ATの多段化が進む理由とは?
更新日:2024.09.09
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近年、トルコン式オートマチックトランスミッション(以下AT)の多段化が進んでいます。10年前なら5ATでも最先端でしたが、最近では7、8ATが一般的になり、近くホンダはFF車にも10ATを投入する予定です。ATがここまで多段化してきた理由はなんでしょう。
文・吉川賢一
文・吉川賢一
ATの歴史を振り返る
ATの歴史は、1900年代の初頭、T型フォードまで遡ることができます。その後、アメリカのゼネラルモーターズが、オールズモビルの1940年型のオプション装備として「ハイドラマチック」を用意。これが、実用化の始まりとされています。
日本では、1959年にトヨタが「トヨグライド」と名付けた2速セミATを商用車である「マスターライン」に搭載したのを皮切りに、クラウン(1960年)、パブリカ(1962年)、コロナ(1963年)などにも用意。1968年になるとホンダが、「ホンダマチック」という3速フルATをN360へ起用しました。
初期のATは、コストと技術レベルの問題で、せいぜい3速だったのですが、ひとつのギアがカバーする速度域が広く、ギアチェンジの回数も少なかったので、それほどトラブルはなかったそうです。
その後、1980年代になって日本国内で広く普及し始め、1991年にはAT限定免許開始、今日ではAT車の販売台数が全体の98%を超えるなど、AT大国となりました。
日本では、1959年にトヨタが「トヨグライド」と名付けた2速セミATを商用車である「マスターライン」に搭載したのを皮切りに、クラウン(1960年)、パブリカ(1962年)、コロナ(1963年)などにも用意。1968年になるとホンダが、「ホンダマチック」という3速フルATをN360へ起用しました。
初期のATは、コストと技術レベルの問題で、せいぜい3速だったのですが、ひとつのギアがカバーする速度域が広く、ギアチェンジの回数も少なかったので、それほどトラブルはなかったそうです。
その後、1980年代になって日本国内で広く普及し始め、1991年にはAT限定免許開始、今日ではAT車の販売台数が全体の98%を超えるなど、AT大国となりました。
日本における、多段ATの始まりにあたるものは?
多段ATとしては、1989年日産セドリック/グロリアに搭載された、トルクコンバーター(以下トルコン)付き5ATが始まりと言われています。
同時期にBMWやメルセデスも5ATを導入し始め、重量感のある高級車を、より滑らか、かつ静かに走行させるよう、適切なギア比を選択できるようにしました。
現在では10速の車も増えてきましたが、なぜ多段化が進んでいるのでしょうか?
同時期にBMWやメルセデスも5ATを導入し始め、重量感のある高級車を、より滑らか、かつ静かに走行させるよう、適切なギア比を選択できるようにしました。
現在では10速の車も増えてきましたが、なぜ多段化が進んでいるのでしょうか?
多段化が進む理由は?
ATの多段化が進む理由の1つは、ギアの枚数が多くなることで、それぞれのギアの受け持つ車速の領域が狭くなります。そうなると、加速する時にエンジン回転を上げる必要がなくなり、また変速ショックも小さくなり、滑らかな走行と静粛性を得ることができることにあります。
また燃費の向上が大きいことも、多段化の理由です。つねに低い回転数を保って巡行しているほうが、燃費は安定します。特にトップギアは燃費用ギアと割り切れば、低いエンジン回転数で高速巡行ができますので、多段化は燃費向上が可能になるのです。
またエンジン回転数を燃費の良い範囲に留めるためには、ギアが多いほうがやり易くなります。このことも多段化することで燃費を向上させる理由になります。
さらに、ATの耐久性・信頼性の向上という技術進歩によるところが大きいのも理由です。ちなみに、大入力・大馬力に耐えられるタフさも魅力で、最近では路線バスでもトルコン式のATが使われています。
また燃費の向上が大きいことも、多段化の理由です。つねに低い回転数を保って巡行しているほうが、燃費は安定します。特にトップギアは燃費用ギアと割り切れば、低いエンジン回転数で高速巡行ができますので、多段化は燃費向上が可能になるのです。
またエンジン回転数を燃費の良い範囲に留めるためには、ギアが多いほうがやり易くなります。このことも多段化することで燃費を向上させる理由になります。
さらに、ATの耐久性・信頼性の向上という技術進歩によるところが大きいのも理由です。ちなみに、大入力・大馬力に耐えられるタフさも魅力で、最近では路線バスでもトルコン式のATが使われています。
なぜ、小排気量車に多段ATが使われないのか?
ATの多段化は小排気量車にこそメリットがありそうですが、なぜ普及しないのでしょうか?
理由は、重量が増してしまうことと、機械的に複雑になり、車両販売が高価になることです。高級車であれば生産に関するコスト分を、販売価格に転嫁することも可能ですが、ライバルの多い小型車(大衆車)では難しいと言わざるをえません。
そのため多段ATの代わりに、日本ではCVT(無段変速機)、世界的にはフォルクスワーゲン等が搭載するDCTなど、小型軽量なトランスミッションを採用する例が増えています。
理由は、重量が増してしまうことと、機械的に複雑になり、車両販売が高価になることです。高級車であれば生産に関するコスト分を、販売価格に転嫁することも可能ですが、ライバルの多い小型車(大衆車)では難しいと言わざるをえません。
そのため多段ATの代わりに、日本ではCVT(無段変速機)、世界的にはフォルクスワーゲン等が搭載するDCTなど、小型軽量なトランスミッションを採用する例が増えています。
燃費が良く、さらに加速レスポンス、振動を小さくするために、ATの多段化は欠かせないということですが、今後は何速まで増えるのか気になりますね。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。