埋もれちゃいけない名車たち Vol.32 過酷な環境走破性という至上命題「トヨタ ランドクルーザー70 」

アヘッド トヨタ ランドクルーザー70 過酷な環境走破性という至上命題

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巻頭特集の『テイストとは何か』で、僕はポルシェ911を引き合いに出しているが、確固とした哲学がどっしりと腰を据えた独自のテイストを持つクルマは、他にだってある。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.148 2015年3月号]
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Vol.32 過酷な環境走破性という至上命題「トヨタ ランドクルーザー70」

Vol.32 過酷な環境走破性という至上命題「トヨタ ランドクルーザー70」

一部の心ない人がマニア面をしたいときに〝白物家電〟と揶揄したりする、トヨタ製のクルマにだってある。そもそもトヨタにはトヨタの確固たる哲学があって……なんて話をしはじめると脱線するのでそれはまた別の機会にするが、今回ここで御紹介したいのは、ランドクルーザー70だ。

このページは歴史的なクルマを紹介することが多いのだが、ランクル70は現在も生産されているモデル。1984年にそれまでの40系の後継として登場して以来、足周りを1回、搭載エンジン変更のためフロント周りを1回変えただけで、モデルチェンジらしいモデルチェンジは行われていない。これがポイントその1。

そして、お洒落で使い勝手もよくて快適でそこそこ以上の走破性を持つ、いわゆるSUV全盛のこの時代にあって、ハシゴ型フレームに前後リジッドのサスペンション、駆動システムは副変速機で2WD、4WD、4WDローを切り替えるパートタイム式のまま。

乗用車として日常的に使う場合の快適性だとか乗りやすさをグッと高める方法も技術もトヨタはいくらだって持っているのに、そういうことは二の次。強度と耐久性、トラブルの少ない構造、確実な駆動力。あくまでもその部分に徹底的にこだわっている。ポイントその2。

さて、なぜか──? ランクル70はスキーやスノボを趣味にするヒト達のためではなく、道なき道ですら走破しなきゃならないような過酷な環境の中で生きる人達のため、徹頭徹尾ヘヴィデューティな用途を前提に作られているからだ。例えば中近東やオーストラリア、ロシア、アフリカ……。
砂漠や凍土、ガレ場や草原。そんな中を1日かけて走らないと物資すら手に入れられなかったりする。

そうした凄まじい自然環境の中で暮らしている人達にとって、直面する環境を走破できなければクルマに乗る意味はないし、出先で立ち往生するような信頼性の低さは死に直結する。そうしたエリアではパーツの手配なんて追いつかないわけで、廃車体からパーツを剥ぎ取って代替できることも重要なのだ。ポイント1とポイント2が頑なに保たれているのは、だからなのである。

走らせると、全く快適じゃないし癖も強い。恐ろしくダイナミック。全身で運転することが求められる。走破性なんて、スーパーカーがそうであるように、日本の環境には明らかにオーバースペック。でもこれこそが本物! という迫力がある。

過酷な暮らしを強いられている世界中の人達に「これじゃなきゃダメなんだ」といわせ続けるランクル70。文句なしに〝日本の名車〟だと思う。

トヨタ ランドクルーザー70

トヨタ・ランドクルーザー70は1984年デビュー。長寿モデルだった40シリーズの後継であり、同様に世界各国のあらゆる場所を走破でき、長く乗り続けられなければならないという宿命を負っていた。

ラダーフレームと前後リジッドのサスペンションも手動切替のパートタイム式4WDシステムも全てそのため。古典的ではあるが不変である。2004年以降は海外専用モデルとなっていたが、2014年8月から2015年6月までの期間限定で国内復帰。驚いたことに20代や30代から大きな支持を受け、予想を上回る売れ行きを示しているという。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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