ゴードン・マーレイの創ったYAMAHA製の4輪車

アヘッド ゴードン・マーレイ

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モーターショーにはサプライズがつきもの。昨年の第43回東京モーターショーでも、予告なしのコンセプトカーが何台も現れて、僕たちクルマ好きにとっては、うれしい驚きの連続だった。

text:森口将之 [aheadアーカイブス vol.134 2014年1月号]
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ゴードン・マーレイの創ったYAMAHA製の4輪車

ゴードン・マーレイの創ったYAMAHA製の4輪車

なかでも個人的にいちばん印象的だったのは、ヤマハ発動機の4輪車「MOTIV(モティフ)」だ。ヤマハとしては1991年発表のスーパーカー「OX99‌-11」以来の4輪車の登場になる。しかも共同開発の相手は元F1デザイナーの「ゴードン・マーレイ」だという。

ヤマハは「トヨタ2000GT」や「レクサスLFA」などの開発に関わってきた。一方のマーレイは、ブラバムやマクラーレンでF1を設計したあと、その名も「マクラーレンF1」というウルトラスーパーカーを手掛けたことで有名だ。となると、両者がタッグを組んで生まれたクルマもまたスーパーカーなのか。

写真でお分かりのとおり、まったく違う。全幅は現在の軽自動車とほぼ同じ、全長はそれより約80㎝も短い2人乗り乗用車で、リアにヤマハの1000㏄ガソリンエンジン、あるいは25‌kWモーターを搭載する。ダイムラーの「スマート」を思わせるシティコミューターなのである。

なぜスーパーカーでないのか。それは今の時代の空気を取り込んだからだ。少なくとも、半世紀前に本田技研工業が2輪から4輪に進出したときとは、状況が違う。半世紀前の自動車は、より大きく、より速く、より快適に、が美徳とされていた。

だからホンダは最初に作る4輪車としてスポーツカーを選んだ。しかし現在は、社会や環境との共存が最重要課題。しかもヤマハはスクーターや電動アシスト自転車などで、シティコミューターの豊富な経験を持っている。時代的にも社会的にも最適なアプローチに思える。

それはゴードン・マーレイにも当てはまる。そもそもカーデザイナーは常に一歩先を見据え、その世界を具現化するクリエイターでなければならない。当然ながらクルマを取り巻く状況の変化を敏感に読み取ることが重要。多くのデザイナーがシティコミューターを提案している。

マーレイも自らが主催するデザインスタジオで、「i‌-stream」と名付けたコンセプトを発表している。鋼管スペースフレームに複合素材パネルを組み合わせて安全性を確保するというそのコンセプトを、そのまま「MOTIV」に投入している。

ちなみにヤマハはこの「MOTIV」について、ドライビングプレジャーを追求した4輪車であるとコメントしている。そもそも小さくて軽いほうが、人機一体感では圧倒的に有利だ。社会や環境への適応性も考慮したこの「MOTIV」は、21世紀のライトウェイトスポーツカーのありかたを提案したモデルなのである。
▶︎全長 2,690mm、全幅 1,470mm、全高 1,480mm という軽自動車並のクルマでありながら、リアエンジン(モーター)リア駆動、独立懸架式サスペンションを装備。完全主義者のゴードン・マーレイが関わっているだけに、走りに対する妥協はない。

「ゴードン・マーレイ・デザイン」社が提 案する樹脂製モノコックと剛管フレームを組み合わせた「i-stream」(アイ・ストリーム)と呼ばれる構造は、軽量化、少量生産、低コストを実現する。2020 年までに商品化すると発表された。
▶︎ゴードン・マーレイが製作した初のロードカーとして知られる「マクラーレンF1」は、ドライバーがセンターに着座する特異な3人乗り仕様。BMW製V12搭載。
▶︎1988年に16戦中15勝したHONDAエンジン搭載の「マクラーレンMP4/4」は、ゴードン・マーレイの出世作。アイルトン・セナにタイトルをもたらした。
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text:森口将之/Masayuki Moriguchi
1962年東京生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・テレビ・ラジオ・講演などで発表。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員を務める。著作に「パリ流 環境社会への挑戦」「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」など。
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