欧州ではDCT、日本ではATやCVTが多い理由!第4の道「AGS」とは?
更新日:2025.10.27
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従来は統計によれば、世界のオートマチック・トランスミッション市場において、2022年までにDCT(デュアルクラッチトランスミッション)が2割のシェアを占めるだろう、と予測されていました。ところが現状では地域差があり、欧州や中国ではDCTが多いものの、米国や日本ではCVTや従来型多段式ATが主流となっています。その原因は何でしょうか?
はじめに
DCT(デュアルクラッチトランスミッション)は変速が非常に早く効率も高い先進的なトランスミッションです。
そのため欧州で普及が進んでおり、しかし、日本ではDCT搭載車がごくわずかで、CVTや従来型ATが主流となっています。「DCTは日本の道路環境には合わないのではないか」という声もあります。
なぜ欧州と日本でこれほどDCTの普及状況が違うのでしょうか?本記事では、DCTの仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説し、日本で普及しにくい理由を探ります。
また、日本で主流となるATやCVTとの比較、および第四の選択肢とも言われるAGS(オートギアシフト)についてもご紹介します。
そのため欧州で普及が進んでおり、しかし、日本ではDCT搭載車がごくわずかで、CVTや従来型ATが主流となっています。「DCTは日本の道路環境には合わないのではないか」という声もあります。
なぜ欧州と日本でこれほどDCTの普及状況が違うのでしょうか?本記事では、DCTの仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説し、日本で普及しにくい理由を探ります。
また、日本で主流となるATやCVTとの比較、および第四の選択肢とも言われるAGS(オートギアシフト)についてもご紹介します。
基本の仕組み
DCT(デュアルクラッチトランスミッション)は、偶数段と奇数段をそれぞれ別のクラッチで担当し、次のギアを“先読み”しておく構造です。
変速時はクラッチの受け渡しだけで駆動力をつなぐため、スロットル全開でも加速の途切れが最小限に抑えられます。MT系のギアトレーンをベースにした直結感があり、エンジンの力がダイレクトに伝わるのが特徴です。
変速時はクラッチの受け渡しだけで駆動力をつなぐため、スロットル全開でも加速の途切れが最小限に抑えられます。MT系のギアトレーンをベースにした直結感があり、エンジンの力がダイレクトに伝わるのが特徴です。
DCTのメリット(欧州で普及する理由)
DCTは名前の通りクラッチを二枚備えた変速機構です。片方のクラッチで効率よく動力を伝達しながら、もう一方で次のギアを処理してスタンバイし、変速時に両者のクラッチを短時間で切り替えることで、非常に速い変速を実現します。
MT車と同じギア機構を利用しているため加速ロスが少なく、駆動力を直接伝える感覚や燃費面でも有利です。
MT車と同じギア機構を利用しているため加速ロスが少なく、駆動力を直接伝える感覚や燃費面でも有利です。
DCTは日本に合わないと言われる理由
一方、都市部などストップ&ゴーが多い道路環境では、繰り返す変速にDCTは苦戦します。特に小型車に搭載される乾式DCTは熱や湿度に弱く、低速時のクラッチ消耗や過熱が起こりやすいと指摘されます。
さらに、DCTはMTと同様にクラッチで直接駆動を伝達する構造のため、発進や低速時にギクシャクしやすいとも言われています。トルクコンバーターを使うATやCVTに比べると発進時のショックが大きく、クリープ現象や駐車時の細かな制御も難しいとされます。
これらの要因から、日本では「DCTは日本に合わない」とされるわけです。
さらに、DCTはMTと同様にクラッチで直接駆動を伝達する構造のため、発進や低速時にギクシャクしやすいとも言われています。トルクコンバーターを使うATやCVTに比べると発進時のショックが大きく、クリープ現象や駐車時の細かな制御も難しいとされます。
これらの要因から、日本では「DCTは日本に合わない」とされるわけです。
- 高温多湿かつ渋滞の多い日本では乾式DCTが過熱や消耗を起こしやすい
- 発進・低速域での滑らかさが不足しAT/CVTに対して乗り心地で不利
- 湿式DCTは複雑・重量増・コスト高で小型車に採用されにくい
日本で主流のAT・CVT、その理由と特徴
当然ですが、日本ではアクセルの微妙な調整が求められる渋滞の多い都市部の道路事情から、DCTに代わってCVTや従来型ATが広く活用されてきました。
CVT(無段変速機)はベルトやプーリーで連続的に変速比を変える構造で、変速ショックがなくエンジン回転を自由に制御できるため燃費性能に優れるミッションです。特に都市部のノロノロ運転や度重なる停止の多い環境でCVTは真価を発揮し、アイドリングストップとの組み合わせでMT車を上回る燃費を記録することもあります。
