190E、BMW3シリーズ…バブル期にカーマニアを熱くさせた輸入車6選

憧れのハイテクマシーン、ポルシェ959

1986年に登場したポルシェ959。このクルマは911と同じリアエンジンでありながら前方へプロペラシャフトを伸ばすフルタイムの4WD。「全天候型」のスポーツカーというスタンスはまさに新しい時代のポルシェの到来を印象づけました。

洗練された空力ボディ、総革張りの豪奢なインテリア。もちろんレーシングカー、ポルシェ962Cのデチューン版といわれる、シリンダーヘッドのみを水冷化したフラットシックスの450馬力/51Kg・mという途方もないパワー、トルク。いまでこそ500馬力クラスのクルマはいくらでもありますが、これは当時としては超ド級のスーパーカーだったわけです。

ポルシェはこのクルマのプロトタイプをパリダカで走らせ、優勝も経験しています。ロードカーのイメージが強かったポルシェ。のちにカイエンが登場してSUVジャンルにも参入するわけですが、一方でかなり以前からレインジローバーなどを大量に買い込んで4輪駆動とオフロードへの研究も地道に行なっていたと聞きます。

283台と言われる959の生産台数。数少ない日本の地を踏んだ959のオーナーの一人にビートたけしさんがいたことはあまりにも有名。

筆者は当時、このクルマの映画が公開されて渋谷の東急まで友達と見に行った記憶があります。
またタミヤ模型が発売したプラモデルはそれこそ何台も(!)作りました。一体式リアウイングのところの処理が難しくてなかなか納得できなかったのです。また同じくタミヤ模型からグループB仕様のRCカーも売り出され、これがまた高くて買えなかった・・・。
いろんな意味で高嶺の花、というポルシェ959でした。

「走る不動産?!」は2億5千万円!究極のフェラーリ、F40

ポルシェ959があくまでも日常性を備えたスーパーカーであったことに対し、フェラーリF40はとことんスピードを追求し、そのままレースに出場できることを念頭において作られたクルマ。レースやサーキットの匂いがどことなく漂ってくるような、そんなスパルタンな、しかしフェラーリの理念を凝縮した、濃厚な一台と言えるでしょう。

1987年、フェラーリの創業40周年を記念してリリースされたことは、その名前にも示されていますが、フェラーリとはレースの歴史。レースに出られる市販車を作って販売することを旨としてやってきた会社。それが時代とともに市場の要求に応える形でそのラインナップはどんどん「レース」から遠ざかる傾向が強くありました。その意味でこのF40はコンペディションユースを前提とした、本来の姿に立ち戻らせるような、レーシングカーそのものの設計。インテリアもカーボンなどの素材むき出しで、シートはリクライニングなど備えないフルバケットが二脚。たったの1100kgの車体に478馬力/58.8Kgf・mは馬力あたり2.3kgの荷重。

世の中ここまでストイックな市販車としての製品もほかになく、死と隣り合わせである「レース」に向かうためのクルマ、それゆえに「死の香りのするクルマ」などという表現も当時にはありました。それはこのクルマへの最大の賛辞です。またバブル景気に沸く日本国内では一時2億5千万円にまでプレミアが跳ね上がるという始末(ディーラー価格4650万円)。大変な人気が沸き起こりました。

当時、筆者の世代のクルマ好き少年の間では、959とF40、どちらが上か、という「議論」が盛んに行われていましたが、それも今になってみると微笑ましい想い出です。そもそもポルシェ959の車重は1700kg以上もあって、互いに住む世界がちがうということは見ればわかる。ただただスペックやタイムデータを比較するだけではない、それぞれの世界観があるということくらい、筆者は知っていましたが、でも話し出すとなかなか止まらなかったものです。

誰もが手にできるメルセデスクォリティ、190E

メルセデス・ベンツはその崇高な思想、また価格帯が高くおいそれと手を出せるタイプのクルマではありませんでした。ましてやこの日本において、ベンツに乗ることができる・・・「どんな仕事してるんだ」というようなやっかみのような目で見られていたことも事実です。自動車としては正しくても、周囲の目が気になって手が出せない、そんな人がいたことを筆者は実際に知っています。

