クルマ作りがこだわり続けたヒストリーガレージの10年 vol.6 匠と語り合える場所

アヘッド レストアピット

※この記事には広告が含まれます

先月紹介したナニーニ・カフェでは、大きなガラス越しに、ある作業風景を楽しめる席がある。子どもを抱えた父親や国内外からの観光客が、その様子をじっと見つめたり、カメラに収めたりしている。だが、大きなガラスの向こうに見えているのは、厨房でも料理をするコックでもない。

text:村上智子 photo:渕本智信 [aheadアーカイブス vol.121 2012年12月号]
Chapter
vol.6 匠と語り合える場所 ーレストアピット

vol.6 匠と語り合える場所 ーレストアピット

1960年代を中心とする展示車両をレストアしたり、トヨタ2000GTのエンジンのオーバーホールをしたりする〝匠〟の作業風景だ。

ここで活躍するのは、TRDでレーシングチームのメカニックを務め、2000GTの開発に携ったり、何十年にもわたりヒストリックカーの整備で活躍したりしてきた60歳、70歳代の匠たち。彼らは、展示車両を動態保存するため、定期的に分解作業を行う。

時には修理を施し、部品が壊れてしまった時は、試行錯誤しながらも自分たちで甦らせる。その高い技術力と飽くなき探究心は、シトロエンのステアリングギアボックスまでも作り上げてしまったほどだ。ちなみにレストアピットの脇に飾られたトヨタ2000GTの美しいミニチュアエンジンは、彼らの手によるものである。

これほど物事を極めてきた人たちの集団だけに、一見敷居が高そうに感じるが、実は見学者とのコミュニケーションにも気軽に応じてくれる。

スタッフにその場で許可を得れば、中に入って作業に立ち会うのはもちろん、直接話し掛け、質問しても構わない。意外に感じたのが、「自分で整備したい」「こういう物が作りたいけれどどうすればいいか分からない」という人には、匠自ら相談に乗り、アドバイスをくれることもあるということだ。

「工業製品にも魂は宿るんです。手の掛かるものほど面白いし、その気持ちが分かる人とは盛り上がりますね」と匠は笑顔を見せる。互いの立場を超え、ここでは皆、ただのクルマ好きでいられるのだ。好きなことをやり続けるという生き方に近付ける場所なのかもしれない。

【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細