ポルシェのセミAT、PDKの魅力とは?
更新日:2024.09.09
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エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドや電気自動車など、技術はめまぐるしい勢いで進歩しています。もちろん今回紹介するミッションもそうです。ポルシェの現行ラインナップのほぼすべてのモデルで、選択可能なセミAT、PDK(ポルシェ・ドッペル・クップルング)は、本格的なデュアルクラッチトランスミッションであり、そのシフト操作は100分の数秒以内ですべての操作が完了するといいます。
ポルシェのMTモード付きATのティプトロニック
ポルシェが初めてATを911に導入したのは、1968年のことでした。4速MTをベースにしたそのミッションは、スポルトマチックと呼ばれるもので、1978年までラインナップされていました。このスポルトマチックは、クラッチを操作すると電気的信号が流れ、クラッチを切る機構がついており、いわば2ペダルMTの元祖です。
その後、ポルシェは1990年にZF製のMTモード付きAT、ティプトロニックを採用した911(964)を発表します。これをきっかけに世のメーカーは、MTモード付きのATを普及し始めました。
しかし、これはトルコン式のATがベースで、ATのP-R-N-D-2-1といった、シフトパターンの前進ギア部分を別な場所に設けただけ、と言えなくもありませんでした。ティプトロニックのシフトチェンジは、シフトを前に倒すとシフトアップ、後ろに倒すとシフトダウンというもの。
ところが、レーシングカーで使われていたシーケンシャルシフトは、後ろに倒すとシフトアップ、前に倒すとシフトダウン。つまり加速中は、リアに向かって重力が働くのでドライバーが引く動作になっており、減速時はその逆と、理にかなった動作になっているわけです。それなのに、ポルシェはなぜ反対の動作にしてしまったのか…謎ですね。
このティプトロニックの影響もあって、追従したほとんどモデルでのATのシフトレバーは、前がアップ、後ろがダウンになっていました。ちなみにポルシェも、ミッションがPDKとなった後も、最近まで前がアップ、後ろがダウンでした。※718ボクスター、991ポルシェでは、アップ/ダウンが逆になっています。
その後、ポルシェは1990年にZF製のMTモード付きAT、ティプトロニックを採用した911(964)を発表します。これをきっかけに世のメーカーは、MTモード付きのATを普及し始めました。
しかし、これはトルコン式のATがベースで、ATのP-R-N-D-2-1といった、シフトパターンの前進ギア部分を別な場所に設けただけ、と言えなくもありませんでした。ティプトロニックのシフトチェンジは、シフトを前に倒すとシフトアップ、後ろに倒すとシフトダウンというもの。
ところが、レーシングカーで使われていたシーケンシャルシフトは、後ろに倒すとシフトアップ、前に倒すとシフトダウン。つまり加速中は、リアに向かって重力が働くのでドライバーが引く動作になっており、減速時はその逆と、理にかなった動作になっているわけです。それなのに、ポルシェはなぜ反対の動作にしてしまったのか…謎ですね。
このティプトロニックの影響もあって、追従したほとんどモデルでのATのシフトレバーは、前がアップ、後ろがダウンになっていました。ちなみにポルシェも、ミッションがPDKとなった後も、最近まで前がアップ、後ろがダウンでした。※718ボクスター、991ポルシェでは、アップ/ダウンが逆になっています。
ポルシェのメカニズムはル・マンのマシンと同じ
いち早く市販車にデュアルクラッチシステムを採用したのは、VWアウディグループのDSGでした。
これはペダルこそないものの、れっきとしたクラッチシステムを持つトランスミッションで、クラッチを切ったりつないだりするのは機械が行いますが、構造はMTとさほど変わらないものです。
そのデュアルクラッチトランスミッションは、1984年にポルシェがWEC(世界耐久選手権)でテストをしています。マシンは、ワークスの956で、すでにPDKと呼ばれていました。つまりポルシェこそセミATの先駆者だったのです。
ちなみに、この時代、ポルシェはル・マン4連覇など、耐久レースで勝つためにさまざまな新しい機構を投入しています。
これはペダルこそないものの、れっきとしたクラッチシステムを持つトランスミッションで、クラッチを切ったりつないだりするのは機械が行いますが、構造はMTとさほど変わらないものです。
