レーザースクリューウェルディングとは?トヨタ車ボディの接合剛性が60%アップ!?
更新日:2024.09.09
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トヨタが開発した「レーザースクリューウェルディング」は、クルマの操縦安定性や乗り心地を左右するボディの接合剛性を向上させる技術です。従来の溶接方法である「スポット溶接」や「レーザー溶接」に対して、どのような違いがあるのでしょうか。
文・吉川賢一
文・吉川賢一
これまでの日本車のレーザー溶接とその課題
クルマのボディ溶接の方法として広く採用されているのが、「スポット溶接」です。2枚の鋼板を電極で挟み、通電した際の電気抵抗による発熱で鋼板を溶かし、点接合をします。短い時間で接合ができるのですが、近接するスポット間の電流リークを避けるために、短いピッチで溶接ができず、高い接合剛性を実現することは困難です。
一方「レーザー溶接」は、レーザーを集光した熱で鋼板を溶かして接合します。点ではなく、線で溶接ができるので、スポット溶接に対して接合剛性を上げることができます。
ただし、2枚の鋼板間に微妙な隙間があると溶接がうまく行きません。また隙間が大きい場合は、溶け落ちや穴空きといった溶接不良が発生するため、溶接条件によっては品質が安定せず、適用できる範囲が限定されるという課題があります。
そのため「レーザー溶接」は、「スポット溶接」した点の間を補強するカタチで使われるのが、一般的です。
一方「レーザー溶接」は、レーザーを集光した熱で鋼板を溶かして接合します。点ではなく、線で溶接ができるので、スポット溶接に対して接合剛性を上げることができます。
ただし、2枚の鋼板間に微妙な隙間があると溶接がうまく行きません。また隙間が大きい場合は、溶け落ちや穴空きといった溶接不良が発生するため、溶接条件によっては品質が安定せず、適用できる範囲が限定されるという課題があります。
そのため「レーザー溶接」は、「スポット溶接」した点の間を補強するカタチで使われるのが、一般的です。
レーザースクリューウェルディングは接合剛性を向上させるトヨタの技術
2012年にトヨタが公開したレーザースクリューウェルディング(LSW)とは、ロボットの先端に装着したレーザー発振器からレーザを照射して、重ねた鋼板を溶接する手法です。「スポット溶接」の補強的な役目ではなく、代替となる溶接技術です。従来の「レーザー溶接」に対して優れている点は、課題であった板隙による品質低下を、レーザー出力や走査パターンの適正化によって、解消していることです。
具体的には、次のような成果があります。
・スポット間隔を狭くでき、密度の高い溶接ができる(接合剛性の向上)
・スポット溶接の約3倍の速さで溶接が可能(生産効率の向上)
・片側からの溶接アクセスができるので、スポット溶接では困難な、狭い箇所や構造も溶接可能
ちなみに、4代目の現行プリウスに採用した効果は、打点ポイント数を旧型車に比べて30%増やすことができ、車両のねじり剛性は60%向上しています。
具体的には、次のような成果があります。
・スポット間隔を狭くでき、密度の高い溶接ができる(接合剛性の向上)
・スポット溶接の約3倍の速さで溶接が可能(生産効率の向上)
・片側からの溶接アクセスができるので、スポット溶接では困難な、狭い箇所や構造も溶接可能
ちなみに、4代目の現行プリウスに採用した効果は、打点ポイント数を旧型車に比べて30%増やすことができ、車両のねじり剛性は60%向上しています。
自動車にとって、レーザースクリューウェルディングによる溶接のメリットは?
溶接技術の進化によるメリットは、走行性能の向上として表れます。
クルマは、加速・減速時やコーナリング時に、ボディがねじれながら走行しています。車体剛性が高いと、走行中のボディのねじれが抑制され、コーナリングフォースや駆動力を、確実に路面へ伝えることができるので、ステアリングやアクセルのレスポンスが向上します。
また、突起物を乗り越した後に生じる車体の揺れも、短い時間で収まるようになり、乗り心地(ダンピング感)も向上。車体各部の歪みに起因する、車体振動や騒音も低減できます。
さらに接合剛性を上げることで車体剛性が向上すれば、補強材を減らすなどの車体構造を見直すことができるため、車体の軽量化につながりますし、レーザースクリューウェルディングの特徴である、片側アクセスでの溶接は、スポット溶接に比べて接合できる部位が増えるので、骨格設計の制約が減り、軽量化設計も容易になります。
クルマは、加速・減速時やコーナリング時に、ボディがねじれながら走行しています。車体剛性が高いと、走行中のボディのねじれが抑制され、コーナリングフォースや駆動力を、確実に路面へ伝えることができるので、ステアリングやアクセルのレスポンスが向上します。
また、突起物を乗り越した後に生じる車体の揺れも、短い時間で収まるようになり、乗り心地(ダンピング感)も向上。車体各部の歪みに起因する、車体振動や騒音も低減できます。
さらに接合剛性を上げることで車体剛性が向上すれば、補強材を減らすなどの車体構造を見直すことができるため、車体の軽量化につながりますし、レーザースクリューウェルディングの特徴である、片側アクセスでの溶接は、スポット溶接に比べて接合できる部位が増えるので、骨格設計の制約が減り、軽量化設計も容易になります。
レーザースクリューウェルディングは、「スポット溶接」と「レーザー溶接」の課題を克服し、両方の特長を生かした画期的な技術といえます。最大の成果は、剛性や軽量化、生産性といった、トレードオフであった要求を、同時にクリアした点です。
優れたクルマづくりには、設計技術や開発技術に加えて、こうした生産技術の寄与もかかせないのです。
優れたクルマづくりには、設計技術や開発技術に加えて、こうした生産技術の寄与もかかせないのです。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。