そんなムードに一矢報いたのがこの190E。5ナンバーに収まるコンパクトなサイズに、それでもメルセデスの哲学をぎっしり詰め込んだ小さな高級車。SクラスやEクラスより、どことなく控えめであまり目立たないところも日本人のマインドにジャストマッチ。一時は大変な品薄状態だったこともあります。それほどに人気を博し、またこの190Eの人気がひとつの起爆剤となり、折からの好景気により他のモデルの人気も高まり、日本でのメルセデス人気を確かなものとしました。

小さくても巌の安心感。なめらかにストロークする懐の深いアシに、今乗ってみるとまたなんと運転視界の優れていることか。安全性確保のためにピラーが太くなり空力のためにフロントスクリーンの傾斜がきつくなり、ということを繰り返し、現行のメルセデスでさえこの190Eの見切りの良さには到底敵いません。確かな操縦性や安心感、十全に整備された運転環境はなによりドライバーのストレスを軽減し、正しく危険を認識させ、積極的に運転に臨むことのできる、きわめて優れたツールであることを強く印象づけます。

今でも190Eの中古車に人気があるのも頷けます。それくらい人に優しく、品質が高く、安心感を提供し、しかも運転が楽しい。190Eの魅力は登場から30年以上経った今でもまったく色褪せるところではありません。

六本木のカローラ。シルキーシックスに酔いしれたBMW3シリーズ

メルセデスに比べるとちょっと瀟洒な印象でどちらかというと「カタカナ職業」を連想させるようなところのあったBMW。実際に筆者の個人的に知り合いだったカメラマンがこれに乗っていました。筆者の、なにを隠そう初めての輸入車体験がこのクルマでした。

1987年モデルの325i。5年で10万キロは走行していたその個体。しかし適切にメンテナンスされたBMWというのはまったく衰えのようなものを感じさせることがなく、シャキっとしたボディ、カッキーンと回るシルキーシックス、しなやかでいてしたたかな乗り心地とハンドリング。すべて見事なバランスで調律された楽器を演奏した時のような、背筋の伸びるような思いがしたことを覚えています。

サイズは当時のカローラよりほんの少し大きいくらい。六本木のカローラというのはそうした意味でも的外れではなかったということになりますね。そしてもちろんその小ささがドライバーとの一体感をとても高めてくれるわけです。人馬一体、この言葉を最近もよく聞きますが、まずこのクルマに乗ってからにして欲しい、個人的な思いです。

今でも3シリーズならE30だ、という方も少なくないようです。メルセデス190Eとは当時双璧を成す人気輸入車だった3シリーズ。しかしメルセデスにもBMWにもそれぞれに魅力やこだわり、また味わいがあって、今改めて接しても十分に魅力的。あの頃の日本人がこぞって欲しがったのは、なにもお金があったから、それだけの理由ではないように思えるのは筆者だけでしょうか。

「腕が太くなっちゃう」を口癖にさせたプジョー205

外車というとドイツ車やデカいアメ車という固定イメージが抜けなかった日本ですが、その感覚を打破するのに一役買ったのがこのプジョー205だったように思います。手頃な値段で、しかもフランス人の普段着感覚をそのまま味わえる、ちょっとおしゃれで可愛らしいデザインのコンパクトは、たちまち女性人気を獲得します。

デザインはピニンファリーナとプジョーの合作。引き締まったキュートなスタイルに、当時日本車でも流行した「イエロービーム」。黄色い光を放つヘッドライトがこのクルマをまた異質なキャラクターにしているようなところがありましたよね。これは当時のフランスの法規でイエロービームが定められていたからなのですが、とにかくこれにヨーロッパを強く感じさせられたものです。

