埋もれちゃいけない名車たち vol.36 小さなクルマの ゴージャス空間「ルノー・ルーテシア バカラ」

アヘッド ルノー・ルーテシア バカラ

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巻頭の特集からも判るように、近年のクルマ作りはダウンサイジングを意識したものであることが多い。安全性を確保するためにクルマを大きく重くしてきた時代への反省であり、求められる環境性能を高レベルで満たすための発想でもあるわけだけど、それが車体に見合わぬ小排気量エンジンを積んでも動力性能に不足はなくなり、車体をコンパクトにまとめて軽量に仕立て上げる技術を生み出したわけだ。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.152 2015年7月号]
Chapter
vol.36 小さなクルマの ゴージャス空間「ルノー・ルーテシア バカラ」
ルノー・ルーテシア バカラ

vol.36 小さなクルマの ゴージャス空間「ルノー・ルーテシア バカラ」

そのおかげもあってか、エンジンや車体が小さいクルマ達を選ぶことへの心理的抵抗は以前と較べて小さくなっているし、周囲の眼差しも当たり前のように柔らかい。

小さなクルマに乗ってるだけで見下されるような雰囲気があった気の違ったようなバブル期を知る身には、気持ちに雲がかかることのない素晴らしい時代に感じられる。

昔から小さなクルマを積極的に選ぶ〝好き者〟は存在していたけれど、日本ではある時代まで、ラインアップの下位にある小さなクルマ達は、数少ない例外を除くと押し並べてショボかった、と表現しても過言ではないだろう。

とりわけインテリアに関しては、であることを隠しきれないクルマが多かった。けれどコンパクトカーの本場であるヨーロッパは事情が違っていて、他に何台も高級車を所有する貴族が狭い都市部を気楽に走り回るために作られたような、小さくてゴージャスなクルマというのが存在していたのである。

それを我が国の〝好き者〟達に知らしめたのが、ルノーのサンク・バカラであり、その後継車であるルーテシア(本国名:クリオ)・バカラである。

特にルーテシアの方は、エクステリアデザインがかなり控え目だったこともあり、その麗しきインテリアとの落差には驚かされたものだった。何せ小さくて地味なクルマのドアを開けたら、いきなり貴族の屋敷の居間かと思えるようなゴージャスな空間がそこにあるのだから。

バカラというのはフランスのロレーヌ地方で生まれて1816年からクリスタルガラスを製造している、フランス王室はもとより世界各国の王室を顧客にしている超高級ブランド。

それにちなんだ名前を持つだけあって、バカラの室内は、先代であるシュペール・サンクの時代に続き、贅をこらしたレザー張りとなるなど極めて上質な雰囲気に満ちたものになっていた。

また同様にリアのハッチゲートを開くと、パーセルシェルフの下側にレザー製のコートケースが備え付けられていた。当時の〝好き者〟達が憧れたのも然り、である。

豪華な小型車は、バカラが初めてというわけではない。が、そうしたクルマ達を世に広める立役者だったことは間違いない。そして現在の小さなクルマ達のインテリアはだいぶ上質になったが、バカラのレベルに達しているものは、まだ少ないのだ。

ルノー・ルーテシア バカラ

ルノー・ルーテシア(本国名:クリオ)は、ベストセラーであったシュペール・サンクの後継として1990年にデビューした小型車である。

現在のルノーとは異なり、初代のルーテシアのスタイリングデザインは極めてコンサバ、有り体にいえば地味な姿をしていたが、モータースポーツのベース車両から営業車両まで多彩なヴァリエーションを持つ、ルノーの屋台骨といえる存在であった。

その中の“小さな高級車”的な位置づけにあったのが“バカラ”である。豪華な室内と排気量が大きくトルクフルなエンジンが搭載されていた。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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