ハイブリッド車の補機バッテリー充電不足:原因と対処法

トヨタ プリウス 2016 補機バッテリー

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あなたのハイブリッドカーに搭載されている二つのバッテリーの役割をはっきり説明できますか? 
――高電圧でモーターを駆動する「駆動用バッテリー」と、ライトやナビを支える12Vの「補機バッテリー」――

「駆動用が生きていれば大丈夫」と思いがちですが、実は補機バッテリーが上がるだけでエンジンは始動せず、走行不能に陥ることもあります。補機バッテリーの充電不足が招くトラブルと、その予防・対処法を今のうちに押さえておきましょう。

CarMe編集部

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Chapter
ハイブリッドバッテリーと補機バッテリーの違い
補機バッテリー上がりの緊急対処法
バッテリー上がりの原因と予防策
補機バッテリーの交換時期
ジャンプスタートの手順と注意点
まとめ

ハイブリッドバッテリーと補機バッテリーの違い

ハイブリッド車には走行用の駆動用バッテリーと、車載電装に電力を供給する補機バッテリー2種類が搭載されています。

駆動用バッテリーは200V超の高電圧を持つニッケル水素またはリチウムイオン電池で、モーター駆動やエンジン始動に使われます。

一方、補機バッテリーはガソリン車と同じ12Vの鉛蓄電池で、ハイブリッドシステムを起動したりライト・オーディオなど車両の電装品に電力を供給したりする役割を担います。

これらは同じ“バッテリー”ですが電圧や化学組成、設置場所(駆動用は車体中央付近、補機用はトランクやシート下)などが大きく異なり、互いに相互充電する仕組みはありません。そのため、補機バッテリーが弱っても駆動用バッテリーから自動で回復せず、従来のクルマと同様、外部から電力を補う必要があります。

なお補機バッテリーが上がってしまうとハイブリッド車でもエンジンがかからず走行できなくなるため、日ごろから注意が必要です。
種類 駆動用バッテリー 補機バッテリー
主用途 走行用モーター駆動、エンジン始動 ハイブリッドシステム起動、車載電装への電力供給
電圧・化学 高電圧(約200V)・ニッケル水素またはリチウムイオン電池 低電圧(12V)・鉛蓄電池
設置場所 センターコンソール下やトランクなど トランクルームや後部座席下など

補機バッテリー上がりの緊急対処法

補機バッテリーが上がった(=放電してエンジンが始動しない)場合、以下のような対処法があります。

  • ロードサービスに連絡
JAFや自動車保険付帯のロードサービスを利用します。プロによる対応なら安全かつ確実で、費用は1万円前後(保険適用で無料になる場合も)かかります。急いで操作して事態を悪化させるより、早めに専門家を呼ぶのも有効です。

  • 携帯ジャンプスターターを使う
バッテリー上がり専用の携帯用バッテリー(ジャンプスターター)を使えば、工具なしで簡単に始動できます。赤いクリップを上がった車のプラス端子に、黒いクリップを未塗装の金属部分(ボディアース)に接続し、エンジンをかけます。数千円程度で購入でき便利ですが、あくまで臨時の応急手段です。

  • ブースターケーブルでジャンプスタート
もう一台の救援車から12Vを分けてもらう方法です。

1. 両車ともパーキングブレーキをかけ、ハイブリッドシステムをOFFにします。
2. 故障車のボンネットを開け、ヒューズボックス内の赤い応急用プラス端子(「+」表示)を確認します。
3. 救援車(通常のガソリン車など)を故障車に近づけ、救援車のエンジンをかけたままにします。両車とも12V系統であることを確認(大型車の24V車は不可)。
4. 故障車側に赤いケーブルクリップを応急用プラス端子に、救援車側のバッテリー+端子にもう一方の赤クリップを接続します。
5. 救援車側のバッテリー-端子に黒いケーブルクリップを接続し、もう一方の黒クリップを故障車の未塗装金属部(アースポイント)に取り付けます。
6. 正しく接続できたら救援車をニュートラル(ATはN)にし、軽くアクセルを踏んで数分待ちます。
7. 故障車側のメーター内表示で「READY ON」の状態にしてエンジン始動を試みます。始動したら、ケーブルを接続したときと逆の順序で外します。
8. エンジンがかかったらすぐには切らず、少なくとも30分以上は走行またはアイドリングし、バッテリーに充電を行いましょう。この間はライト・エアコン・オーディオ等を切り、バッテリー負荷を減らします。

なお、ハイブリッド車のヒューズボックス内にあるプラス端子は受電専用であり、他車への電力供給には使えません。また、救援車としてハイブリッド車や電気自動車を使うと電子制御にトラブルが起きる恐れがあるため、通常のガソリン車を用いるのが安全です。