205GTIのエンジンは当初1.6リッター。これが排ガス規制対応などのために排気量アップされて1.9リッターに。おかげで扱いやすさも増して、さらにファン層を広げます。販売はまだプジョージャポンが存在せず、オースチンローバージャパンが受け持ったり、スズキが受け持ったり、日商岩井だったりと転々としているかに見えて、モデルライフを通じて確実に顧客を掴んでいたのは、やはりクルマ本体の魅力の賜物でしょう。

ただ、スタイリッシュなところに惹かれて購入した女性オーナーの多くは、そのハンドルの重さに「腕が太くなっちゃう」と愚痴をこぼしていたものです。なにせパワーステアリングなしのFF車。男の腕でも充分重いわけです。しかも多くの女性はマニュアルのGTIを重ステで乗っていました。今思うと当時の女性たちは強かった!・・・しかし、それも後期モデルの1991年からはパワーステアリングが加わりるなどして、プジョーは適切に、「対策」を施していました。今でもそうですが、売れにくいマニュアル車を用意していたりして、プジョーは昔から日本市場に熱心だったことが伺えます。

カンクネン、ビアシオン、サインツ・・・鉄壁の強さを誇ったラリーチャンプ、デルタ・インテグラーレ

当時F1に次いでWRCも静かなブームを呼んでいました。某自動車番組でダイジェストが放送されていただけにも関わらず、やはりクルマ好きの間で噂が広まるのは早く、当時も細々とランチアの輸入を行っていた「ガレーヂ伊太利屋」にあった、デルタ・インテグラーレの在庫はあっという間に捌けてしまったのだとか。

元来デルタはゴルフⅠと同じジウジアーロがデザインした、ゴルフと同じクラスのコンパクトな実用車でしたが、ラリーのレギュレーションが変更され、Gr.Aで戦われることに決まるとただちにランチアはデルタにテーマ用の2リッターターボを搭載し、従来から研究を続けていた4WDシステムとドッキングさせ、HF4WD、HFインテグラーレ、HFインテグラーレ16Vと年々進化を遂げていくことになります。

走りは、やはりと言うべきか大きなエンジンを乗せたフロントの重さを感じさせるもので、それを無理やり荷重移動させて曲がっていくというややテクニックを要するタイプ。ただ、ランチア特有のストロークの長いサスペンションはしなやかでありながら路面を捉えて離さず、腕の立つドライバーには堪えられない楽しさをもたらす、ややハイレベルな仕立てになっていました。

問題はエンジンルームに篭る熱対策。ボンネットにルーバーを切ったりバンパーに穴を開けたりと涙ぐましい努力も、ここ日本では明らかに冷却性能不足。夏の都内では水温計と睨めっこ状態というのはオヤクソクでした。しかも、そんな状態でけっして品質が高いとは言えないイタリアのゴム製品、特にタイミングベルトのコマ飛びによるバルブクラッシュの問題は、なにしろ予知予見が難しく、タイミングベルトの交換サイクルは1万5千キロとか1万キロとか言われるほど。やはり攻めた作りの代償というべきでしょう。
しかしその代償さえもが、マニアを惹きつける要素になっていた、そんな気もします。

さて、今回は値段もクラスも全く異なる6台を取り上げてみました。
他にも魅力ある輸入車はありますが、本日はここまで。

今振り返ってみても、あの頃はなにもお金に余裕があったから、というだけではなく、やはりクルマそのものにも大きな魅力、人を惹きつける力があったのだと再認識させられます。さらには日本人にとって、輸入車とはそれまで近寄りがたいものがあり、それが様々な理由から手を伸ばせる、手の届くところにやってきて、ようやく輸入車による「異文化交流」が始まった、そんなようにも見えます。
今や輸入車は特別な意識や思い入れを持たずに当たり前のように乗れる、そのような存在になっていますが、あの頃はまだ多くの人にとって未体験領域であり、とても強く好奇心を掻き立てられる、それが輸入車の魅力そのものだったわけですよね。
クルマは国際商品です。故に年々「お国柄」のようなものが希薄になっていく、そんな思いがするのもあの頃を知ればこそ、なのかもしれません。

<前田恵之進>

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