欧州高級車メーカーは、ボディを接着剤で留めているって本当?
更新日:2024.09.12
※この記事には広告が含まれます
「ボディを接着剤で留めている」と言われると、プラモデルを思い浮かべる方が多いかもしれませんね。しかし最近では、本物の自動車でも接着剤を使ってボディを留めています。今回は、自動車に使用されている接着剤について紹介していきます。
文・吉川賢一
文・吉川賢一
どうして接着剤が使われているの?
自動車のボディには、走行中にさまざまな方向からいろいろな力が加わります。コーナリング時にボディ全体が捩じられる荷重や、路面の突起を乗り越えたあとのショック、路面から伝わってくるロードノイズなど。そのすべてはボディに伝わり、車体振動としてあらわれます。ボディ剛性の向上は、こうした部分を改善するためには必須となります。
自動車のボディは、通常、複数のスチールパネルが組み合わさって構成されています。それぞれのパネルは、リベットやねじ止めなどの「点接合」や、レーザー溶接のような「線接合」にて固定しますが、接合が弱い部位に応力が集中してしまうことも少なくないため、どのメーカーも車体の組立には気を使っています。
そんななか、欧州の高級車メーカーを中心に、ボディのパネル同士をエポキシ樹脂接着剤を使って接着する方法が使用され始めました。
構造用接着剤というもので、パネル間に塗布し使用します。これによってパネル同士は「面接触」をすることになり、接合剛性が飛躍的に高まり、車体剛性も向上。ハンドリングや乗り心地の改善、不要な振動を低減することが可能となったのです。
自動車のボディは、通常、複数のスチールパネルが組み合わさって構成されています。それぞれのパネルは、リベットやねじ止めなどの「点接合」や、レーザー溶接のような「線接合」にて固定しますが、接合が弱い部位に応力が集中してしまうことも少なくないため、どのメーカーも車体の組立には気を使っています。
そんななか、欧州の高級車メーカーを中心に、ボディのパネル同士をエポキシ樹脂接着剤を使って接着する方法が使用され始めました。
構造用接着剤というもので、パネル間に塗布し使用します。これによってパネル同士は「面接触」をすることになり、接合剛性が飛躍的に高まり、車体剛性も向上。ハンドリングや乗り心地の改善、不要な振動を低減することが可能となったのです。
接着剤が使われている車は?
構造用接着剤の使用は、おもに欧州メーカーが先行しており、なかでも高級ブランドでの使用が多くなっています。そのほとんどは工場のマシンによってオートメーション化されており、人の手で接着剤を塗布することはほとんどないそうです。
接着剤の使用量は、アウディA6は90m(グラム換算で400~800グラム)、メルセデス・ベンツAクラスは120m、BMW7シリーズは150mと、相当な長さを接着していることになります。※接着剤の使用量は、一台の車を組み立てる際に塗布した接着剤の長さで表すのが一般的です。
ちなみにBMWは、エポキシ樹脂系接着剤よりも短時間で接着できる、二液ウレタン系接着剤を使用しており、組み立て時間の短縮も行っています。
一方、日本メーカーでは、トヨタ自動車が採用を始めており、スポット溶接とエポキシ系樹脂接着剤を組み合わせた方法(スポットウエルドボンド工法)を独自開発しました。採用実績は、新型プリウス、レクサスラインナップが中心となっています。
接着剤の使用量は、アウディA6は90m(グラム換算で400~800グラム)、メルセデス・ベンツAクラスは120m、BMW7シリーズは150mと、相当な長さを接着していることになります。※接着剤の使用量は、一台の車を組み立てる際に塗布した接着剤の長さで表すのが一般的です。
ちなみにBMWは、エポキシ樹脂系接着剤よりも短時間で接着できる、二液ウレタン系接着剤を使用しており、組み立て時間の短縮も行っています。
一方、日本メーカーでは、トヨタ自動車が採用を始めており、スポット溶接とエポキシ系樹脂接着剤を組み合わせた方法(スポットウエルドボンド工法)を独自開発しました。採用実績は、新型プリウス、レクサスラインナップが中心となっています。
エポキシ樹脂系接着剤のメリットとデメリットは?
これまで構造用接着剤は一部の高級車にのみ採用されていましたが、パネルの一部のみに接着剤を使ったプリウスなども登場してきました。こうした接着車体の車両に乗ってみると、走行時の圧倒的な静けさを体感することができます。
この接着車体のような基礎技術は、乗員へ快適な移動空間を提供するためにも、さらなる進歩を期待したいですね。
この接着車体のような基礎技術は、乗員へ快適な移動空間を提供するためにも、さらなる進歩を期待したいですね。
これまで構造用接着剤は一部の高級車にのみ採用されていましたが、パネルの一部のみに接着剤を使ったプリウスなども登場してきました。こうした接着車体の車両に乗ってみると、走行時の圧倒的な静けさを体感することができます。
この接着車体のような基礎技術は、乗員へ快適な移動空間を提供するためにも、さらなる進歩を期待したいですね。
この接着車体のような基礎技術は、乗員へ快適な移動空間を提供するためにも、さらなる進歩を期待したいですね。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。