スバル車から消えるボクサーサウンド…あの「ドコドコ音」はもう聞けないのか?

そのサウンドはボクサーエンジンと共に

普通に走ってくる車とは、明らかに違う排気音…とも「ドコドコドコ」と、何とも形容しがたい音が近づき、ブリッピングをすれば、「ドリュリュリュリュン!」と、これも普通の車にはありえない音を響かせます。それを鳴らすクルマは、VWの「ビートル」や「カルマンギア」かもしれません。あるいは、昔の空冷フラット6を積んだポルシェ911かもしれません。

しかし、もし国産車であれば、それはスバル車でしょう。ヨタハチ(トヨタスポーツ800)や初代パブリカ、ミニエースの空冷フラットツインなら「パタパタパタ」ですから、何か違います。

ボクサーサウンドとは、水平対向エンジンに特有の排気音です。直列4気筒などシリンダー配置が直列のエンジンではまず鳴らず、星型やV型エンジンの一部で似たような音を鳴らすものもあります。

特にアメリカンV8エンジンは似たようなドロドロ音を鳴らすイメージがありますが、水平対向エンジンだけは、そのシリンダー配置とピストンがボクサーの打ち合いのように見える「ボクサーエンジン」という別名から特別に「ボクサーサウンド」と呼ばれていました。

その排気音への親しみをこめて「ドコドコエンジン」と呼ばれる事も一部ではあったそうです。

ボクサーサウンドはなぜ響く

それではなぜ、ボクサーエンジンはあのような派手な音を立てていたのでしょうか?

水平対向エンジンはシリンダーが左右に分かれており、シリンダーからの排気をまとめるエキマニ(エキゾーストマニホールド)も各バンク(列)から別々に伸び、集合していきます。この時のエキマニの長さがシリンダーごとに大きく異なると、エキマニの集合部でタイミングも排気がバラバラにぶつかり合う「排気干渉」が起きる事から、独特の「ドコドコ音」を響かせるのです(アメリカンV8エンジンのドロドロ音も原理は同じです)。

「それならエキマニの長さを合わせればいいじゃないか。」と言われればその通りで、スバルでも最初の水平対向エンジン搭載乗用車「スバル1000」では各シリンダーからの長さが同じ「等長エキマニ」を採用していました。

しかし、単純に各シリンダーから最短距離でつなげる不等長エキマニと違い、タコの足のようにウネウネと距離を稼がせる等長エキマニは製造に手間がかかります。

当然高コストになるので、2代目の「スバルff-1」以降は安価な不等長エキマニになったのです。それからスバル1300Gやレオーネと受け継がれ、3代目のレガシィや2代目インプレッサの途中までは、近づいてくるだけでスバル車が来た!とわかるものでした。

なぜボクサーサウンドは無くなったのか?

スバル車や水平対向エンジンのファンにとっては「ボクサーサウンド」と親しまれるものでしたが、単に高品質で上質な走りを求めるユーザーがスバル車を求める時代に入ると、次第に「ちょっとこの音は…」という声も出始めます。

マフラーで消音していてもどうしても目立ってしまいますし、他人の目を気にする人にとってはスバル車を敬遠する原因になってしまったのです。また、結局は妥協の産物であるボクサーサウンドは「水平対向エンジンが本来出す音ではない」とも言われました。

事実、競技会やサーキットなどモータースポーツでインプレッサやレガシィの中でも、ボクサーサウンドを消した車ほど速い傾向が見られたのです。

ボクサーサウンドは単なる「ノイズ」なのか?

かつてスポーツランドSUGOで開催されたある自動車雑誌のファン感謝デーで、独特の「バサバサ音」を響かせたチューニング・ビートルが、ホームストレートでR32スカイラインGT-Rを追い詰める姿を多くの自動車ファンに目撃されました。

あの時、「ファーン!」と心地よいエキゾースト・ノートを響かせたGT-Rの後ろに、「バササササササッ!」と音を立ててビートルが張り付いているさまが、ちょっと不気味だったのも確かです。

そのような光景を見ていれば、ボクサーサウンドがそこまで性能に影響するものでは無いという印象もあり、事実最近では排気干渉を利用して排気効率を上げる手法も編み出されています。

ラグジュアリー要素の強い車ではこれまで通りボクサーサウンドを消したスバル車が続くと思います。しかし「WRX STI」のようにスポーツ要素の強い車ならば、ボクサーサウンドを響かせる事に遠慮はいらないのです。

チューニングの結果として鳴らすのもいいのですが、あえてスバル純正で「ボクサーサウンドエディション」のような特別グレードを出してみるのも面白いかもしれません。

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