CVTでの頻繁なシフトチェンジは良くないというのは本当か?

自動車整備場

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歴史が浅いせいか、今ひとつ信頼性に疑問を持たれつつも、燃費向上のためには必須アイテムとして軽自動車や小排気量車で多用されているCVT。

昔ながらの多段式AT(ステップAT)でも「頻繁なシフトチェンジはよくない」と言われていましたが、今またCVTでも同じ事が言われています。実際のところはどうなのでしょう?


Chapter
CVTは多段式ATと何が違うのか
CVTの頻繁なシフトチェンジで本当に壊れるならリコールもの
しかし、実際にリコールは起きた
パドルシフトはソフトウェア上の不具合は起こり得る
ハードウェア上は問題無し

CVTは多段式ATと何が違うのか

まず話の前提として、同じオートマでもCVTと昔ながらの多段式AT(ステップAT)は何が違うのか、という事から。昔ながらの多段式ATは文字どおり「3速」から、多いものだと「10速」まであり、ミッション内の多板クラッチを繋いだり切り離したりしながら変速を行います。

ギア(歯車)を切り替えて変速を行う以上、仕組みが違うだけでやっている事はMT(マニュアルトランスミッション)とそう変わりはありません。ただし、この自動的にクラッチが動力を繋ぎ変える機構が、ほんの微細なゴミが詰まるだけでも作動不良を起こす繊細な部分なのです。

そのため、「ATF(オートマフルード)はよほどの問題が無い限り、多少シフトショックが大きい程度で交換しない方がいい」とも言われており、実際フルード交換のためのドレンが廃止されて完全にメンテナンスフリーになっている車種もあるほどです。

それに対し、CVTは「変速」そのものを基本的に行わなず、ベルトとプーリー(日産のエクストロイドCVTのように一部例外有り)で変速比を連続的に変更しながら、トルクコンバーターや電磁クラッチで駆動を伝達したり切ったりしているだけです。

ある意味では多段式ATより単純で、ATの弱点に当たる機構が存在しません。そのため、ATは勝手にやる分はともかく、可能な限り変速をしない方が良い。CVTはそこまで神経質にならなくてもいい、と言われる元となっています。

CVTの頻繁なシフトチェンジで本当に壊れるならリコールもの

しかし、昔から多段式ATにもCVTにも「マニュアルモード」が存在します。

機械的にシフトレバーとミッションが結合されたMTでない限り、オートマやセミオートマミッションにとってのシフトレバーは単なる「スイッチ」でしか無いので、マニュアルモードもシーケンシャル式だったりパドルシフト式だったり、その方式は多様です。

ある意味、オートマチックでも「スポーティな走り」「MTのように変速したい」と考えるユーザーの嗜好を満たすために搭載された機能なので、そうしたユーザーが頻繁なシフトチェンジを行う事は想定済みです。

そのため、少なくともマニュアルモードでユーザーがシフトチェンジを自在にできるオートマに関しては「そうそう壊れない」という想定で市販されています。

一応、それでも壊れた時のことを想定してか、「頻繁にシフトチェンジしないでください」という意味の事を取扱説明書に記載してあるメーカーもありますが、それほど頻繁にシフトチェンジを楽しみたいユーザーであれば、最初からMT車を買っているはずなので、大多数のユーザーにとっては関係の無い話です。

もし、それほど頻繁で無いユーザーのシフト操作で壊れるような事があれば、それはリコールものと言えるでしょう。

しかし、実際にリコールは起きた

ところが、このCVTのマニュアルモードに起因するリコールが実際に発生してしまいました。

代表的なのがホンダのCVTで、昨年(2015年11月13日)には「アクセルを離して減速中にパドルシフトで2速から1速に変速すると、CVTのドライブシャフトプーリーに高い負荷がかかり、最悪の場合折損して走行不能になる」という内容で、「N BOX」シリーズや「N ONE」の約10万5千台がリコール対象になりました。

ホンダのCVTは、それ以前にも2013年6月13日に「変速レバーを前進、または後退位置にした直後に急激なアクセル操作を行うと、最悪の場合ドライブシャフトプーリーが折損する」として、同じく「N BOX」と「N ONE」38万台以上のリコールを出しています。

同種のリコールはダイハツも2013年12月にムーヴやタントなど約76万5千台の出していますので、ホンダばかりとは限りません。

パドルシフトはソフトウェア上の不具合は起こり得る

多段式ATで電子制御式がメインになって以降、こうした過負荷な状況ではそもそもシフトチェンジが行われない、すなわち走行不能になるような過負荷がそもそも起こりえない(操作してもシフトチェンジされないので)というのが大前提でした。

そのために「マニュアルモード」を採用できましたし、実際ユーザーが無理な操作をしても、コンピューターが変速可能と判断しない限りは操作を受け付けなかったのです。

しかし、ソフトウェアで何もかも制御するという場合はどうしても「バグ」がつきもので、ホンダやダイハツのCVTでのクレームがこれが原因でした。

特にホンダのパドルシフトを使った「減速中の2速から1速へ」という操作によるクレームは、マニュアルモードを積極的に使うユーザーなら誰しも行う可能性の高いものです。そこでドライブシャフトプーリーに負荷をかけないコンピューターの制御をしていてしかるべきところ、若干開発不足なところがあったようです。

どんな機械でもハードウェア上の限界はあるので、それを補うべきソフトウェアの問題、すなわちCVTそのものの欠陥で無かった事だけは幸いです。

ハードウェア上は問題無し

こうしたソフトウェアの開発不足による問題は当然起こりえますが、それをもってして「CVTの頻繁なシフトチェンジは良くない」とは言えません。

問題があるとすれば、それで何かが破損したり寿命を縮めるようなソフトウェアを組み込んでしまった事です。

そういう意味では、CVTでの頻繁なシフトチェンジが良くないとまでは言えませんが、長年培ってきた技術で熟成されたMTや多段式ATのような信頼性を得るためには、もう少し時間がかかるという事になります。

もっと究極の結論を言ってしまえば、「頻繁なシフトチェンジがしたいのならば、MT車に乗ればいい」だけなのです。
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