モタスポ見聞録 Vol.4 世界三大レースとは

アヘッド 佐藤琢磨氏

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世界三大レースと言われるレースがある。ル・マン24時間(フランス)とインディ500(アメリカ)、そしてモナコ・グランプリ(モナコ公国)だ。長い歴史を持つのが共通点で、続いているのには理由がある。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.176 2017年7月号]
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モタスポ見聞録 Vol.4 世界三大レースとは

モタスポ見聞録 Vol.4 世界三大レースとは

ル・マン24時間の初開催は1923年で、発展途上にあった自動車の技術開発や耐久性の向上を狙いとして始まった。ディスクブレーキや燃料噴射装置、ターボやタイヤ空気圧モニタリングシステムなどの技術がル・マンを通じて鍛えられていった。近年はハイブリッド技術が開発の焦点だ。

ル・マンの厳しさは約5,000kmを1日で走り切ってしまう過酷さにある。どんなに入念に準備しても、予期せぬトラブルが起きるのがル・マンだ。今年はポルシェとトヨタが投入した5台がすべて、トラブルやアクシデントに見舞われた。だからこそ、修理しながらも生き残り、トップでゴールする価値がある。

1911年に第1回が開催されたインディ500は、佐藤琢磨が日本人として初めて優勝したことで存在を意識した人も多いことだろう。2本の直線を4つのコーナーで結んだ1周2.5マイル(約4km)のオーバルコースを250周、500マイル走って決着をつける。東京から広島まで、一気に駆け抜ける感覚だ。

コースはシンプルだが、370km/hで周回するだけに奥が深い。先頭のマシンは空気の壁を切り裂きながら走ることになる。おかげで後続のマシンは空気の影響が少なくなるので、先頭のマシンに吸い寄せられるようにして近づくことができる。ドラフティングと呼ぶ効果だ。

この効果を使うことができるので、レースの早い段階で先頭に立つことは必ずしも得策ではない。どの段階でトップを狙うのか。超高速で走りながら脳みそをフル回転させて計算し、決断したら勇気を持って仕掛ける。長丁場のレースだが、最後の瞬間まで勝利の行方はわからず、だかこそ、勝者に向けられる賞賛も大きい。

モナコGPはヨーロッパ有数の高級リゾート地で開催される華やかさが、三大レースに数えられる大きな要素だ。初開催は1929年で、'50年以降はF1の一戦として開催されている。狭い市街地コースを300km/hに達するスピードで走るため、繊細なコントロール能力が求められる。

ガードレールにぶつかってしまってはだめだが、こするくらいぎりぎりを攻めないと勝負にならない。モナコを手なずけたドライバーは「モナコ・マイスター」として特別な賞賛を得ることになる。'93年に6回目の勝利を挙げたA・セナが、モナコ最多勝ドライバーだ。

マクラーレン・ホンダからF1に参戦するF・アロンソは、「世界三大レースを制するのが人生の目標」だとして、優勝経験のあるモナコGPを欠場し、インディ500に出場した(予選5番手からスタートし、リタイヤ)。三大レースを制したドライバーはいまだかつてひとりだけしかおらず、G・ヒル(1929〜1975年)である。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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