BMWの日本仕様からDCT搭載車が減っている理由とは?現在の搭載車種は?

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欧州車と言えばDCT(デュアルクラッチトランスミッション)の車が多いですが、ことBMWに関しては今やほとんどのモデルで日本仕様からDCTが消えています。その実情と理由について考えます。
Chapter
DCTはかつては135iや335iクーペなどにも採用
DCTは街乗りで不評だった
DCTは新登場の8ATが優秀だった
走りを追求するモデルにDCTは残った
今後のBMWにDCTの復権はあるか

DCTはかつては135iや335iクーペなどにも採用

BMWは2010年前後の数年間にかけてDCTに非常に熱心で、M3などのハイパフォーマンスモデルに加え、通常車種の上級グレードにもゲトラグ製の7速DCTを設定していました。

1シリーズの135iや3シリーズの335iクーペが代表的で、トルコン式ATに似せた「クリープ現象」までクラッチの制御で再現していたのです。これにより実用性と走りの両立を狙ったのですが、日本でのユーザーの評価はバッサリと分かれる結果になります。

そして現在では、BMW車のほとんどがZF製で8速のトルコン式ATになってしまいました。

DCTは街乗りで不評だった

せっかくクリープ現象まで再現して、「普通のオートマのように乗れて、MTのようなダイレクト感がある」というDCTのメリットを最大限に引き出したつもりでしたが、それでも日本のユーザーからの支持は得られませんでした。

普通のトルコン式ATのつもりで乗ると「変速ショックがATより大きい」「ミッションの駆動音が大きい」、さらにクリープ現象すらも「何かモタモタした感じで、結局踏まないといけない」、下手な半クラッチのようだと不評だったのです。

その一方で、ATより吹け上がりが良く、MTよりもスムーズであるという高評価も得ています。ただし、そうした好意的な評価はあくまでアクセルを踏める時限定の事で、大都市の富裕層をターゲットにした高級車としては、極めて厳しい評価に留まったと言えるでしょう。

渋滞の中で発進にモタつき、変速ショックでガクガクしてしまうとなると、高級車としては商品性に問題があると言わざるを得ません。

DCTは新登場の8ATが優秀だった

せっかくの最新技術であるDCTの評判が良くない事にBMWも焦ったのか、あるいは予想の範囲内だったのか、折りよく新開発のZF製8速ATがF01型7シリーズに搭載され、2009年にデビューしました。

こちらは「本物」のトルコンを搭載しているので発進は当然スムーズで、なおかつ発進後は全域でロックアップ機構により直結されるのでトルコンスリップによるダイレクト感の喪失もありません。

さらにギアの段数増加と、変速レスポンスを改善した事で、シフトダウン時のシフトショックやシフトアップ時のもたつきも無い、となれば、よほど走りに振ったモデルでも無い限り、DCTの必要性が無くなってしまったのです。

F01型7シリーズの登場後、わずか数年で日本仕様BMWのほぼ全車がDCTではなく8ATに切り替わったのは、ある意味当然かもしれません。

走りを追求するモデルにDCTは残った

たとえ大都市の渋滞でも快適に移動できなければいけない、そんなモデルからは完全に排除されたBMWのDCTですが、M3からM6までのハイパフォーマンスモデル、そして3リッターターボを搭載したクーペカブリオレ「Z4」の3リッターターボモデル「35i」「35is」には残りました。

これらのモデルは、都市部での快適性より走りの爽快さというキャラクターを重視した結果としてDCTをチョイスしたと考えられますので、BMWとしては走行性能の面では8ATより7速DCTが優れている事は認めていると言えます。

ただ、いかにドライビング・プレジャーを重視するBMWとはいえ、DCTに固執してまで走りに関しての満足度を求めるユーザーがそれほどいなかったという事でしょう。結局は、BMWが時々日本仕様の一部にMT車を追加しても、そのほとんどが長続きしないのと同じ事だと思います。

今後のBMWにDCTの復権はあるか

日本仕様からほとんどDCTが無くなったとはいえ、ドイツ本国仕様も含め、完全にDCTが消えたわけではありません。

ただし、純粋に走りを楽しみたいと考えるユーザー、クラッチ操作が苦痛では無いユーザーにとっては依然としてMTが支持され、事実日本以外ではBMWのMT車が数多く存在する事や、左足は自由でいたいユーザーにとっても優秀な8ATが登場した事で、DCTの存在意義が薄れているのも事実です。

ホンダが2014年に発表した「トルコン付きDCT」という道もありますが、部品点数の増加による重量増と高コストという、ATに対するDCTのメリットを潰すようなリスクを侵してまでDCTに固執する理由も考えにくいものがあります(重量増加は、当然燃費などの環境性能に響きます)。

そうなると、従来通り「限られたハイパフォーマンスカー向けミッション」として継続する可能性が一番高いですが、それに関して気になる話題もありました。

BMWにDCTを供給しているゲトラグ社が、2015年7月にカナダの自動車部品メーカー「マグナ・インターナショナル」に買収されたというニュースです。さらに同時期、BMWの幹部が「今後は“M”にもMTを設定しなくなる可能性がある」と気になる発言をしています。

BMWはFF用の6MTや6MTに関しては日本のアイシンAWから供給を受けており、トヨタとの提携が進行していく中で、トランスミッションに関しても何が起こるかわからない状態です。
このように部品メーカーの再編や自動車メーカー同士の提携などの動きが加速している事から、BMWにおけるDCTの立場も、今後はやや不透明と言えるかもしれません。
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