忘れられないこの1台 vol.70 YAMAHA SR

vol.70 YAMAHA SR

※この記事には広告が含まれます

1978年は、僕にとって特別な年だ。現在、編集長を務めるライダースクラブが月刊誌として創刊され、今回、忘れられない一台として取り上げるヤマハSR400&500が誕生した年だからだ。キャンディーズが解散し、王貞治が800号本塁打を達成したそんな昔でもある。'78年当時、2015年の今もSRが新車で売られていると想像した人はいなかったはずだ。そしてそれは、ライダースクラブも同じだろう。

text:小川 勤 [aheadアーカイブス vol.148 2015年3月号]
Chapter
vol.70 YAMAHA SR

vol.70 YAMAHA SR

▶︎1978年のデビュー以来、37年にわたって基本設計を変えずに販売を続けているSRだが、キャブレターモデルは2008年に排ガス規制に適合することができず、一度生産を終了。しかし2009年にインジェクションを搭載した現行モデルを発売し現在に至っている。


僕は中古車、新車、レーサーと様々なSRを計5台買った。いま手元にあるのは'78年式の500と'10年式の400だ。'78年式は2台目のSRで、不動車を再生した。'10年式は吸気系がキャブレターからインジェクションに変わった最初の年で、「インジェクションはカスタムできない?」という巷の噂を払拭したくて購入。このバイクを題材にSRのムックを1年に1冊製作している。

なぜ思い出のバイクかというとその答えは簡単。初めて買ったのがSRだし、転んだのも、タンデムも、ツーリングも、サーキットを走ったのも……と、バイクの初めては大半がSRだったからだ。

しかし、僕が編集長を務めるライダースクラブは、バイク誌の中でもっともスポーティーな路線を突っ走っている雑誌だ。最新の電子制御満載のバイクにも度々試乗し、サーキットも走っている。太いラジアルタイヤのグリップや旋回性の高さは特筆で、まるでレーサーのような気分にさえさせてくれる。でも僕は、いま新車で買えるバイクの中でもっともアナログなSRを手放せない。

始動はセルでなくキックのみ。エンジンはピストンがひとつしかない単気筒で、タイヤは頼りないほどに細いバイアスだ。極論すると'78年からほとんど変わっていない。
それでも乗る度に「SRはいいなぁ」と思う。交差点を曲がるときでさえ操作している醍醐味があり、ライダーとバイクが一体になる一瞬が訪れる。ビッグバイクだとこうはいかない。

SRは、「バイクを操る楽しみ=スポーツ」という醍醐味が低い速度で訪れるのがいい。それでいてライダーがスキルを磨けば、峠でビッグバイクに負けない実力も持つ。

そして、ビッグシングル特有のエンジンが放つ鼓動は、まるで人の心臓の脈動のようで、だからスロットルを開けるたびに人同士のような温かいコミニュケーションが生まれる。

かつてSRのキャッチコピーに深化という言葉があった。SRにふさわしい、いい言葉だなぁと思った。SRはSRらしさを失わずに進化、熟成、発展、進展、成長、前進してきたという意味だと思った。だから僕はこれからもSRとライダースクラブとともに深化していきたい。

------------------------------------------
text:小川 勤/Tsutomu Ogawa
1974年生まれ。ライダースクラブ編集長。21歳の時に枻出版社でアルバイトを始め、現在に至る。街乗りからレースまでをバイクで楽しむ。趣味で鈴鹿4耐や菅生6耐、もて耐にも参戦。バイクは長く乗るほど、歳を重ねるほどに楽しくなるもの。そのため、ライダースクラブでは長く楽しむためのコツとして毎号、ライテクを磨く特集を組んでいる。
【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細