SUVの元祖とは? 昔のSUVはどうだったのか

トヨタ ハイラックスサーフ 初代

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今や自動車市場で空前絶後のブームとなっている「SUV」。セダンやミニバンを抜いて、自動車カテゴリーのベーシックになりつつあります。このSUV、一体どのように生まれたのでしょうか?今回は、SUVの成り立ちを追ってみましょう。
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SUVはピックアップトラックが先祖
SUVはどんどん進化していく

SUVはピックアップトラックが先祖

今ではSUVという言葉は、自動車ファンではお馴染みとなりました。SUVは「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の略語。意味としては、「スポーツ用多目的車」というような感じでしょうか。SUVの起源に諸説ありますが、発祥はアメリカです。

アメリカには戦後直後から、四輪駆動車の元祖「Jeep」をベースにしたステーションワゴンがありました。人や荷物が十分に載せられる上に、優れた悪路走破性を持った4WDワゴンは、アメリカでは都市生活者を中心に非常に人気があったのです。

こうした十分なロードクリアランスを持った4WDワゴンは、その後各社からたくさんのモデルがリリースされました。トヨタも北米でランドクルーザー55/56型を発売し、その顔つきから「ムース(へら鹿)」の名前で愛されていました。この4WDワゴンの流れが、まずひとつ目のSUVの流れになっています。
さて、アメリカではピックアップトラックというカテゴリーが人気です。全米の自動車売り上げベスト3は、ここ数年間、ずっとピックアップトラックが占めています。なぜ、こんなに人気なのでしょうか。

それはピックアップトラックが、州によっては無税か、税額が極めて低いことが要因です。さらに自動車保険も割安です。アメリカでは自動車保険は非常に高額で、自動車を持ったばかりのティーンには、非常に経済的な負担となります。そのため、多くの若者たちがピックアップトラックを選ぶというムーヴメントがあります。また低所得者にも、このカテゴリーは人気があるようです。

ピックアップトラックに、サーフボードや遊び道具を積んで出かける…というライフスタイルは、60年代から若者たちのベーシックでした。ですが、ピックアップトラックにも弱点があります。それは荷台に屋根がないことです。雨が降れば雨ざらし、防犯的にも芳しくありません。

そこで、ピックアップトラックの荷台に簡素なFRP製のシェルをかぶせて、4WDワゴンのようなスタイルに仕上げて使うのが、80年代から広がっていきました。これが、いわゆるSUVの源流と言われています。

SUVはどんどん進化していく

ピックアップトラックにシェルをかぶしたSUVは、やがて自動車メーカーからも発売されます。日本車で言えば、トヨタのハイラックス・サーフや日産のテラノなどです。

初代ハイラックス・サーフは典型的なSUVで、後部座席を持っているものの、わざわざ別体式のシェルをかぶせたようなエクステリアデザインを持っていました。

これはアメリカでピックアップトラックのスタイルが人気で、原型を残すイメージ戦略を取ったからだと言われています。初代テラノもまた、ダットサントラック4WD・シングルキャブにシェルを載せたようなデザインでした。

こうした車両はSUVと呼ばれて、日本でも瞬く間に人気となりました。当時のトレンディドラマなどに登場し、ファッションリーダーの乗る車というイメージが定着していきました。
しかし、4WD車の世界に、また別なムーブメントがやってきました。それが「ライトクロカン」です。当時流行していたランドクルーザーやパジェロ。ビッグホーンなどのオフロード4WDは、ラダーフレームという頑丈なはしご形の骨格を持っていました。しかし、これは車重が重くなる要因となり、同時にオンロードでの運動性能低下、燃費低下につながっていました。

当時のユーザーは、オフロード4WDの燃費の悪さと日常での走りの悪さに、段々と不満を募らせていたのです。そこでメーカーが考えたのが、モノコックボディにオフロード4WDのようなスタイルを持たせたライトクロカンでした。トヨタからはRAV4、ホンダからはCR-Vが登場し、これも瞬く間にヒットしていきました。このライトクロカンは、SUVの3つめの源流なのです。

90年代中盤になると日本のオフロード4WDブームは終息し、また世界的にも沈静化していきます。ただアメリカだけは、相変わらず新型のSUVを発売していましたが、世界的にはあまり注目されないカテゴリーでした。

ところが、90年代から2000年初頭にかけてのアメリカというのは経済成長期。彼の地では高額なモデルが飛ぶように売れ、アメリカ国外のメーカーもそれを無視できませんでした。アメリカでは様々なジャンルの車が走っていますが、相変わらずSUVは人気だったのです。
その市場にまず参入してきたのが、BMWのX5です。当時のBMWはランドローバー社を傘下にしており、それもSUVの開発に拍車をかけました。次に、アメリカの富裕層に人気のポルシェがカイエンを投入。こうして、現在につながる高級SUVが続々と誕生していくのです。

その後、ロシアや中国の景気が良くなり、SUVは世界的な流行となっていきます。またSUV人気にあやかって、小型車などをベースに十分なロードクリアランスを確保した「クロスオーバー」というカテゴリーが生まれます。これはライトクロカンの流れを引いており、2WD車でも車高をアップして、タフなイメージのサイドパネルやルーフレールを取り付けて、SUVのような雰囲気に仕上げたモデルです。

ちなみにクロスオーバーを最初に作ったのは、スバルとも言われています。スバルは昔からステーションワゴンを得意としており、オーストラリアなど向けに車高をアップしたモデルを販売していました。

そうしたモデルは、レガシィのグランドワゴンやアウトバックになり、フォレスターになっていきました。またフィアット・パンダや、ラーダ・ニーバといったコンパクト4WDがクロスオーバーの元祖だという声もあります。

このように、SUVは様々な流れが合流して誕生しました。昨今では2WDのSUVもオーソドックスになり、十分な悪路走破生を持つモデルも少なくありません。また、人も荷物も多く積めて、遠くが見通せるため運転がラク、フロア高が低くて乗降もしやすく、しかもオンロード性能が優れています。

ホンダ ヴェゼルやトヨタ C-HRのように、街中でもSUVを多く見かけるようになりました。最後までSUVに参入しなかったランボルギーニやロールス・ロイスまで、ニューモデルを投入してくるようです。

かつては、ちょっとキワモノ扱いだったSUVは、一過性のブームに終わることなく、車のオーソドックスなカテゴリーになりつつあるのです。

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