ライトウェイトスポーツカーとはどんなクルマ?歴史や特徴・魅力を徹底解説

トヨタ 86

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ライトウェイトスポーツカー(ライトウエイトスポーツカー)とは、その名の通り軽量なスポーツカーを指します。昨今、世界的には大排気量エンジンを積んだ高性能スーパーカーが脚光を浴びていますが、その一方で昔ながらの軽量スポーツカーの魅力も根強く支持されています。

自動車レース界の伝説的人物であるコーリン・チャップマン(ロータス創始者)は「馬力を上げれば直線では速くなる。重量を減らせばどこでも速くなる(Adding power makes you faster on the straights. Subtracting weight makes you faster everywhere.)」と語りました。

この言葉どおり、車重の軽さはスポーツカーの走行性能において非常に重要な要素なのです。では、ライトウェイトスポーツカーとは具体的にどのような車なのでしょうか。本記事では、ライトウェイトスポーツカーの定義や歴史的背景、その特徴や魅力、そして現在入手可能な代表車種について、ゆっくり解説していきます。

CARPRIME編集部

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Chapter
ライトウェイトスポーツカーの定義
ライトウェイトスポーツカーの歴史的背景
1950〜60年代:英国で花開いた小型オープンスポーツ
1970年代:規制強化による一時的な停滞
1989年:マツダ・ロードスターの登場と再興のきっかけ
1990年代:多彩なライトウェイトスポーツの復活
21世紀〜現在:NDロードスターが守り続ける“軽さ”の哲学
ライトウェイトスポーツカーの特徴と魅力
その①:軽快なハンドリングとダイレクトな操縦感覚
その②:小排気量エンジンを高回転まで回し切る快感
その③:軽量ボディゆえに誰もが扱いやすく、公道で楽しめる
現在日本で手に入るライトウェイトスポーツカーは?
マツダ ロードスター(ND型)
トヨタ GR86 / スバル BRZ(2代目)
ホンダ S660(2022年生産終了)
ダイハツ コペン(現行LA400型)
スズキ スイフトスポーツ(現行)
ロータス エリーゼ/エキシージ(~2021年)
ケータハム セブン
アルピーヌ A110
アバルト 124スパイダー(2016年~2019年)
まとめ

ライトウェイトスポーツカーの定義

トヨタ 86

トヨタ 86(初代)

まずライトウェイトスポーツカーの定義について整理しましょう。

明確な規格があるわけではありませんが、一般的には「車両重量がおおむね1トン程度以下」で「比較的小型で排気量も2L以下の自然吸気エンジン」を搭載したスポーツカーを指すことが多いとされています。

つまり軽量級スポーツカーというわけです。ただし何をもってスポーツカーとするかは人によって様々です。エクステリア(外観)がスポーツカーらしい2ドアクーペであること、エンジン出力やハンドリング性能が同クラスの平均以上であること、といった観点も重要でしょう。

本稿では「車重約1トン」「2ドアのスポーツカーらしい車種」「動力性能がクラス水準以上」であることをひとつの目安にライトウェイトスポーツカーを考えていきます。

なお厳密な定義はないため、現代では安全装備の増加などで車重が1トンを超えていても「ライトウェイト」と称される車もあります(後述するようにスバルBRZは約1270kgですがライトウェイト扱いされる場合があります)。

要は「運転して軽快・痛快な感覚が味わえる車」であれば、ドライバーにとってそれがライトウェイトスポーツカーなのです。

ライトウェイトスポーツカーの歴史的背景

「マツダ ロードスター RF」

マツダ ロードスター RF

1950〜60年代:英国で花開いた小型オープンスポーツ

ライトウェイトスポーツカーの歴史は古く、1950~60年代の欧州(特に英国)に遡ります。

この時代、イギリスではMGやロータスといったメーカーが小型オープンスポーツカーを多数生み出し、大きな人気を博しました。

代表的な車種として、MG B(1962年登場)やロータス・エラン(1962年登場)が挙げられます。これらは最高出力こそ100馬力前後と現代基準では控えめでしたが、車両重量はMG Bで910kg程度、ロータス・エランに至ってはわずか600kg台という驚異的な軽さでした。

