスイッチの不良

シフトをRに入れた際に作動するスイッチ(バックランプスイッチ)が故障していると、バックランプが点灯しないのと同時にブザーも鳴らなくなることがあります。

スイッチの摩耗や接点不良が原因です。部品代は国産車で2,000〜5,000円程度、作業時間は30分ほどで済むため、ディーラーでも比較的安価に修理できます。

バックランプも消えているならこのスイッチが犯人かも。 点検用スキャンツールで「Rレンジ信号なし」と出ればほぼ確定。早めに交換しておけば車検時の指摘も回避できます。

ヒューズ切れ

警告音用の回路を保護するヒューズが飛んでしまうと、当然ながら音は出なくなります。過電流が流れた際などにヒューズが切れることがあります。

バックランプ系統は7.5A〜10Aのヒューズが使われることが多く、数百円で交換可能ですが、再度切れる場合は配線のショートなど根本原因を点検しましょう。

月に1回でもヒューズが飛ぶようなら要精査。 ヒューズボックスの予備が尽きる前に、専門店でショート箇所を特定してもらうと余計な出費を抑えられます
以上のような原因が考えられるため、音が鳴らなくなった場合はまずバックランプの点灯も併せて確認してみてください。
バックランプも点いていない場合はスイッチやヒューズが怪しく、ランプは点くが音だけ出ないならブザー本体や配線の問題の可能性が高まります。いずれにせよ、自力で原因特定が難しい場合はディーラーや整備工場に相談し、点検・修理を依頼するのが確実です。バックブザー自体の交換部品も市販されていますので、故障していれば新品に交換して直すことができます。

バックブザーの後付けや音色の変更はできる?

バックブザーの後付けは可能

結論から言えば、バックブザーの後付けは可能です。

実際、メーカーオプションやディーラーオプションでバックブザーを装着できる場合もありますし、市販の後付け用バックブザーキットも多数販売されています。

仕組みは単純で、車のバックランプの配線にブザーを並列につなぐことで、シフトがRに入ってバックランプに電流が流れたときに同時にブザーが鳴るようにできます。

12V電源対応の汎用バックブザー(バックアラーム)なら、比較的簡単な配線作業で取り付けられるでしょう。電装の知識がない場合は、カー用品店や整備工場に依頼すれば取り付けてもらえます。

警告音の音色変更は一部車種で可能

一方、警告音の音色を変更することも一部では可能です。最近の車種では、バック時の音を運転席の画面メニューやディーラーの設定で調整できるものもあります。

例えば高級車では初めから優しいチャイム音に設定されている場合があり、BMWでは穏やかなポロローンというメロディ音、レクサスの一部車種ではポーンポーンという控えめな音が採用されています。

これらは耳障りな電子音ではなく、車内の乗員に不快感を与えにくい音色です。

しかし多くの一般的な車では警告音の種類を変える公式な方法はなく、どうしても変えたい場合は他車種のブザーを流用する、社外品のブザーに交換する、といった改造に近い対応が必要になります。

消音は安全性の観点から推奨されない

なお、バックブザーを消音したいという要望も時折聞かれますが、安全性の観点からおすすめできません。確かに深夜の住宅街などでは騒音防止のため、トラックなどに減音・消音機能付きのバックブザーが使われるケースもあります。

しかし乗用車においてバック警告音はあくまでドライバーへの注意喚起であり、鳴らなくても法律違反ではないとはいえ、安全運転の助けになる有用な機能です。

音量の調整や心地よい音色への変更は構いませんが、音自体を完全に消してしまうことは避けた方が良いでしょう。

まとめ

バックブザー(バック警告音)は、AT車でありがちな「DとRをうっかり間違えて発進してしまう」ヒヤリを防ぐために、日本のメーカーが自主的に取り入れてきた頼もしい安全装備です。

MT車が中心だった欧州では不要とされ鳴らない車が多いものの、最近は海外メーカーも安全意識の高まりから採用を拡大しています。

もし「いつも鳴っていた音が急に聞こえない」と感じたら、ブザー本体や配線、ヒューズ、スイッチを疑い、まずバックランプが点くか確かめたうえで整備工場へ相談しましょう。

また、「鳴らない車に付けたい」「耳ざわりな電子音をやわらかいチャイムに変えたい」と思ったら、市販キットやディーラー設定で後付け・音色変更が可能です。

たった一つのブザー音でも安全意識は大きく変わります。あなたの愛車は、後退時に頼れるピーッは鳴っていますか? 音の有無にかかわらず後方確認を徹底し、快適で安心なドライブを楽しんでください。

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