  • バッテリー充電器で充電
市販のバッテリー充電器を使い、補機バッテリーを直接充電する方法です。放電が原因であれば充電で復旧します。ただし多くのハイブリッド車では補機バッテリーがトランクやシート下に設置されており、取り外しが大変な場合があります。工具に慣れていない場合は無理せず専門家に任せたほうが安全です。

  • バッテリー交換
古く劣化したバッテリーは充電しても再び上がりやすくなるため、早めに交換します。補機バッテリーは一般的に3~5年が寿命の目安です。特に3年以上使用して上がってしまった場合は新品交換を検討しましょう。

バッテリー上がりの原因と予防策

  • 長期間未使用による自然放電
ハイブリッド車でも、エンジン停止中でもECUや時計、ナビなどがバックアップ電源を必要とし、常時約5~10mA程度の電流(暗電流)が流れています。そのため3~4週間ほど運転しないと放電が進み、バッテリーが上がることがあります。対策として、1~2週間に1回は30分以上の走行で補機バッテリーを充電し、車両を定期的に動かしましょう。

  • 電装品の切り忘れ
エンジン停止後にライトや室内灯、USBポートなどを切り忘れると、電力が消耗されます。特に半ドアランプやルームランプの点灯状態はバッテリー電力で作動しているため、消し忘れに気づかないと短時間で放電してしまいます。走行後は消し忘れがないか確認し、停車中は不要な電装品を使わないようにしましょう。

  • バッテリーの劣化
鉛蓄電池である補機バッテリーは消耗品です。液量の減少や内部の硫酸鉛化などで容量が低下すると、充電しても電力を蓄えられなくなります。一般に寿命は3~5年程度で、これを超えて使用すると「バッテリーが上がりやすくなる」「エンジンのかかりが悪い」などの症状が現れます。バッテリー点検器で状態をチェックし、車検や定期点検時には補機バッテリーもプロに見てもらうと安心です。

補機バッテリーの交換時期

補機バッテリーはガソリン車と同等の寿命が3~5年程度とされます。使い方や設置環境にもよりますが、目安を超えて使用するとエンジン始動不能になる恐れがあります。交換のシグナルとしては、「アイドリングや再始動が不安定」「エンジンがかかりにくい」「燃費が急に悪化」などが挙げられます。特に補機バッテリーの劣化が進むと上がりやすくなるため、これらの症状が出たら早めの交換をおすすめします。

なお、ハイブリッド車の駆動用バッテリー(メインバッテリー)は寿命が5~8年と長く、基本的にユーザーが頻繁に交換するものではありません。補機バッテリーであれば工具があれば自分でも交換可能ですが、ハイブリッド車の補機バッテリーは車室内にある場合が多く手間がかかるため、販売店や整備工場に依頼するのが無難です。

ジャンプスタートの手順と注意点

  • ケーブル接続順序を守る
前述の手順に従い、赤ケーブル(+)を故障車→救援車に繋ぎ黒ケーブル(-)を救援車のバッテリー端子→故障車のボディアースへと接続します。特に赤クリップは他の金属部に触れないよう慎重に取り扱い、ショートを避けます。

  • エンジンOFF状態で作業する
両車ともエンジンと電装品はOFFにし、パーキングブレーキをかけた状態で作業します。ハイブリッドシステムも起動していない(パワースイッチOFF)ことを確認してからケーブルを接続しましょう。

  • 距離を置く
バッテリー上がり作業中は可能な限り車外で行い、排気ガスやバッテリーの硫酸に注意します。特にタバコや火花が出る行為は絶対に避けてください。

  • 救援車の選び方
救援車は同じ12Vバッテリー車が望ましいです。大型トラック等は24V仕様の場合もあるので使用しないでください。

  • 発火・破裂に注意
バッテリーから水素が発生する場合もあり、点火源厳禁です。接続中に火花が散らないようにケーブルを素早く確実に取り付け、取り外しも逆順で行いましょう。

  • 作業終了後の点検
エンジン始動後は必ずエンジン音や計器に異常がないか確認します。始動できたからといってすぐに切らず、十分走行・充電してから通常使用に戻しましょう

まとめ

補機バッテリー上がりは突然起こるトラブルですが、日ごろから車両状態を把握し、適切な予防・対策を講じておけば慌てずに対処できます。専門記事やメーカー情報を参考に、補機バッテリーの位置や応急用端子の場所を確認しておくと安心です。事故や故障を未然に防ぐためにも、定期メンテナンスと早めの交換を心がけましょう。
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