深くハマるか、上手くバランスするか

深くハマるか、上手くバランスするか

アヘッド 深くハマるか

話題の新型よりも自分が好きな型遅れのクルマに拘ってみる。
世間の評価を気にせずにサーキット専用のバイクを選んでみる。
一生ものと呼べる一品を思い切って手に入れてみる。
そして利益を無視して仕事に深くハマってみるというのもある。
本当に納得できることが新しい情報の中にあるとは限らない。

50万円のクルマに100万円かけて乗るのもあり

アヘッド 深くハマるか

text:嶋田智之 photo:長谷川徹


世の中的に〝クルマにハマってるヒト〟と見なされることが多いようだ。確かに僕はクルマが大好き。目覚めてるときの大半、クルマにまつわる何かしらを考えてるようなところもある。

趣味もクルマ、仕事もクルマ関連のモノ書き。いつでもどこでもクルマ・クルマ・クルマ、なのは事実だ。クルマのない人生なんて考えられない。〝ハマる〟というより、ただ好きなことをずっと続けてきてるだけなんだけどなぁ──というのが正直なところなのだが、〝これまでの人生ほとんどクルマ〟で来られたのを幸福に感じてる自分がいるのも間違いないところだ。

問題はその先、である。「羨ましい」みたいな言葉を聞くと、結構な違和感、である。余程の事情があるなら別だけど、日々の暮らしの中でクルマを楽しむも楽しまないも、あなたの気持ち次第なんじゃないか? と思うからだ。

例えば僕のオンボロのアルファ・ロメオは、買ったときの値段がたった35万円。色々手を入れてきたけど、それでも100万円には達しない。けれど僕の自分のクルマに対する満足感は、あなたが自分の500万円のミニバンに対して感じてるそれよりも、きっと強いんじゃないだろうか、なんて思ったりもする。

アルファ・ロメオは歴史的に〝誰もが認める名車〟をたくさん生み出してきているけど、僕の〝166〟というモデルはその範疇からは大きく外れたいわゆる不人気車。

手に入れた直後、関係者の間に「いったいなぜ?」と波紋を投げかけたほどに。それでも今や大のお気に入りで、他人の目にどう映ろうが、僕にとっては〝個人的な名車〟だ。間違いなく偏愛だけど、間違いなく愛はある。満足感が高くて、当然といえば当然だろう。

──自慢? とんでもない。僕のクルマを自慢をする気もなければ、ヒト様にオススメする気もない。言いたいことはただひとつ。クルマの値段の多寡だとか、他人が作った既存の価値観だとか、そんなものが何かを決定づけるわけじゃない、ということだ。

そもそも、クルマとは自分のために手に入れるもの。自分が満足できるならそれでよし、のはずである。家族の意見には少しぐらいは耳を貸す必要があるかも知れないけど、他人に四の五のいわれる筋合いのものではない。もちろん予算の問題は常について回る。

でも、クルマ好きであれば、限りある予算の中にも1台か2台は惚れてたり気になってたりするクルマがあるはずだ。それが15万円のパンダでも20万円のジムニーでも、30万円のルーテシアRSでも50万円のロードスターでも、80万円のクラシック・ミニでも100万円のシトロエン2CVでも、いいじゃないか。あなたが気に入ってあなたが乗るのだから、他の誰に憚る必要もない。

なぜ? と問われたら、ニヤニヤ笑って返せばいい。そうしたクルマ達に、最初から予算に組み込んでいてもいいしコツコツと徐々にやっていってもいいと思うけど、例えば50万円なり100万円なりの予算や手間を費やして手を入れていけば、それは世界にふたつとないあなただけの1台。金額には換算できない宝物になって、想いもさらに強く入っていくに違いない。

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その好例が、ここにあるTCRの加藤さんのロードスター。長年の相棒であるNRAを、彼の好みと想いに沿って進化させている。加藤さんはプロドライバーでありクルマいじりの専門家でもあるから、かけた手間も予算も結構なものだったと想像するけれど、ここまでじゃないにせよ、誰だって似た道筋を辿ることはできるはずだ。

実は僕のアルファ166も、考えた末に見えないところに工夫を加え、通常の166よりさらに気持ちよくコーナリングできるよう仕立てた、いわば自分スペシャル。手が入るたびに愛も情も深くなってきた。見方を変えれば〝自分だけの名車〟に育てたようなところもあるのかも、とすら感じてる。

ヒト様に無理に勧めるつもりはないけれど、もう一度だけ申し上げる。クルマを楽しむも楽しまないもあなた次第。小さなところから始めて小さな幸せを噛み締め続けていけば、実はそれだけで結構ハッピーな気分になれるということを、どうかお忘れなきよう──。

▶︎ロードスターのテクニカルショップ「TCR」の代表であり、パーティレースの常勝者でもある加藤影彬氏のロードスターは、NC型(NRA)初代モデルとなる。

白だった外装をMAZDAの現在のイメージカラーであるソウルレッドにオールペイントした他、NC型2代目のテールランプやヘッドライトユニット、NC最終型のフェイスグリル、ホイールの17インチ化、RS用の6速ギア、純正ハードトップ装着など、2013年に自身がニュル24hレースに出場した際のレプリカ仕様としている。

加藤氏いわく「自分と同じようにND型がデビューしたからこそ、あえて2ℓのNC型にこだわるユーザーも多い」とのこと。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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