振動の体感が半分に!? 周波数感応ショックアブソーバー搭載車に乗ってみた
更新日:2024.09.09
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自動車の乗り心地やハンドリングを作り込むうえで欠かせないのが、サスペンション。なかでもショックアブソーバーは、スプリングの揺れを抑え、車体を安定させる重要な役目を担っています。このショックアブソーバーに「周波数感応ショックアブソーバー」という製品があることをご存知でしょうか。今回は、この周波数感応ショックアブソーバーを紹介していきます。
文・吉川賢一
文・吉川賢一
一般的なショックアブソーバーの働きとは?
現在のクルマのサスペンションに使用される一般的なショックアブソーバーは、「筒型」をしています。この筒のなかには、オイルが封入されています。
ショックアブソーバーが伸び縮みをすると、筒の内部に入れられたオイルが、ピストンバルブに空けられた狭い流路を通り上下します。そのときに発生する抵抗が「減衰力」になります。「減衰力」は、ショックアブソーバが伸び縮みする速さ、つまりピストンの移動速度が速いほどの大きくなります。
ショックアブソーバーが伸び縮みをすると、筒の内部に入れられたオイルが、ピストンバルブに空けられた狭い流路を通り上下します。そのときに発生する抵抗が「減衰力」になります。「減衰力」は、ショックアブソーバが伸び縮みする速さ、つまりピストンの移動速度が速いほどの大きくなります。
周波数感応ショップアブソーバとは?
周波数感応型のショックブソーバーの”周波数”とは、ショックアブソーバーが伸び縮みをする周波数のことです。
道路を走行しているとき、ショックアブソーバーは、常に振動を受けとめています。たとえば、曲がり角でハンドルを切りボディがグラッと傾くとき、ショックアブソーバーはゆっくりと大きなストロークをします。一般的なドライバーの場合、ハンドルを切る速さ(周波数)は0.1~2Hz程度で、こういったシーンでクルマの挙動を安定化させるためには、減衰力は高めにする必要があります。
一方で、荒れた路面を走行しているときは、ショックアブソーバーには、小さな振幅ですがさまざまな周波数が混ざった振動が入力されています。
小さな凸凹が続く、ピョコピョコ跳ね上げられる路面では、10Hz程度の周波数が伝わることもありますし、石畳のような道路では、30Hz程度の振動が伝わることもあります。また舗装工事をした直後のアスファルトのような、綺麗な路面を走っていても、ザラザラとしたわずかな振動がショックアブソーバーには入ってきます。こういったシーンで滑らかに走るには、減衰力は低いほうが良いのです。
この周波数が小さいときには減衰力は高く、周波数がある程度大きい場合には減衰力は小さくといった、周波数に応じた減衰力の切り替えができるのが「周波数感応ショックアブソーバー」です。
道路を走行しているとき、ショックアブソーバーは、常に振動を受けとめています。たとえば、曲がり角でハンドルを切りボディがグラッと傾くとき、ショックアブソーバーはゆっくりと大きなストロークをします。一般的なドライバーの場合、ハンドルを切る速さ(周波数)は0.1~2Hz程度で、こういったシーンでクルマの挙動を安定化させるためには、減衰力は高めにする必要があります。
一方で、荒れた路面を走行しているときは、ショックアブソーバーには、小さな振幅ですがさまざまな周波数が混ざった振動が入力されています。
小さな凸凹が続く、ピョコピョコ跳ね上げられる路面では、10Hz程度の周波数が伝わることもありますし、石畳のような道路では、30Hz程度の振動が伝わることもあります。また舗装工事をした直後のアスファルトのような、綺麗な路面を走っていても、ザラザラとしたわずかな振動がショックアブソーバーには入ってきます。こういったシーンで滑らかに走るには、減衰力は低いほうが良いのです。
この周波数が小さいときには減衰力は高く、周波数がある程度大きい場合には減衰力は小さくといった、周波数に応じた減衰力の切り替えができるのが「周波数感応ショックアブソーバー」です。
フリーピストンによって減衰力を制御する機構
周波数感応ショックアブソーバーの内部の機構はシンプルで、通常のピストンバルブの下に、自由に上下へ動くフリーピストンを内蔵した、副室が設けられています。
このフリーピストンは、周波数が高い(微振幅域)場合、オイル流路をふさがない範囲で上下へ動き、減衰力の立ち上がりを抑制して乗り心地をよくすることができます。反対に周波数が低くストロークが大きい動きをした場合、フリーピストンが底づいて流路を閉じ、通常のピストンバルブのみを使用して、大きな減衰力を発生させ、車体のぐらつきを抑制します。
このフリーピストンは、周波数が高い(微振幅域)場合、オイル流路をふさがない範囲で上下へ動き、減衰力の立ち上がりを抑制して乗り心地をよくすることができます。反対に周波数が低くストロークが大きい動きをした場合、フリーピストンが底づいて流路を閉じ、通常のピストンバルブのみを使用して、大きな減衰力を発生させ、車体のぐらつきを抑制します。
乗った印象は?
この機構を持ったショックアブソーバーは、2009年に日産(Y51)フーガへ採用されたKYB製の「ハーモフレック」が有名です。現在は、他のメーカーでも周波数感応ショックアブソーバーが開発されており、国内だと日立オートモーティブも、その技術を保有しています。
筆者は、そのKYBの「ハーモフレック」が装着されたV37スカイラインと、未装着のV37スカイライン(ショックアブソーバ以外は同スペック)を乗り比べたことがあります。
そのときの印象は、「ハーモフレック」装着車は、少々荒れた路面を走ったときに地面から受けるごつごつした突き上げがじつに少なく、ばね下で振動を吸収しており、まるで道路の上に敷いた柔らかな布の上を走っているかのようでした(体感だと半分程度になった)。またコーナーでは、ボディの余計なぐらつきも少なくしっかりとしていて、シャープなハンドリング。その価値を、十分に感じることができました。
筆者は、そのKYBの「ハーモフレック」が装着されたV37スカイラインと、未装着のV37スカイライン(ショックアブソーバ以外は同スペック)を乗り比べたことがあります。
そのときの印象は、「ハーモフレック」装着車は、少々荒れた路面を走ったときに地面から受けるごつごつした突き上げがじつに少なく、ばね下で振動を吸収しており、まるで道路の上に敷いた柔らかな布の上を走っているかのようでした(体感だと半分程度になった)。またコーナーでは、ボディの余計なぐらつきも少なくしっかりとしていて、シャープなハンドリング。その価値を、十分に感じることができました。
減衰力の応答性を求めるようなスポーツ走行用ショックアブソーバーとは目的が異なり、乗り心地の質を飛躍的に高めることができる周波数感応ショックアブソーバーが、昨今、アフターパーツ市場にも登場し始めています。愛車の乗り心地が気になるという方は、注目してみてはいかがでしょうか。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。