車のH型ミッションとシーケンシャルミッションの違いとは?

通常のHパターンミッション

シフトノブ

MT(マニュアルトランスミッション)、あるいはMTを油圧などで駆動するセミATの一部では、「Hパターン」と呼ばれるシフトパターンが使われています。Hパターン上に配置された各ギアのポジションに対して、シフトレバーを操作すればギアが入る仕組みで、運転席からは見えませんが、シフトレバー直下からミッション向けて伸びるロッドやワイヤーでミッション内部のギアを動かす複雑なリンク構造が仕込まれているんです。

運転席脇の「フロアシフト」、ハンドルの脇からシフトレバーが生えた「コラムシフト」、あるいはフロアとコラムの中間のパネルから生えた「インパネシフト」いずれの形式でも縦Hパターンですが、昔の車(スバル360など)では横Hパターンというのもありました。

ドグミッション

シーケンシャルミッションの前に一つ、「ドグミッション」をご説明します。

通常のMTのギアは、歯が斜めに切られた上に「シンクロメッシュ」と呼ばれる機構を持っています。ギアチェンジの際にギアを円滑に噛み合わせる仕組みなのですが、これがうまく働いていなかったり、クラッチをうまく切らずにギアチェンジをしようとして「ガリガリ!」とギア鳴りをさせた経験がある人もいますよね。そうした通常のギアに対し、回転方向に対して垂直に切られたギアの歯同士を、シンクロも介さずいきなりドンと繋げるのがドグミッションです。

「同じ容量のミッションでもギアがハイパワーに耐える」「シンロメッシュの破損でミッションやエンジンが破損しにくい」などのメリットがある一方で、ギアチェンジ時の音やショックが激しいという欠点があります。この欠点のため一般乗用車向けではなく、市販車で純正採用しているのは「アバルト695ビポスト」など、例外的に嗜好性の高い車種のみです。

ただ、シンクロメッシュを介した通常のミッションに比べて部品点数を減らして軽量化ができる事や、ハイパワーエンジンに対応する事から、競技やレースで多用されます。通常のMTと同じように変速する「Hパターンドグ」もありますが、レース用で多いのが前後方向の動きだけでシフトダウン・シフトアップを行う「シーケンシャルドグ」です。

シーケンシャルミッション

シフトレバーの前後方向の操作、またはハンドルから手を離さずとも左右のスイッチで操作できるパドルシフトで、一段ずつギアを操作するのが「シーケンシャルミッション」です。シフトチェンジを容易にするため「シーケンシャルドグ」が多いですが、通常のシンクロメッシュ機構を用いたギアを使ったシーケンシャルミッションもあります。

2→3→4など必ず1段ずつの操作になるので、一般公道での使用には全く向いていません。しかし、シフトレバー、またはパドル操作の速度がHパターンシフトのようにギアによって異なる(次のギアまでのシフトレバー移動距離が異なる)という事が無いので、レースなどで安定したギアチェンジを行うのにはとても向いています。

特にHパターンミッションの場合はシフトチェンジの際に間のギアを飛ばせる「ギア飛ばし」ができる一方で、シフトミスによる過回転でのエンジンブローや、シンクロメッシュの破損によるミッションの破損というリスクがつきまといます。

競技やレースで忙しくシフト操作する時にそこまで気遣い、かつHパターン上に操作し続けるというのは非常に難しく、横Gの中で3→4とシフトアップするつもりが3→2とシフトダウンしてしまうような事が起こります(実際にやってしまった事があります)。シーケンシャルミッションの場合はそうしたトラブルが起きにくいのも利点です。

最近は多い「シーケンシャルシフター」

レースや競技用の「シーケンシャルミッション」以外でも、最近はシフト操作をシーケンシャル式にした2ペダルMTやセミATが増えています。

DCTやAGSのように油圧駆動でシフトチェンジを自動操作するミッションでは、一部の例外を除けば、シーケンシャルシフターかパドルシフトになりますし、多段式ATやCVTでも手動変速が可能なもので採用されています。特に多段式ATは各ギアでトルコンを介さず直結するものが増えてきましたので、手動操作の重要性が増したと言えるでしょう。

もうかつてのようにMTでシフトレバーとアクセル、ブレーキ、クラッチを連携させた「シフトチェンジの楽しさ」が味わえる車はだいぶ減りましたが、その代わりにシーケンシャルシフターやパドルシフトでレーサー気分を味わえる車は増えています。

ただ、それだけではMT派の気分を変えるには弱いので、各自動車メーカーには「シーケンシャルシフトを楽しめる」演出に力を入れて欲しいですね。

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