一方、トルクコンバーター式AT(従来型AT)は発進時の滑らかさが利点ですが、流体クラッチによる伝達ロスが課題でした。しかしレクサスIS-Fに全段ロックアップする8速ATが採用され高評価を得て以降、多段ATの採用が大型車や高出力車で広がりました。最新のATはロックアップ制御の進化と多段化によりCVTやDCTに迫る効率を実現しています。
CVT(無段変速機)はベルトやプーリーで連続的に変速比を変える構造で、変速ショックがなくエンジン回転を自由に制御できるため燃費性能に優れるミッションです。特に都市部のノロノロ運転や度重なる停止の多い環境でCVTは真価を発揮し、アイドリングストップとの組み合わせでMT車を上回る燃費を記録することもあります。
一方、トルクコンバーター式AT(従来型AT)は発進時の滑らかさが利点ですが、流体クラッチによる伝達ロスが課題でした。しかしレクサスIS-Fに全段ロックアップする8速ATが採用され高評価を得て以降、多段ATの採用が大型車や高出力車で広がりました。最新のATはロックアップ制御の進化と多段化によりCVTやDCTに迫る効率を実現しています。
この結果、日本では小型車にはCVT、大型車にはロックアップ機構付き多段ATが広く定着しており、過酷な気候環境でリスクの大きいDCTを積極的に導入する動きはほとんどありません。
このように、高級車や輸入車以外でDCTが大きくシェアを広げる余地は少ないと言えるでしょう。第4の選択肢「AGS」とは?
DCTでもATでもCVTでもない新型の自動変速機として、スズキが熱心に取り組んでいるのが「AGS」です。簡単に言えばMT車と同じシングルクラッチ式の手動変速機に油圧アクチュエーターを取り付け、エンジンを電子スロットルで統合制御しながら、変速操作を自動化したものです。
言い換えれば、クラッチペダルの無いMT車ですが、シフトレバーをDレンジに入れておけばAT車と同様に自動で変速してくれます。
日本でも30年ほど前に、いすゞの「NAVi-5」という同種コンセプトのシステム(ジェミニ等に搭載)が存在しました。しかし当時は電子制御技術が未成熟で乗用車では成功せず、その後トラックやバスで発展しました。
AGSではコンピュータが変速制御を学習し、当初は動作がぎこちないものの、徐々に滑らかになっていく工夫がされています。また、内部がMT構造のため駆動ロスが少なく燃費性能にも優れます。致命的なリコールなどが無ければ、今後軽自動車や小型車に広まる可能性もあるでしょう。
さらに安価で構造が簡素、メンテナンスが容易という利点もあります。現状、日本の主流はATやCVTですが、新技術であるAGSが実用化されれば、DCTに代わる簡易で高効率な自動変速機として、“第四の選択肢”になりうるでしょう。
言い換えれば、クラッチペダルの無いMT車ですが、シフトレバーをDレンジに入れておけばAT車と同様に自動で変速してくれます。
日本でも30年ほど前に、いすゞの「NAVi-5」という同種コンセプトのシステム(ジェミニ等に搭載)が存在しました。しかし当時は電子制御技術が未成熟で乗用車では成功せず、その後トラックやバスで発展しました。
AGSではコンピュータが変速制御を学習し、当初は動作がぎこちないものの、徐々に滑らかになっていく工夫がされています。また、内部がMT構造のため駆動ロスが少なく燃費性能にも優れます。致命的なリコールなどが無ければ、今後軽自動車や小型車に広まる可能性もあるでしょう。
さらに安価で構造が簡素、メンテナンスが容易という利点もあります。現状、日本の主流はATやCVTですが、新技術であるAGSが実用化されれば、DCTに代わる簡易で高効率な自動変速機として、“第四の選択肢”になりうるでしょう。
まとめ
「DCTは日本に合わない」という見方は、日常の快適さ・耐久性・コストを最重視する大多数のユーザーにとっては概ね正しいという文脈で成立します。
一方で、走りの喜びや高効率を求め、使用環境が合致するならDCTは強力な選択肢です。最終的な最適解は、走行環境(都市/郊外/高速)・車両サイズ・求める乗り味と維持費のバランスで決まります。
迷ったら、街乗り中心はAT/CVT、スポーツ志向や高速主体はDCT、コスト重視の実用品はAGS――この軸で比べると、自分に“本当に合う”トランスミッションが見えてきます。
一方で、走りの喜びや高効率を求め、使用環境が合致するならDCTは強力な選択肢です。最終的な最適解は、走行環境(都市/郊外/高速)・車両サイズ・求める乗り味と維持費のバランスで決まります。
迷ったら、街乗り中心はAT/CVT、スポーツ志向や高速主体はDCT、コスト重視の実用品はAGS――この軸で比べると、自分に“本当に合う”トランスミッションが見えてきます。