埋もれちゃいけない名車たち vol.31 “軽”の世界の自由形「スズキ マイティボーイ」

アヘッド スズキ マイティボーイ

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排気量660㏄以下、全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下という厳格な規定内で作られる軽自動車。室内をより広く使うため、あるいは燃費などの経済性を稼ぎ出すためためにありとあらゆるアイデアやテクノロジーが投入され、日本人が日本国内で乗るための利便性も徹底的に吟味された小さなクルマ達は、実用上は自動車として全く不自由がないどころか、時として普通乗用車をしのぐほどの働きを見せてくれる秀作揃いだ。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.147 2015年2月号]
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vol.31 “軽”の世界の自由形「スズキ マイティボーイ」

vol.31 “軽”の世界の自由形「スズキ マイティボーイ」

我が国の自動車保有台数のうち4割ほどが軽自動車であるというのも素直に頷ける。軽自動車はまさしく日本の国民車であり、僕達庶民の日常生活のための道具としては、間違いなく最強のパートナーである。

そんな中にあって、昨年からスズキ・ハスラーの人気が高い。実用の道具というより休日が楽しくなりそうな遊び心満点のクルマ作りがその秘密であるが、スズキがこうしたクルマ作りに長けているのは今に始まったことじゃない。

歴史を振り返れば、流麗なスポーツモデルのフロンテ・クーペや本格クロカン4WDのジムニーをはじめ、〝軽〟の世界に小さな夢や大きな楽しさを盛り込んだ唯一無二といえるようなモデルを、たくさん送り出してきてるのだ。
その中のひとつが、このマイティボーイ。1983年にデビューし、「スズキのマー坊と呼んでくれ」というテレビCMで一躍お茶の間に知られる存在となった、スタイリッシュなピックアップトラックだ。

どちらかといえば女性をターゲットにしたスペシャルティクーペだった2代目セルボをベースとし、Bピラーより後ろのルーフを切り取って荷台をあつらえたカタチの2シーターモデル。

荷台の長さはたった66㎝で、一般的な軽トラックとは比較するまでもなく積載能力そのものは低いが、逆にキャビンは少々広くとられ、シートのリクライニングもできれば、シート後ろ側を手荷物の収納スペースとして使えるなど、働くためのピックアップトラックではなく若者の遊びのためのギアといったイメージが強かった。

セルボ同様Bピラーまではスポーティカー風で、ドライビングポジションもそれっぽかっただけでなく、リアが荷台になったことによる520kgという軽い車重が幸いして、実際に走らせても結構軽快でスポーティな乗り味だった。ドレスアップやカスタマイズの素材としても親しまれた。

ニッチな存在だから大ヒット作とはならなかったが、どこからどう見ても楽しそうな自由形の雰囲気は、ほとんどのクルマ好きに好意的に受け止められた。

暮らしの道具として磨き上げられた軽自動車。それは素晴らしい存在だし、なくてはならないとも思う。けれど、何か大切なことを忘れてるように感じるのは僕だけだろうか?

スズキ マイティボーイ

マイティボーイは、1983年から1988年にかけて生産された、ボンネット型軽トラック。2代目セルボをベースとしてボディ後半を荷台へとアレンジしたもので、メーカー側も商用車ではなくスタイリッシュなピックアップトラックとして位置づけていた。

上級グレードにはデッキカバーと呼ばれる幌が装備されており、1985年のマイナーチェンジ後はデッキカバーの代わりにルーフレールが備わるなど、遊び心が各所に見られたのも大きな特徴。ちなみにデビュー当時の価格は45万円と、当時の自動車の中で最も安価な設定だった。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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