目指せ!カントリージェントルマン VOL.1 本物のワークホース
更新日:2024.09.09
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幸か不幸か、今年の春はジャガイモの植え付けが間に合わなかった。種イモの芽出しまではしていたのだけれど、ちょうどそのころ原稿書きが忙しくなってしまい、そのまま放置してしまったのである。
text:吉田拓生 [aheadアーカイブス vol.177 2017年8月号]
text:吉田拓生 [aheadアーカイブス vol.177 2017年8月号]
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- VOL.1 本物のワークホース
VOL.1 本物のワークホース
菜園家にとって「ジャガイモ失敗」の意味は大きい。それは春の畑の1番バッターだからである。1番バッター凡退、というレベルではなくバッターが球場に来なかった、くらいの話なのである。
それでも冒頭に「幸か不幸か」と記したのは幸の要素も含まれていたからだ。我が家の畑では年に2度、ジャガイモを育てていた。収穫しては次回の種イモとして利用していた赤いジャガイモ“アンデス”は、都合14回も我が家で代替わりしたのである。
こうなると愛着もひとしおだけれど、人間で言えば近親相姦もいいところで、近頃は出来も芳しくなかった。1年前には夫婦そろって未熟なジャガイモの毒にあたって苦しみ、カミさんの印象も悪くなっていた。
そんなところに、今回の種の断絶である。自ら引ききることができなかったトリガーを、見えない力が後押ししてくれたのだろうか?
それでも冒頭に「幸か不幸か」と記したのは幸の要素も含まれていたからだ。我が家の畑では年に2度、ジャガイモを育てていた。収穫しては次回の種イモとして利用していた赤いジャガイモ“アンデス”は、都合14回も我が家で代替わりしたのである。
こうなると愛着もひとしおだけれど、人間で言えば近親相姦もいいところで、近頃は出来も芳しくなかった。1年前には夫婦そろって未熟なジャガイモの毒にあたって苦しみ、カミさんの印象も悪くなっていた。
そんなところに、今回の種の断絶である。自ら引ききることができなかったトリガーを、見えない力が後押ししてくれたのだろうか?
菜園家であり、しかも洋物かぶれの端くれでもあるので、長年ランドローバーに憧れている。レンジローバーのような艶っぽいやつではなく、ディフェンダーのようなワークホースを生活に取り入れたいのである。
愛車選びをするたびに逡巡していたのだけれど、当のディフェンダーは昨年ついに生産終了となり、昨今は最終モデルとか限定車やらが新車以上の価格で取引されている。
高騰したディフェンダー90トラックのピカピカにワックス掛けされた荷台に、一片80kgにもなる原木を放り込む勇気の持ち主などどこにいるのだろうか?
かくして僕は今日もスバル・サンバー・トラックに乗っている。過積載にも耐える強固なサンバーといえど、放り込まれ続ける原木の重みには耐えきれず、歪んだエンジンカバーの隙間から流れ込んだ雨水がエンジンを濡らし、そのおかげで近年はトラブルが絶えなかった。
愛車選びをするたびに逡巡していたのだけれど、当のディフェンダーは昨年ついに生産終了となり、昨今は最終モデルとか限定車やらが新車以上の価格で取引されている。
高騰したディフェンダー90トラックのピカピカにワックス掛けされた荷台に、一片80kgにもなる原木を放り込む勇気の持ち主などどこにいるのだろうか?
かくして僕は今日もスバル・サンバー・トラックに乗っている。過積載にも耐える強固なサンバーといえど、放り込まれ続ける原木の重みには耐えきれず、歪んだエンジンカバーの隙間から流れ込んだ雨水がエンジンを濡らし、そのおかげで近年はトラブルが絶えなかった。
さらに吹きつける潮風のお陰でボディの端々が不二家のホームパイのようになってきていたこともあり、先ごろついに買い替えを決心した。またぞろ、スバル・サンバー・トラック。年式、型式まで一緒である。鉛筆が短くなって握れなくなったら、誰だって再び同じ鉛筆を買うのと同じこと。軽トラは趣味ではなく生活の道具なのだから。
ランドローバーは今頃せっせと新型のディフェンダーを開発しているらしい。だがそれは写真で見る限りVWポロに対するクロスポロ程度のシロモノにしか見えない。イギリスの田舎者、もしくは日本の洋物かぶれが欲しいのはパイクカーではなく、本物のワークホースなのである。本物が登場したら、僕は喜んでサンバーを卒業するだろう。
ランドローバーは今頃せっせと新型のディフェンダーを開発しているらしい。だがそれは写真で見る限りVWポロに対するクロスポロ程度のシロモノにしか見えない。イギリスの田舎者、もしくは日本の洋物かぶれが欲しいのはパイクカーではなく、本物のワークホースなのである。本物が登場したら、僕は喜んでサンバーを卒業するだろう。
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text:吉田拓生/Takuo Yoshida
1972年生まれのモータリングライター。自動車専門誌に12年在籍した後、2005年にフリーライターとして独立。新旧あらゆるスポーツカーのドライビングインプレッションを得意としている。東京から一時間ほどの海に近い森の中に住み、畑を耕し薪で暖をとるカントリーライフの実践者でもある。
text:吉田拓生/Takuo Yoshida
1972年生まれのモータリングライター。自動車専門誌に12年在籍した後、2005年にフリーライターとして独立。新旧あらゆるスポーツカーのドライビングインプレッションを得意としている。東京から一時間ほどの海に近い森の中に住み、畑を耕し薪で暖をとるカントリーライフの実践者でもある。