2ドアと4ドア、ボディが強いのはどっち?

ボディ剛性

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クルマのボディは、2ドアと4ドアではどっちが強いの?たまにこんな質問を耳にします。巷には多種多様なボディ構造のクルマがありますが、はたして皆同じなのでしょうか?今回は、ボディ剛性について考えてみましょう。
Chapter
「剛性」と「強度」は違う
ドアの数によって違いはあるのか?
ボディに影響するのはドアの数だけではない

「剛性」と「強度」は違う

ボディの強さの話をしていると、たまに「剛性」と「強度」を混同している人がいます。確かに似ている言葉なのですが、クルマの世界では違う性能を意味しています。

現在、乗用車のボディの主流となっているのは「モノコックボディ構造」。これはティッシュの箱や段ボール箱のように、お互いの面で衝撃を分散させることで強度を維持している構造です。そのティッシュの箱をモノコックボディのクルマだと思って、剛性と強度を考えてみましょう。

まずティッシュの箱の両端を掴み、両手で捻ってみてください。紙の箱なのに、凄い強さを持っているはずです。簡単に言うと、これが「剛性」ということになります。クルマの場合、走行中にさまざまな力がボディに対して働くわけです。

たとえば、コーナーを走る場合は、先ほどやっていただいた”捻り”の力がボディにかかります。この時、剛性が弱くボディが簡単に捻れてしまうとタイヤの接地する力が弱まり、シャープに曲がることができません。凹凸のある路面では、さらに複雑な力がボディにかかることになります。ボディ剛性は、クルマの直進安定性、コーナリング性能、ステアリングのフィーリング、トリムのきしみ音など、さまざまなことに影響するのです。

さて、今度はティッシュの箱のひとつの面を指で押してみてください。割と簡単にへこむはずです。もし紙が厚かったり、金属だったら簡単に指ではへこまないはずですが、簡単に言えばこれが「強度」になります。つまり強度は、クルマがなにかに衝突した場合の衝突安全性などに大きく影響してきます。

昨今のボディは、前後にクラッシャブルゾーンと呼ばれるクシャッと潰れる部分を作って衝突時の衝撃を吸収しながら、居住空間のまわりはガッチリと硬い素材で囲って強度を出すというのが一般的です。

また、横からの衝突に対しての対策としては、ドアの内部にサイドインパクトビームなどの補強材を入れて、強度を持たせるという方法を取っています。

ドアの数によって違いはあるのか?

ドアの枚数によって違いが出るのはおもに「剛性」です。ここから先は少し混乱しやすいので、話を整理しながら進めていきましょう。

ボディ剛性は、”開口部面積”というものによって異なります。開口部とは、ドアやボンネットを外した時のなにもない部分のことですね。この面積が広ければ広いほど、ユーザーは乗り降りや荷物の積み降ろしがしやすく使い勝手がいい…ということになります。ところが、トレードオフでボディ剛性は低くなってしまいます。

試しにティッシュの箱の上の穴をハサミで広げて、もう一度捻ってみてください。先ほどよりも、柔らかくなったのではないでしょうか。開口部が大きくなったことにより、力を吸収する力が弱まったからなのです。

一般的に言えば、2ドアのほうが4ドアよりもボディ剛性が低くなります。「え?でも4ドアの方が開口部が大きいよね?」と思う方がいらっしゃるでしょう。たしかに一見するとそうですが、じつは4ドア車には前ドアと後ドアの間にピラーという柱が付いています。

クルマには大抵、Aピラー、Bピラー、Cピラーと片側に3本の柱、両側計6本の柱があり、これがボディ剛性を高めています。

開口部というのはピラーとピラーの間の面積であり、同じボディとして考えた場合、Bピラーの無い2ドア車は4ドア車よりも開口部が広くなります。その結果、ボディ剛性は低くなるという理屈なのです。

さらに言えば、大抵の2ドア車はハッチバックになっていることが多く、これもまた広い開口部になります。そのため、ボディ剛性を低くするファクターになってしまいます。

では「強度」には関係ないかというと、そんなことはありません。当然ながら、ピラーや補強材の数や位置が強度に大きく影響するわけで、そういった意味では4ドアのほうが居住空間周囲の強度は高いと言えます。

ボディに影響するのはドアの数だけではない

マツダは、CX-8の発表時に「今後、スライドドアのクルマは作らない」とコメントしました。これは”ミニバンは作らずにSUVだけで勝負する”という意味と、”マツダとしてはスライドドアに問題がある”という意味があるように思います。

スライドドアは、軽自動車でも普通車でもミニバンタイプのクルマの特徴であり、日本では必須の装備です。

ミニバンというのは乗降性や積載性を重視するため、開口部が非常に大きく広くなっています。ミニバンは典型的な箱形形状のため、その開口部がボディ剛性の維持を難しくしているのです。強度でも同様です。Bピラーが前方に寄ってしまうため、セカンドシート横付近の強度的には不利と言わざるを得ません。

こうした問題を少しでも解決するために、スライドドア内に頑丈な補強材などを入れるわけですが、当然重量も増えるため、走行性能や燃費にネガティブな影響を与えてしまいます。さらにスライドドアは、これまで重大事故で開いてしまうという事例もあり、米国などではミニバンは徐々に売れなくなってきているという背景もあります。

強度で言えば、ドアのヒンジも大切な要素です。国産車のドアヒンジはプレス製なのに対して、欧米車は頑丈な鋳物を使っています。これは欧米でのスピードレンジが日本国内よりも高く、重大事故時にドアの欠落を防止するための対策です。

このように、ボディの剛性や強度にはさまざまな要因が影響しているのですが、2ドアだから、スライドドアだから悪い…というわけでは決してありません。

開発者は、膨大なデータや実験をもとにクルマ作りを行い、最終的にはベストとなる製品に仕上げています。実際にはクルマのタイプや価格によってドライブフィールや安全性は異なっていますが、皆さんがそれを十分に理解して愛車に乗れば、どの車種でも楽しく快適になるのではないでしょうか。

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