おしゃべりなクルマたち Vol.57 フランス式自由・平等・博愛

Vol.57 フランス式自由・平等・博愛

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たとえば学校教育。当地に住む前はフランスの学校は創造、自由、自立を軸にしていると思い込んでいた。勝手に抱いたイメージではあるけれど、ニホンにいたとき、フランスはこういう国と教えられた、そんな気がする。

ところが。宿題が山積みでテストが多く、成績に振り回され、先生の監視が厳しい。

なにより驚くのは“プニシオン”と呼ばれる罰が定着していることで、教室で騒いだ子供に「僕は二度と授業を邪魔しません」、こういうフレーズを百回、ノートに記す罰が与えられるのは実に一般的。“プニシオン”が慣習というより制度のような顔で存在していることに驚く。ロシアではない、フランスのお話。

運転についても同じことで、スピードとアルコールの取締りの厳しさはヨーロッパ諸国のなかでもぴかイチ、ドイツ人とイタリア人に呆れられるほどだ。“ワインをがぶがぶ飲んでクルマを運転するのはフツウのことでね、なんたってフランスは大人の国だから”   昔、パリかぶれの叔父にこう教えられて感動したが、今のフランスでこんなことをしたらあっという間に後ろに手が回る。

昨年からはクルマにアルコール摂取度を計測するキットの携帯が義務づけられた。スピードを監視するのはニホン同様、レーダーとネズミ捕りで、固定式の設置数は全土で3000あまり、最近ではナンバーの後ろに速度読み取り装置を隠した覆面パトカーが登場して話題になった。

それでも'90年代、交通事故多発国としてEU諸国のなかで悪評たかかったフランスは、これらの対策によって事故を激減させた。

興味深いのは固定式については設置場所近くに“この先、レーダーあり”の看板が山ほど見られ、移動式についてはローカルニュースで翌日の設置場所が知らされることで、つまり両方とも気をつければ違反を事前に防ぐことができる。

実際、高速道路でもネズミ捕りの多い自動車専用道路でも、走っていると、一斉に、そんな感じで回りのクルマがスピードを落とす箇所があって、看板が読めなくてもローカルニュースを見ていなくても、取締りを察知するのはムツカしいことではない。

こういう場所で「なに、グズグズしてんだ」、こう叫びながらひとりアクセルを踏み込むのはイタリア人の我がダンナくらいのもの、彼がいまだ免許を保持しているのはほとんど奇跡だ。

自由、平等、博愛の国、私が抱いていたフランスのイメージと実際の姿は異なる、これは確かなのだけれど、それでも威厳に満ちた態度でズバズバ、対策を練る、そうしながらちょっとした風穴を開けて、自由を与え平等を課して、つまりヒトに息させる。これがフランス式なのかと、こんなふうにも思っている。

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text:松本 葉/Yo Matsumoto
自動車雑誌『NAVI』の編集者、カーグラフィックTVのキャスターを経て1990年、トリノに渡り、その後2000年より南仏在住。自動車雑誌を中心に執筆を続ける。著書に『愛しのティーナ』(新潮社)、『踊るイタリア語 喋るイタリア人』(NHK出版)、『どこにいたってフツウの生活』(二玄社)ほか、『フェラーリエンサイクロペディア』(二玄社)など翻訳を行う。

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