そのため加速や最高速こそ「速いわけでもなく」実用性も低い車でしたが、「運転が楽しい」という一点において他のどんな車にも勝る魅力を持っていたのです。

小さなボディにFRレイアウト(フロントエンジン・後輪駆動)を採用し、車と一体になってワインディングロードを駆け抜ける感覚――ドライバーの五感に訴えかける楽しさこそ、ライトウェイトスポーツカーの真髄でした。

1970年代:規制強化による一時的な停滞

しかし1970年代以降になると、安全基準の強化や排ガス規制の影響もあり、欧米の小型スポーツカー市場は一時下火になります。

1989年:マツダ・ロードスターの登場と再興のきっかけ

そんな中、1989年に登場したマツダ・ロードスター(日本名ユーノス・ロードスター)が世界のライトウェイトスポーツカー史に大きな転機をもたらしました。

初代モデル(NA型)で車重約940kgと軽量に抑えつつ、人馬一体のハンドリングや爽快なオープンエアモータリングを実現し、大ヒットを記録します。まさに「小さく軽量でFR、ドライバーの心に訴えかけるライトウェイトスポーツの肝をすべて押さえた」車だったのです。

1990年代:多彩なライトウェイトスポーツの復活

ロードスターの成功を受けて各国メーカーも再び小型スポーツカー開発に乗り出し、1990年代にはスズキ・カプチーノホンダ・ビートといった軽自動車規格のオープンスポーツ(後述)、海外でもMG Fフィアット・バルケッタ、さらにはメルセデスベンツSLKBMW Z3など、多彩なライトウェイトスポーツが復活しました。

21世紀〜現在:NDロードスターが守り続ける“軽さ”の哲学

21世紀に入ってからも、マツダ・ロードスターは進化を続けており、2015年発売の現行4代目(ND型)でも衝突安全基準を満たしつつ車重990kgと1トン以下を維持することに成功しています。

メーカーは「グラム単位での軽量化作戦」まで行い、アルミ素材の採用や各部の肉抜きなど徹底した工夫で軽さを追求しました。

このようにコストをかけてでも「運転が楽しい車」を作り上げてきた成果として、ロードスターは累計生産台数100万台を超えるまでの大成功を収めています。

一時は「絶滅した」とまで言われたライトウェイトスポーツカーですが、ロードスターが火を絶やさず灯し続け、現在までその文化は受け継がれているのです。

ライトウェイトスポーツカーの特徴と魅力

アバルト 124 スパイダー 2016

アバルト 124 スパイダー

その①:軽快なハンドリングとダイレクトな操縦感覚

ライトウェイトスポーツカー最大の武器は軽量な車体そのものです。

車重が軽ければ、コーナリング時に車体にかかる慣性モーメント(遠心力)が小さく、ひらひらと身軽に曲がることができます。

例えば全長4m弱のオープンカーである初代ロータス・エランは車重わずか600kg台でしたが、その軽さゆえに“四輪がまるで手足のように動く”と言われました。

軽い車体は接地するタイヤへの負担も小さくて済むため、太いタイヤを履かず細いタイヤで十分グリップが確保でき、結果としてステアリングも軽快でシャープな応答になります。

ドライバーがハンドルを切った瞬間に車がスッと向きを変える感覚──このダイレクトさこそライトウェイトの醍醐味でしょう。

実際、車重1トンを遥かに下回るケータハム・セブン(約500kg台)やダイハツ・コペン(MT車で850kg)に乗ると、その異次元の軽さに驚かされます。

わずかなステア操作やアクセルワークに敏感に反応し、まるで車を意のままに操れているかのような一体感があります。

「車重850kgの車体を思い通りに操れる感覚」は爽快であり、決して大馬力マシンには真似できないライトウェイトスポーツカー特有の楽しさです。

こうした軽さゆえのハンドリング性能の高さこそ、多くのライトウェイトスポーツファンが病みつきになるポイントなのです。

その②:小排気量エンジンを高回転まで回し切る快感

ライトウェイトスポーツカーの多くはエンジンも小型軽量です。

排気量1.6~2.0L程度(場合によっては660ccの軽自動車規格も)で、高出力化よりも軽さ・コンパクトさを優先しています。必然的に大排気量エンジン車と比べるとパワーやトルクでは見劣りしますが、そのぶん、エンジンを思う存分高回転域まで回し切る楽しさを味わえます。

