Chapter
名車その1|シトロエン 2CV
ヘンタイ度50%…世界中が笑いものにしたけれど
名車その2|シトロエン DS
ヘンタイ度70%…
①ステアリングが1本スポーク
②油でさまざまな機構を管理する
③ブレーキペダルがない
④停車したのに勝手に車体が動く
名車その3|シトロエンSM
ヘンタイ度30%…シフトレバーが横に動く

名車その1|シトロエン 2CV

ヘンタイ度50%…世界中が笑いものにしたけれど

1948年に1台の奇妙な自動車がシトロエンから発表され話題を集めました。その名前はフランス語で“2馬力”を意味する「2CV」という車です。ちなみにCVとはフランス語で“馬”を意味するCHEVALに由来しています。

空冷水平対向2気筒エンジンをフロントに搭載するこのFF車は、非力ではありながら走行性能と経済性に優れ、1990年までほとんどオリジナルのまま生産され続けました。

発表当時、世界中の人たちからその奇抜なデザインによって笑いの種にされてしまったものの、結果的には世界でもトップレベルのセールスを記録。さらに20世紀を代表する車として「カー・オブ・ザ・センチュリー」にも見事選出された名車となったのです。

名車その2|シトロエン DS

ヘンタイ度70%…

今もその洗練されたスタイリングの評価が高いシトロエン DS。1955年に初めてパリサロンで発表された際には「異次元の自動車」と評された自動車です。その不思議なスタイリングもさることながら、このDSには多くの“ヘンタイ”的機構が詰まっていました。

①ステアリングが1本スポーク

運転席に乗り込むとまず目に飛び込んでくるのがステアリングの異様さ。丸いリムと支点をつなぐスポークは1本のみという形状になっています。エアバッグ搭載のステアリングに見慣れた現代人にとっても衝撃ですが、当時としてもかなり画期的だったこのデザイン。

じつは事故を起こしたとき乗員をセンターコンソール側へ促すためのものだという実用的な側面もあったといわれています、そのため左ハンドルは8時方向、右ハンドルは4時方向に1本スポークが取り付けられています。

②油でさまざまな機構を管理する

DSではサスペンションシステムにハイドロニューマチックという機構を採用しているのですが、これは油圧と空気を利用して自動車のさまざまな動きを統率するというもの。車高を制御するサスペンションだけでなく、パワーステアリングやブレーキシステムにもこのハイドロニューマチックを利用しています。

そのため、ボンネットを開けると油圧を上げるためのアキュムレーターという緑色の球体が取り付けられています。

③ブレーキペダルがない

普通の自動車は足もとにアクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル(MT車)が並んでいますが、DSにはこのブレーキペダルがありません。

アクセルペダルの横にゴムまりのような丸い球(ボタン)があり、これを踏むとブレーキがかかるという仕組みになっています。ブレーキがペダルではなくボタンになっているのは、前述したようにハイドロニューマチックでブレーキシステムを制御しているため。硬いゴムまりを踏んで止まる感覚は衝撃的です。

④停車したのに勝手に車体が動く

これもハイドロニューマチックによるものですが、DSを停車させてエンジンを切ると徐々に車高が下がっていきます(油圧ポンプも一緒に停止するため)。その下がりっぷりはハンパなく、地面すれすれにまで車体が下がる光景はまるで生き物のよう。

逆にエンジンをかけると、今度は車体がむくっと起き上がるようにゆっくりと立ち上がっていきます。このため、コインパーキングでステップ板がせり上がる方式の駐車場には止めることができません。また、エンジン始動後も車体が完全に起き上がるまでは動かすことができないのもDSらしさといえるでしょう。

名車その3|シトロエンSM

ヘンタイ度30%…シフトレバーが横に動く

1970年代に生産されていたSMも、シトロエンを代表するヘンタイ車のひとつ。洗練されたスタイリングと動力性能の高さで評判を呼んだこの車にも、シトロエンらしさが隠されていました。

一般的にシフトレバーといえば前後に動かすものですが、なんとこのSMは前後ではなく左右にシフトレバーを動かして操作するようになっています。

もっともDSは1本スポークのステアリングの中心部からコラムシフトレバーがにょきっと生えているようなカタチだったので、当時のシトロエンオーナーからすれば大した変態っぷりではなかったのかもしれませんが……。

つねに新しいものを追求し続けてきたシトロエン。そのためときには一般常識からかけ離れたようなデザインや、一歩先を行き過ぎた機能を採り入れてしまい、結果的に変態チックな車をつくってしまうことも多々ありました。それでもこれら多くのヘンタイ車たちは、現在20世紀の至宝としていまなお多くの車好きを魅了し続けているのです。

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