スバルとポルシェがこだわる「水平対向エンジン」の5つのメリット
更新日:2020.01.09
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「水平対向エンジン」といえば、すぐにスバルとポルシェを思い浮かべる方が多いと思います。現在、直列エンジンとV型エンジンが主流の中、2つの自動車メーカーが「水平対向エンジン」にこだわるのには、それなりの理由があるはずです。今回は、「水平対向エンジン」の構造の特徴とメリットについてみていきましょう。
文・吉川賢一
文・吉川賢一
水平対向エンジンとは?
現在広く採用されているのは、シリンダーが一列に配列され、ピストンが上下に往復する「直列エンジン」です。全幅は抑えられますが、全長は長く、全高は高くなります。吸排気弁など、動弁機構を組み込んだシリンダーヘッドは、乗用車用エンジンの中で最もシンプルな構造になります。
「V型エンジン」は、排気量の大きいエンジンに採用され、直列でなくシリンダーを左右交互にV型に配置して、ピストンは斜めに往復します。シリンダーヘッドが、左右1つずつ1対必要ですが、「直列エンジン」に対して全長が抑えられ、全体としてコンパクトな構造になります。
対して「水平対向エンジン」は、独特なメカニズムを持っています。クランクシャフトに対してシリンダーを左右水平に配置し、左右に向かい合った一対のピストンが水平方向に往復するエンジンです。「V型エンジン」と同様に、シリンダーヘッドが左右1対必要です。
ボクサーがパンチを打ち合う様子に似ていることから、「ボクサーエンジン」と呼ばれています。最大の特徴は、全幅は広がりますが、全長が短く、全高が低いことです。
「V型エンジン」は、排気量の大きいエンジンに採用され、直列でなくシリンダーを左右交互にV型に配置して、ピストンは斜めに往復します。シリンダーヘッドが、左右1つずつ1対必要ですが、「直列エンジン」に対して全長が抑えられ、全体としてコンパクトな構造になります。
対して「水平対向エンジン」は、独特なメカニズムを持っています。クランクシャフトに対してシリンダーを左右水平に配置し、左右に向かい合った一対のピストンが水平方向に往復するエンジンです。「V型エンジン」と同様に、シリンダーヘッドが左右1対必要です。
ボクサーがパンチを打ち合う様子に似ていることから、「ボクサーエンジン」と呼ばれています。最大の特徴は、全幅は広がりますが、全長が短く、全高が低いことです。
水平対向エンジンの5つのメリット
「水平対向エンジン」のメリットは、次のようなものがあります。
①低振動
左右で対向しているピストンが、互いの慣性力を打ち消すように対称的に往復運動するため、エンジンは、振動が少なくスムーズに作動します。
②低重心
シリンダーが水平に配置されるために、全高が低く、全幅が広い構造となり、これによりクルマは低重心となります。しかも左右対称ですから、車両の安定した操縦性や走行性能に大きく寄与します。
③高剛性
全長が短いのでクランクシャフトが短く、またクランクシャフトは左右クランクケースによって、両側から強固に挟み込む構造なので、クランクケース全体の剛性が高くなります。この高い剛性は、低振動と耐久信頼性の向上につながります。
④高出力
パッケージングのために、エンジン全幅には制約があり、ショートストロークにならざるを得ません。このショートストロークと本来持つバランスの良さが、高回転化と高出力を実現します。
⑤衝突安全性
エンジンの全高が低いので、前面衝突した際、エンジンがフロアの下に潜り込み、乗員へのダメージが軽減できます。
①低振動
左右で対向しているピストンが、互いの慣性力を打ち消すように対称的に往復運動するため、エンジンは、振動が少なくスムーズに作動します。
②低重心
シリンダーが水平に配置されるために、全高が低く、全幅が広い構造となり、これによりクルマは低重心となります。しかも左右対称ですから、車両の安定した操縦性や走行性能に大きく寄与します。
③高剛性
全長が短いのでクランクシャフトが短く、またクランクシャフトは左右クランクケースによって、両側から強固に挟み込む構造なので、クランクケース全体の剛性が高くなります。この高い剛性は、低振動と耐久信頼性の向上につながります。
④高出力
パッケージングのために、エンジン全幅には制約があり、ショートストロークにならざるを得ません。このショートストロークと本来持つバランスの良さが、高回転化と高出力を実現します。
⑤衝突安全性
エンジンの全高が低いので、前面衝突した際、エンジンがフロアの下に潜り込み、乗員へのダメージが軽減できます。
水平対向エンジンの将来性について
スバルの場合、低重心で左右対称といった「水平対向エンジン」が持つ優位性と、相性の良い「フルタイムAWD(4駆)」技術を組み合わせて、「走りのスバル」「4駆のスバル」といった独自のブランドを築き上げました。レガシィやインプレッサのWRC(世界ラリー選手権)での成功が、その地位を不動にしました。
一方で、「水平対向エンジン」は、設計的な制約が多く、種々の要求に応える自由度がありません。
現在、クルマに要求されている最大の命題は、燃費規制を中心とした環境対応です。様々な環境対応技術や電動化技術と組み合わせるためには、「水平対向エンジン」に求められる進化だけでなく、プラットフォームの改良など、車体側の改良も求められるところでしょう。
一方で、「水平対向エンジン」は、設計的な制約が多く、種々の要求に応える自由度がありません。
現在、クルマに要求されている最大の命題は、燃費規制を中心とした環境対応です。様々な環境対応技術や電動化技術と組み合わせるためには、「水平対向エンジン」に求められる進化だけでなく、プラットフォームの改良など、車体側の改良も求められるところでしょう。
走りを追求するクルマのパワーユニットとして、「水平対向エンジン」が持つ低重心は、とても魅力的な要素です。たしかに弱点もありますが、弱みを克服するための技術ではなく、このエンジンが本来持っている強みを、さらに強化する技術革新に期待したいものです。
現状、「水平対向エンジン」にこだわっている自動車メーカーは、スバルとポルシェだけ。これからも希少技術として、異彩を放ってほしいと思います。
現状、「水平対向エンジン」にこだわっている自動車メーカーは、スバルとポルシェだけ。これからも希少技術として、異彩を放ってほしいと思います。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。