アクセルを深く踏み込んでシフトを次々に繰り出し、エンジンのレブリミット(回転限界)ギリギリまで引っ張って走る――この一連の操作そのものが、ライトウェイトスポーツカーならではの醍醐味なのです。

例えばホンダ S660はわずか660cc直列3気筒ターボエンジンで最高出力64馬力しかありません。しかし6000rpmで最大出力64PSを発揮し、レッドゾーン開始が7700rpmにも及ぶ高回転型エンジンとなっています。

MT車なら自らシフト操作を行い、この小さなエンジンを思い切り回してパワーバンドを維持する必要があり、その過程自体がスポーツドライビングの楽しさにつながります。「エンジンを回してナンボ」の感覚は、大排気量で低中速から力強いトルクが出る車では味わいにくいものです。

もっとも近年は直噴ターボ化など技術進歩で、小排気量でも低回転から十分なトルクを発生できる車種も増えました。

例えばスズキ・スイフトスポーツ(1.4Lターボ)は最大トルク23.4kgf·mを2500~3500rpmで発生し、日常走行ではあえて高回転まで引っ張らなくても力強く走れてしまいます。

それでも「自分でエンジンの限界まで使い切って走る」という行為に楽しみを見出せるのは、ライトウェイトスポーツカーならではと言えるでしょう。

マニュアルトランスミッションとの組み合わせが多いのも特徴で、クラッチ操作やシフトワークを駆使して車を操る悦びは格別です。

その③:軽量ボディゆえに誰もが扱いやすく、公道で楽しめる

ライトウェイトスポーツカーは車重が軽いため、パワーが控えめでも必要十分な走行性能を引き出せるという利点もあります。重量級のスポーツカーだと高い出力があっても車重で相殺されてしまい、公道では持て余すケースもあります。

一方、ライトウェイトならエンジン出力のすべてを使ってもなお車体が制御しやすく、運転の限界が掴みやすいのです。言い換えれば、スポーツカーの楽しさを日常的な速度域で味わえる車と言えます。

法定速度内でもコーナリングのスリルやエンジンを回す快感を十分に体験でき、サーキットに行かずとも“スポーツカーらしさ”を堪能できる点はライトウェイトスポーツカーの大きな魅力です。

また軽量で比較的小ぶりな車体は総じて運転における敷居が低い傾向があります。車両感覚を把握しやすく、小回りも利くため、スポーツカー初心者でも扱いやすいのです。

例えば前述のロードスタートヨタ86/スバルBRZなどはパワーが過剰でないぶんコントロール性が高く、「誰でもスポーツカー感覚を楽しめる」入門スポーツとして評価されています。

重厚長大なスーパーカーとは異なり、ライトウェイトスポーツカーは運転者との距離が近く人車一体感が強いので、ドライバーの腕前次第で車の性能を引き出しやすいのです。

その結果、腕の良いドライバーが操れば排気量の大きな高性能車を峠道で追い回すことも可能であり、実際「柔よく剛を制す」といった痛快な展開が起こりうるのもライトウェイトならではの魅力と言えるでしょう。

現在日本で手に入るライトウェイトスポーツカーは?

ロードスター

ロードスター

マツダ ロードスター(ND型)

マツダ 4代目 ロードスター ND

マツダ 4代目 ロードスター ND

言わずと知れたライトウェイトオープンスポーツの代表格。1.5L直4エンジンで車重約990kg(MT車)と驚異的な軽さを維持しています。初代からの「人馬一体」コンセプトを継承し、現行モデルも操る楽しさに全振りした仕上がりです。

トヨタ GR86 / スバル BRZ(2代目)

2.4L水平対向4気筒エンジン搭載の小型FRスポーツ。車両重量はグレードにもよりますが1270kg前後とやや増えたものの、それでも昨今の車種では軽量な部類に入ります。初代86/BRZから改良されパワーが向上しつつ、依然としてハンドリングの楽しさを味わえる貴重なライトウェイトFRクーペです。

