小沢コージのものくろメッセ その26 日本のタクシーと「Uber(ウーバー)」の関係性

アヘッド 小沢コージ

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昨年末、初めてカリフォルニアで使ってあまりの便利さに衝撃を受けたと同時に、日本では既存勢力の反対もあり、なかなか普及が進まず歯がゆい思いをしている新テクノロジーがある。日本じゃあまり知られてない自動車配車アプリ「Uber(ウーバー)」だ。

text:小沢コージ [aheadアーカイブス vol.162 2016年5月号]
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その26 日本のタクシーと「Uber(ウーバー)」の関係性

その26 日本のタクシーと「Uber(ウーバー)」の関係性

7年ほど前に始まったシステムで、昨今は「ライドシェア」とも呼ばれ、ネットやスマホ普及と相まって爆発的に世界に広まった。去年末は遂に、発祥の地サンフランシスコで大手タクシー会社を破産に追い込んだほどだ。

正直、コイツの便利さは使ってみないと分からないが、凄いのはスマホ上で行うタクシー配車サービス以上に、運賃の安さと支払いの安心感がある。なにしろコイツの本質は前代未聞の「白タク安心利用システム」でもあり、だから日本で普及しないのだ。

論より証拠。小沢が使った場所はサンフランシスコ。ネットで予約した安モーテルに泊まることになり、しかも飛行機出発は翌朝8時。余裕を持って6時には空港に着きたいが、ネットで調べても電車やバスは近くを通ってないし、となると移動はタクシーしかない。

しかしモーテルの受付に人はロクにいないし、早朝5時台に路上で流しのタクシーを確実に捕まえられるとも思えない。すると現地人が言うのだ。「Uberしかないわよ」

使い方は簡単。専用アプリをダウンロードし、名前や連絡先、ここがポイントだがクレジットカード番号を入れるとIDが取得でき、アプリ上で近くを走っているクルマを呼び寄せ、目的地まで行くことが出来る。凄いのは目的地を入れた時点でおおよその運賃が判明することで、普通のタクシーより大抵安い。

なぜなら場所にもよるが海外ではまず正規のタクシーではなく、民間人がマイカーでやってくる。Uberの基本は白タク、つまり素人ドライバーの発掘&利用なのだ。

だから安いわけだが、となると当然気になるのが乗車リスク。ドライバーは日本でいう2種免許を持ってないし、客を拉致しての強盗やら最悪レイプもありうる。実際そういう事件が全くないわけではない。

しかしUberドライバーはクレジットカード保持者しかなれないから、ある程度身元が判明できる上、ドライバーの実名、車名、自動車ナンバーが表示されるし、ドライバー採点システムもある。よって意外と普通の人が来るし、実際のところ安心なのだ。

知り合いのシスコ勤務の日本人女性は「何十回と使ってますけど全然大丈夫ですよ」と言うし、小沢が何度使っても恐そうな人は一度も来なかった。それどころか海外では正規タクシーでも平気でメーターを止めて走るし、料金をボる。Uberの方が安心なくらいだ。

その点、日本は一応Uberはあっても普通のタクシーをアプリで呼べるだけなので料金的な旨みがないし、元々正規タクシーが割高だが安心なのでメリットがほとんど享受できない。よって普及は進んでいない。

日本でも、過疎地区だけでも白タクを認可し、Uberを導入すれば凄く便利なはずなのだ。しかし、先日富山で行われるはずだったUber Japanの実験は見送りになった。実は安部政権は普及促進側で、問題は仕事を失う昔ながらのタクシー業界だ。気持ちが分からぬわけではない。が、こうやって日本はまた1つ世界とズレていく。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。
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