昭和のクルマは、ここが良かった

平成に入り早30年、昭和の時代に造られたクルマを目にする機会は、とても少なくなりました。けれど昭和のクルマには、最近のクルマにない魅力があるように思えます。今回はそんな、高度経済成長期、バブル景気を経た、昭和を彩ったクルマの良さを振り返っていこうと思います。

文・立花義人

Chapter
昭和のクルマ史
昭和のクルマはボンネットが低く、デザインがかっこいい
リトラクタブルヘッドライトがかっこいい
昭和のクルマは軽かった
自分でイジれるからクルマ愛も倍増

昭和のクルマ史

旧車

日本は1950年代半ばから、高度経済成長期に突入しました。そして、1955年(昭和30年)に、日本政府が「国民車構想」を発表したことをきっかけに、モータリゼーションの波が急激に押し寄せることになります。

1962年(昭和37年)には鈴鹿サーキットが完成し、翌年、第1回日本グランプリが開催されると、クルマは高性能化が競われるようになり、スカイライン伝説や、トヨタスポーツ800とホンダS600の対決などが注目を集めるようになりました。

そして1960年代後半には、トヨタ 2000GT、日産 フェアレディZ、マツダ コスモスポーツといった国産スポーツカーが、次々と誕生。70年代は、輸出も盛んになります。そうして1980年(昭和55年)には、日本の自動車生産台数が、世界一になります。

その後の1986年(昭和61年)ごろから始まった、バブル期に誕生したクルマは、世界における日本車の名声を確固たるものにしました。

そんな好調だった昭和の自動車史を締めくくるかのように、平成元年にはトヨタ セルシオ、日産 スカイラインGT-R、ユーノス ロードスター、ホンダ NSXといった名車が誕生したのです。

昭和のクルマはボンネットが低く、デザインがかっこいい

日産 フェアレディZ (Z32) (1989-1998)

ボンネットが低く長いデザインのスポーツカーは、いまでも「かっこいいクルマ」の代名詞といえるでしょう。

最近のクルマはボンネット部分が分厚く、ぼってりした印象があります。これは、平成17年に施行された保安基準に基づいた設計が求められるためであり、自動車と歩行者の衝突事故の際、人がボンネットに跳ね上げられた場合の衝撃を和らげるため、エンジンとボンネットの間にクラッシャブルゾーン(空間)を設ける必要があるのです。

この法律が施行される前の昭和時代には、この基準はありませんでしたから、メーカーは、ボンネットの低いデザインのクルマを作ることができたのです。

リトラクタブルヘッドライトがかっこいい

マツダ RX-7

リトラクタブルヘッドライト(格納式前照灯)は、昭和のスポーツカーを語るうえで欠かせない装備と言えます。マツダ RX-7、トヨタ MR2/カローラ スプリンター トレノといえば、リトラクタブルヘッドライトがひとつの特徴でもありました。

しかしリトラクタブルヘッドライトは、展開時に空気抵抗が増大することや、開閉機構を装備することによる重量増、製造コストの高さ、突出したライトが対人事故の際に危険であることなどを理由に、製造されなくなりました。

昭和のクルマは軽かった

ダイハツ シャレード 初代

当然のことながら、軽いクルマは運動性能が良いといえます。当時は、快適装備や安全装備が現在よりも少なかったことが、そのおもな理由ですが、はたして昭和のクルマはどれほど軽かったのでしょうか。

例えば、1,000ccクラスの初代ダイハツ シャレードの車重は630kg、初代日産 チェリーの車重は670kg。同じリッターカーである現在のトヨタ・パッソは910kgですし、軽自動車でもホンダ NBOXは890kgありますから、昭和のクルマの軽快感は、いまでは考えられないほどであったと言えます。

自分でイジれるからクルマ愛も倍増

日産 スカイライン GT-R S20 (1969)

最近のクルマはトラクションコントロールESC(横滑り防止装置)、ABSなどの安全装備はもちろんのこと、エンジンも電子制御で故障もほとんどありません。またパワステやエアコンなどの快適装備も、当然のように備わっています。

しかし、こうした制御装置や快適装備が普及する前は、エンジンもキャブレター式でメンテナンスや調整に苦労し、ハンドル操作やクラッチ操作も重く、快適とは言い難いものでした。

しかし、昭和のクルマはメカがシンプルであるぶん、ハンドルに伝わるダイレクトな感覚、キャブレターの吸気音、排ガスの匂いなど、五感を刺激する要素がたくさんありました。

自分でメンテナンスしながらクルマに愛情を注ぎ込む楽しさは、いまよりも色濃かったと言えるかもしれません。

最近のクルマは快適で安全、信頼性も高く、素晴らしく良くできています。しかしさまざまな環境基準、安全基準の範囲内で、より個性的なクルマ作りをしなければならないのも事実です。

自動車関連の技術が日進月歩で発展するなか、昭和のクルマが持っていた楽しさやワクワク感を、ふたたび味わえるようなクルマが登場することを期待しています。

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文・立花義人
フリーライター。5歳の頃に自動車図鑑で見たアルファロメオのデザインに衝撃を受け、以降クルマに魅了される。様々なクルマの個性を知りたいと考え、免許取得後国産・輸入車問わず20台以上を乗り継ぐ。車検整備を取り扱う企業に勤務していた際、メンテナンスや整備に関する技術や知識を学ぶ。趣味はドライブ、食べ歩き。現在の愛車はパサート・ヴァリアント。