Rolling 40's Vol.57 おもちゃ箱の奥

Vol.57 おもちゃ箱の奥

Rolling

子供の頃、私は一人っ子だったせいか、押し入れの中に子供が入れるくらいの人一倍大きなおもちゃ箱があった。中に入っていたのは、覚えている限りでは、超合金、ミクロマン、モデルガン、プラレール…。

一つ一つのおもちゃを大事にする子供だった。機械いじりも得意だったので壊れたら自分で直した。一人っ子なので兄貴に取り上げられたり、弟に壊されたりする心配はない。

大きなおもちゃ箱にそれら全てを丁寧に詰め込み、気ままに取り出しては悦に入った。誰にも邪魔をされずに、ミクロマンをいじりながら、色々なSFシーンを妄想するのが大好きだった。

それから瞬く間に40年という月日が流れたが、いまだそのスタイルは変わっていない。三つ子の魂というよりも、一人っ子根性まだ冷めやらずという感じで、勝手気ままに自分の趣味の世界に耽溺していることが多い。

「バイク、カメラ、ダイビング、料理」色々な趣味を渡り歩いてきたが、結局仕事とリンクすることもあり、この四本柱が残った。

釣りは二級船舶免許を取得して小船を持ち、アマゾンで巨大魚を釣ったり、釣り番組にも何度か出演したが、どうしてかフェードアウトしてしまった。たぶん競合するダイビングに負けたのだろう。陸からより、水中に入ってしまったほうが手っ取り早いということだ。

私のことを多趣味と評する方もいるが、まったくそうではない。多趣味とは、全然関係性のないことを多元的に楽しめる方のことを言うのだと思う。

バイクで自由に動き回り色々な写真を撮る。きれいな海を見つけたらその海の中に潜り、未知の世界の映像に記録する。最後に海で獲ったものを美味しく料理して旅が完結する。

つまり自分が愛するこの世の中を、全開で楽しみ、全てを飲み込む作業をすると、結果的にその四本柱がちょうど必要不可欠だったのだろう。そこにゴルフや日本舞踊でも混じれば多趣味と言えるかもしれないが、そんな大きなキャパシティを持ってはいない。完結したストーリーの中で同居できるものでないと無理である。

また、料理以外の三つに共通することは「メカニカル」なものへの異常なまでの執着だ。これも結局「性癖」が同じである。

バイクも普通の人が選ばない車種をさらにマニアックに改造して、もう一般からは手の届かない高みにしないと納得いかず、それが叶わないとイライラしてしまうという、一人っ子政策が生んだ病魔。

カメラはカメラ本体以上にレンズに異様なこだわりを持ち始め、映画の仕事で使うという大義名分のもとに散財。ダイビングも結局は普通に潜っているだけでは飽きてしまい、今現在は半年かけてガイドになるためのコースを始めている。この免許があるとダイビングショップに勤務可能だが、当然、勤めるわけもない。

そしてこの「性癖」を、私のいる業界という「悪い環境」が加速させる。

単なるバイク小僧だったのが、バイク雑誌に12年もコラムを持ってしまい、千葉のバイク屋さんとレーシングチームのプロデュースまで。

カメラは盟友である桐島ローランド氏がいろいろと奥義を教えてくれるし、たまに機材も分けてくれる。
そしてダイビングは映画「キリン」の水中撮影で知りあったダイビングの先生Oと仲良しになり、どうしたことかプロダイバーの訓練を受け始めてしまった。

遊びなんだから入り口で止めておけばいいのに、なぜか行き止まりまで行かないと納得できないという疾患。

まさに一人っ子の成れの果て、そんな面倒な人生を45歳まで送ってしまったが、そんな私でも、自分のやっていることに少しは誇りを持っている。

今回の人生で学んだ一番大事なことは、ある高みまで登らないと見えない「風景」があるということだ。もちろんその高みはさらに上へと続いていて、趣味の延長線ではそこまで登るのは無理なのだ。それはよく言うところの「玄人はだし」で単なる趣味とは一線を画す。プロが裸足で逃げ出すくらいにあることに精通しているアマチュアのことだ。

多少オーバーな話だが、それくらい入り込まないと趣味は楽しくないと断言する。しかし絶対にプロを目指してはいけない。本当のプロになってしまっては義務や責任が発生し、楽しかったことが楽しくなくなることも多い。遊びの範囲でのトップだからこそ楽しみきれる「一人っ子道」だ。

大きなおもちゃ箱の奥には、まだたくさんのおもちゃが詰まっている。意地悪な兄や粗雑な弟もいないので、すべては私だけのものである。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968

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