走行距離ほぼ10万キロ...知人から貰ってきたシトロエン・エグザンティア ブレークの乗り心地はまるでロールスロイス?オーナーレビュー

シトロエン・エグザンティア ブレーク 中村孝仁

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クルマに携わっていると、色々なオファーが舞い込むものだ。シトロエン・エグザンティアのケースは、知人からエグザンティア・ブレークあげるけど、いらない?というものだった。正直言えばただほど高いものはないと良く言われるから、最初はどうしたものかと逡巡した。当時我が家ではVWゴルフVが稼働中で、日常の足は事足りていたからである。貰うにあたる条件はなかった。ただ、クルマが岡山にあるからそれを自分で取ってくる。ただそれだけであったはずが...。

文/写真・中村孝仁
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ハイドロニューマチックにもう一度魅了されたい
ロールスロイスも真っ青?ハイドロニューマチックの魔力は凄まじい
乗り心地は素晴らしいけど、やっぱり加速には難あり....

ハイドロニューマチックにもう一度魅了されたい


状態はと言うと、非常に良好とのことでトラブルフリー。ただし、ほんの少しだけ擦り傷があるというものだった。勿論、ただとはいえ車庫代だの、税金だの保険だのと、車一台の維持費は馬鹿にならないから、逡巡の理由はそこにもあったのだが、かつて味わったハイドロの乗り心地の魔力には勝てず、結局戴くことにして一路岡山に…。


走行距離は間もなく10万キロに届きそうな相当なベテラン選手だったが、驚いたことに言われた通り、ほとんど傷もなく外観はとても綺麗であった。なので、これなら損はないとその時思ったものだ。実は一口にエグザンティアと言っても、93年のデビュー時のモデルから後期型に至る過程でいくつかの重要な変更が加えられていたから、もし購入しようと思われる人はそのあたりを注意する必要がある。

ご存知だとは思うがエグザンティアのサスペンションは、シトロエンが独自に開発したハイドロニューマチックと呼ばれた極めて特殊で複雑な機構を持つ。端折って説明すると空気と水というか、液体と気体を使ってサスペンションをコントロールするもので、いわゆる金属バネを持たない。かといって現在のエアサスともまた異なる独自のものだ。

呼び方は最初はハイドロニューマチックだったが、後にハイドラクティブと呼ばれ、無類に快適な足とどんなに荷物を積んでも無様にお尻が下がらない凛とした姿勢を崩さないことが大きな特徴であった。初期のエグザンティアはグレードによってこの新旧のサスペンションを使い分けていたが、後発となったブレーク、即ちワゴンには新しいハイドラクティブⅡと呼ばれるサスペンションだけが使われている。

ロールスロイスも真っ青?ハイドロニューマチックの魔力は凄まじい


とにかく乗り心地だけは恐らくロールスロイスでも敵わないと思うほど、快適である。その快適さを享受するため、その昔の話だがロールスロイスもシトロエンのハイドロサスペンションを購入して使っていた時期がある。ハイドロサスペンションの大きな特徴は、前述もしたが、車体を常に路面に対して並行に保とうとする機能があるため、例えラゲッジスペースに重い荷物を積んでも、リアのサスペンションが沈み込むことはない。あたかも空車のような姿勢を保ってくれる。


面白いのはリアシートに人間が座ると、乗り込んだ瞬間に一瞬大きく沈み込み、その後じんわりとボディが上がってくることを目の当たりにすることが出来ること。さらに車高はセンターコンソールに付くレバーによって、確か4段階に切り替えが可能だった。独特の世界観というのは、やはりその動きにある。

一番それを感じるのは、大きく波を打ったような路面に差し掛かった時だ。前のクルマがやけに上下動するなと思って見ていても、こちらはほとんど何事もなかったかのようにそうしたところを通過してしまう。だから高速道路はまさにシトロエンの独壇場。岡山からおよそ900kmの道のりを一人でドライブして帰ってきた(夕方出たので途中名古屋にて一泊)が、全くの疲れ知らずであった。

かつてのハイドロニューマチック時代は、ステアリングからブレーキに至るまですべて同じ油圧機構を用いていたため、特にブレーキは特殊であったが、エグザンティアはそれが別系統となって普通のブレーキフィールを持っている。さらにクルマを止めると以前は車体が地面すれすれまで下がって、下から車止めが出てくるコインパ―キングなどでは困ったが、止めた状態を維持する機構が付いた95年モデル以降はその心配がなくなっている。

乗り心地は素晴らしいけど、やっぱり加速には難あり....


ただし、どんなクルマにも一長一短があるのだが、シトロエンの場合まずエンジンがどちらかと言えば非力である。この傾向は昔から変わらず、あのどデカい昔のDSだって、初期モデルは僅か1900ccの4気筒エンジン。最終型でもそれが2.3Lに引き上げられたに過ぎない。このためエグザンティアもそうだが、どうしても低いギアで引っ張ってやらないとなかなか満足な加速が得られない。

この時代のオートマチックは、ギア数が多くても4速ATどまり。今のように8速など夢のまた夢だった。そのため満足な加速性能を得るためだったのか、各ギアは比較的高回転域まで引っ張る。

だから都内などで40km/h程度のスピードは常に3速までしか上がらない。4速に引き上げるためには車速は70km/h程度が必要だった。もっとも一旦巡航速度に達してしまうと無類に快適である。正直追い越しなどは苦手。その性能を補うために後年には、3LのV6エンジン搭載車も誕生したが、個人的にはパワーはなくても4気筒の2Lエンジン仕様がお勧めである。


理由はやはり故障の頻度がV6よりは少なかった印象が強いことだ。この時代のフランス車は、正直言ってまだまだ機械としての完成度が例えばドイツ車などから比べたら低く、ある程度故障は初めから覚悟して乗っている必要があった。これ以前に持っていたシトロエンZXは、そりゃあ酷いもんで、あっちを直すとこっち、こっちを直すと今度はあちらと、故障が絶えず、それで手放した記憶がある。

エグザンティアの場合、誰もが心配するのは複雑な機構を持つハイドラクティブサスペンションだろうが、履歴の有るクルマならばそれでどのような経緯があったか判断が付く。しかし、僕のように個人売買(売買ではなかったが)のケースでは、こうした点がまさしくブラックボックスの中で調べられない。

でも、たまたまかもしれないがラッキーなことにハイドロが壊れることは持っている間一度としてなかったし、手放してやはり人に差し上げたのだが、その人が乗っている間もハイドロがいかれたという話は聞かなかった。だから、この点に関しては恐らく完全に個体差があると言って間違いない。

だからシトロエンのハイドロ系を手に入れようと思う場合、まずは循環器系のしっかりしたクルマを選ぶのが鉄則と思って間違いない。そこさえ外さなければ、あなたはシトロエンの絶妙な乗り心地の虜になること疑いなしである。

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