ホンダ S660(2022年生産終了)

ホンダ S660

ホンダ S660

軽自動車規格の2シーターオープンスポーツ。64馬力の660ccターボエンジンをミッドシップに搭載し、車重830kg(MT)程度と超軽量でした。2022年に生産終了しましたが、その俊敏なハンドリングとオープンエアの解放感で多くのファンを魅了しました。

ダイハツ コペン(現行LA400型)

ダイハツ コペン 2014

ダイハツ コペン 2014

こちらも軽自動車オープンスポーツ。FF駆動でエンジンは660ccターボ(64馬力)ですが、**車重850kg(MT車)**のボディを自在に操れるフィーリングが魅力です。電動開閉式ハードトップを備え日常ユースもしやすい入門スポーツカーとして人気です。

スズキ スイフトスポーツ(現行)

スズキ スイフトスポーツ 2017

スズキ スイフトスポーツ 2017

1.4Lターボエンジン搭載のホットハッチ。5ナンバーコンパクトながら車重はMT車で970kgと1トンを切る軽量ボディを実現しています。前輪駆動(FF)ではありますが軽快なハンドリングと実用性の両立で高評価を得ており、「手頃で楽しいライトウェイト」として支持されています。

ロータス エリーゼ/エキシージ(~2021年)

ロータス エリーゼ

ロータス エリーゼ

イギリスの老舗メーカー、ロータスが生産していたライトウェイトスポーツ。初代エリーゼ(1996年)は車重わずか720kgからスタートし、最終モデルでも900kg台前半という軽さでした。2021年に生産終了しましたが、「シンプルにして軽くあれ」の設計哲学を体現した名車です。

ケータハム セブン

ケータハム セブン160

ケータハム セブン 160

1950年代のロータス・セブンの系譜を継ぐキットカー/完成車。最低限のボディとシンプルな構造により車重は500~600kg台と超軽量で、現在でも注文生産により入手可能です。まさに「究極のライトウェイトスポーツ」の一角でしょう。

アルピーヌ A110

新旧アルピーヌ A110 比較

新旧 アルピーヌ A110

フランス生まれの2シータークーペ。1.8Lターボエンジン搭載ながら車重1100kg前後と軽量に仕上げ、ミッドシップならではのハンドリングと上質な乗り味で「現代のライトウェイトスポーツ」として評価されています。

アバルト 124スパイダー(2016年~2019年)

アバルト 124スパイダー

アバルト 124スパイダー

マツダ・ロードスター(ND型)をベースにフィアット/アバルトが手掛けたオープン2シーター。1.4Lターボエンジン搭載で車重約1060kgとライトウェイトの範疇に入り、イタリア車の味付けが光るモデルでした(現在は販売終了)。

まとめ

ライトウェイトスポーツカーとみなせる車種はいくつか存在します。

現代の自動車市場ではSUVやEV(電気自動車)が台頭し、どうしても車両重量は増加の一途をたどっています。軽量なスポーツカーを作ること自体、メーカーにとって技術的・コスト的にチャレンジングな時代になりつつあります。

それでもなお一定数のファンがライトウェイトスポーツカーを支持し続けているのは、本稿で述べてきた「軽さが生む運転の楽しさ」に他なりません。馬力競争とは一線を画し、スペックでは測れない爽快感や一体感をドライバーにもたらしてくれるライトウェイトスポーツカーは、まさに走る悦びを教えてくれる存在です。

幸いにもロードスターはその累計生産台数から「世界で最も愛された小型スポーツカー」としてギネス記録に認定されるほど支持されており、軽量スポーツの火は灯り続けています。

かつてロータスのチャップマンが体現した「軽さこそ正義」という思想は脈々と受け継がれ、時代が移ろうとも“運転が楽しい車”を求める声が消えることはないでしょう。

電動化や自動運転の波が押し寄せる中にあっても、ライトウェイトスポーツカーというジャンルがこれからも存続し、進化し続けてくれることを願わずにはいられません。
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