小沢コージのものくろメッセ その12 ナゾだらけの“ミライ狂想曲”を ちょっとだけ解く

アヘッド 小沢コージ

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昨年12月に発表された、事実上、世界初の量産燃料電池車とも言えるトヨタ・ミライ。走行中に水しか出さない新しいエコカーなだけでなく、宇宙船のようなユニークスタイルとか、業界人からみると恐ろしく安い723万600円の価格とか、補助金が1台当たり国から202万円、東京なら都から101万円出て400万円台で買えるとか、当初は年販たったの700台で、それでも専門家的には多い上に、初期受注が1500台も入り、バックオーダーを抱えているとか妙に盛り上がっている。それも専門誌以上に大手メディアでだ。

text : 小沢コージ [aheadアーカイブス vol.148 2015年3月号]
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その12 ナゾだらけの“ミライ狂想曲”を ちょっとだけ解く

その12 ナゾだらけの“ミライ狂想曲”を ちょっとだけ解く

が、なんでそうなるのか分からない人も多いのではあるまいか。不肖オザワも正直言わせて貰うとナゾが多く、本当の意味で「723万円がいかに安いのか」「燃料電池車のどこが凄いのか」は勉強の真っ最中。

そもそも空気中の酸素とタンクに詰めた水素ガスを合わせて発電する〝燃料電池〟の存在がナゾだ。化学反応で電気が生まれるのは漠然と分かるがなぜにそんなに高いのか。これは調べたら電極に多くて1台約100gの貴金属、それもプラチナが使われているからなんだとか。なるほどねぇ。

だが、それ以上に不思議なのが燃料補給に関して。フル充填から約650㎞走れるのは普通のガソリン車とほぼ同じだが、一番のビックリは水素ステーションの数で、現状全国に8ヵ所しかなく、今年3月までに20ヵ所、2015年度内に100ヵ所が目標。

マジですか。それでホントに1500台も買う人がいるんですと! さらにビックリは補助金の投入額で、来年度要求で水素ステーションに対する補正予算は約100億円で車両に関しては新エネルギー車全体で300億円。

うーむ、ホントにこんなに使っていいんですか? 言い方悪いけど、もしや超大型補助金ビジネスだからメディアや政治家も盛り上がってるのでは??

が、さらに調べて分かった。これはもっと大局的に見る必要があり、根本的には国自体のエネルギー戦略なのだと。

先日、資源エネルギー庁の燃料電池推進室長に話を聞きに行ったが、現在日本が買っている原油価格は総額約20〜30兆円!!特に原発が停止してから3.6兆円も増えており、それだけで1日当たり100億円!

だからと言ってオザワは原発推進派ではないが、実は既に原油精製時に水素を出している日本。現状年間1000万台の燃料電池車が動かせるとか。簡単に言っちゃうとすべて燃料電池車になれば、毎年出る新車すべてのガソリン軽油代が浮く。

それだけじゃない。水素は太陽電池の再生可能エネルギーを使って水を電気分解すれば、水素ガスとしてエネルギーを貯蔵でき、燃料電池のシステムが整えばその分原油代が浮く。上手く行けば今まで産油国に流れていた年間ン兆円のお金を産業として日本に戻した上、燃料電池システムを世界に売れるようになるかもしれないのだ。

もちろんどれだけの時間と税金が掛かるかはわからない。が、上手く行けば石油にあまり頼らないニッポン! が作れるかもしれない。いやはやこれは余りにデカく、勇壮な金とエネルギーの物語なのである。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。
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