そのデュアルクラッチトランスミッションは、1984年にポルシェがWEC(世界耐久選手権)でテストをしています。マシンは、ワークスの956で、すでにPDKと呼ばれていました。つまりポルシェこそセミATの先駆者だったのです。
ちなみに、この時代、ポルシェはル・マン4連覇など、耐久レースで勝つためにさまざまな新しい機構を投入しています。
PDKミッションは玄人から素人もOK
そして時代は流れ、市販ポルシェにもレーシングテクノロジーが生み出したPDKミッションが搭載されました。
その昔、納車したその日にクラッチを減らしたというようなポルシェ神話は、もう昔の話。しかもこの2ペダルMTはATモードもあり、シフトレバーを操作する必要のない街乗り運転も可能。もちろん2ペダルゆえ、AT限定免許で運転できてしまうのです。
ありきたりな表現ですが、今日ではAT限定の免許取得者がいとも簡単に大パワーのスポーツカーをドライブできるのは、プロ並のシフト操作をクルマがやってのけてくれるからです。
その昔、納車したその日にクラッチを減らしたというようなポルシェ神話は、もう昔の話。しかもこの2ペダルMTはATモードもあり、シフトレバーを操作する必要のない街乗り運転も可能。もちろん2ペダルゆえ、AT限定免許で運転できてしまうのです。
ありきたりな表現ですが、今日ではAT限定の免許取得者がいとも簡単に大パワーのスポーツカーをドライブできるのは、プロ並のシフト操作をクルマがやってのけてくれるからです。
PDKは自分で考えるミッション
特にPDKのすごいところは、ミッションが判断する点。直線でスピードがのった後の鋭角なコーナーで、PDKを積んだポルシェを操るドライバーに求められることは、しっかり減速することだけです。
スピードの落ち方に反応しPDKはギアを落とし、旋回後の加速はパワーバンドを使いきるよう絶妙にシフトアップしてくれる。これはタイトコーナーでも同じこと。タイトコーナーのそれは1速まで落ちてしまうことも。自分の心が見透かされているようで気持ち悪いやら気持ちイイやら。もちろんギアの選択を自分で行うことも可能です。
スピードの落ち方に反応しPDKはギアを落とし、旋回後の加速はパワーバンドを使いきるよう絶妙にシフトアップしてくれる。これはタイトコーナーでも同じこと。タイトコーナーのそれは1速まで落ちてしまうことも。自分の心が見透かされているようで気持ち悪いやら気持ちイイやら。もちろんギアの選択を自分で行うことも可能です。
PDKに不満点があるとすれば…
唯一不満をあげるとすれば、ヒール&トゥが出来ないことでしょうか。クラッチペダルが無いので、できないのは当たり前ですが、ブレーキを踏みつつ、アクセルを煽って回転を合わせて低いギアに落とす、これはスポーツカー乗りにはマイナスかもしれません。とはいえ、それもPDKが上手にやってしまいます。
あるいは、ひと昔前のフェラーリオーナーならば誰しも出来るダブルクラッチ。自分で操っている実感が乏しいといえば乏しく感じられる場面も無きにしもあらずです。
あるいは、ひと昔前のフェラーリオーナーならば誰しも出来るダブルクラッチ。自分で操っている実感が乏しいといえば乏しく感じられる場面も無きにしもあらずです。
それでも気分はレーシングドライバー
しかし、ル マンのマシンを母に持つミッション。PDKを操れば、気分は962Cに乗ったレーシングドライバー、ハンス・スタック選手になりきれるような気もします。
スポーツクロノパッケージ(ダッシュボード上のストップウォッチが有名)をオプションで装着すれば、6,500rpmをキープしてスタートダッシュを決められるローンチコントロールもボタンひとつという安楽さ。普段使いからサーキットまで、まさに万能選手です。
ポルシェの素晴らしいところのひとつが抜群の商品力にあります。日常域でも使え、サーキットユース、そして油脂類の管理さえしていれば壊れないマシン、それがポルシェでもあります。930の頃のワイルドさからより洗練され、テクノロジーを味方につけた現在のポルシェ。最新のポルシェは最良のポルシェたる由縁かも知れません。
スポーツクロノパッケージ(ダッシュボード上のストップウォッチが有名)をオプションで装着すれば、6,500rpmをキープしてスタートダッシュを決められるローンチコントロールもボタンひとつという安楽さ。普段使いからサーキットまで、まさに万能選手です。
ポルシェの素晴らしいところのひとつが抜群の商品力にあります。日常域でも使え、サーキットユース、そして油脂類の管理さえしていれば壊れないマシン、それがポルシェでもあります。930の頃のワイルドさからより洗練され、テクノロジーを味方につけた現在のポルシェ。最新のポルシェは最良のポルシェたる由縁かも知れません。