レーシングハイブリッド「THS-R」ってなに?歴史や仕組みを解説
更新日:2024.09.09
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トヨタのハイブリッドシステムが、THSです。このTHSをレース用に転用したものが、THS-R。2005年のレース参戦当初は量産に近いシステムでしたが、年々進化し、いまやTHSの限界を引き上げる実験的な側面も持ちます。
- Chapter
- 2017年のTHS-R
- THS-Rの歴史
2017年のTHS-R
2016年シーズンからWEC(世界耐久選手権)を戦う、トヨタのハイブリッドレーシングカー TS050 HYBRIDに搭載されるハイブリッドシステムがTHS-Rです。
基本構成は、V6直噴ツインターボをコアに、ハイパワー型リチウムイオン電池、MGU(モーター・ジェネレーター・ユニット)2機。MGU1機は前輪車軸上に、もう1機はリアのギアボックス内部に搭載しています。
TS050 HYBRIDが参戦するWECでは、レースで使用できる燃料の量が決まっています。そこで限られた燃料からいかに大出力を発生させるか、つまり熱効率の向上が開発のカギとなります。
そういった観点から2017年型では、コンポーネントを前面刷新。ターボチャージャーの大型化、高圧縮比化による対ノッキング限界の向上、リーンバーンの追求などを行っています。
燃料の量が決められているということは、いかにマシン自体を軽量化するかもレースを戦う大切な要素。とりわけ重量がかさむとされるハイブリッドシステムの重量を、いかに軽量にするかはマシンの戦闘力を左右する大問題です。
そこでMGUの小型化、制御システムの効率化、ハイパワー型リチウムイオンバッテリーの改良、システムの高電圧化、電気抵抗の低減などのアップデートを行っています。結果、高速・長時間運転で高音になりがちなレースでも、THS-Rは高性能を保てるようになり、同時にバッテリーの耐久性向上にも繋がっています。
高電圧化など安全面を考えれば、すぐに量産車に転用できる改良ではありませんが、どういう方向性でハイブリッドシステムをチューニングすれば、現行車以上の性能を発揮できるかのヒントが、THS-Rの発展過程には満載なのです。
基本構成は、V6直噴ツインターボをコアに、ハイパワー型リチウムイオン電池、MGU(モーター・ジェネレーター・ユニット)2機。MGU1機は前輪車軸上に、もう1機はリアのギアボックス内部に搭載しています。
TS050 HYBRIDが参戦するWECでは、レースで使用できる燃料の量が決まっています。そこで限られた燃料からいかに大出力を発生させるか、つまり熱効率の向上が開発のカギとなります。
そういった観点から2017年型では、コンポーネントを前面刷新。ターボチャージャーの大型化、高圧縮比化による対ノッキング限界の向上、リーンバーンの追求などを行っています。
燃料の量が決められているということは、いかにマシン自体を軽量化するかもレースを戦う大切な要素。とりわけ重量がかさむとされるハイブリッドシステムの重量を、いかに軽量にするかはマシンの戦闘力を左右する大問題です。
そこでMGUの小型化、制御システムの効率化、ハイパワー型リチウムイオンバッテリーの改良、システムの高電圧化、電気抵抗の低減などのアップデートを行っています。結果、高速・長時間運転で高音になりがちなレースでも、THS-Rは高性能を保てるようになり、同時にバッテリーの耐久性向上にも繋がっています。
高電圧化など安全面を考えれば、すぐに量産車に転用できる改良ではありませんが、どういう方向性でハイブリッドシステムをチューニングすれば、現行車以上の性能を発揮できるかのヒントが、THS-Rの発展過程には満載なのです。
THS-Rの歴史
トヨタが、ハイブリッド車の販売を開始したのは1997年。初代プリウスでのことです。そのシステム(THS)を使ってレースに参戦する構想が持ち上がったのが2005年。翌2006年には、レクサス GS450hのニッケル水素バッテリーをキャパシタに換装した車両で、十勝24時間レースに参戦。トラブルフリーで完走し、総合17位の成績を収め、翌年度のマシン開発に繋がる実戦データを手にしました。
翌2007年には、当時、SUPER GT GT500クラスで戦っていたスープラに、前年の経験から開発されたレース専用ハイブリッドシステムを搭載。
十勝24時間レースに参戦します。
パワーユニットは、4.5L V8エンジンをコアに、トランスアクスルと左右前輪のインホイールにMGUを設置。エネルギー蓄電装置としてキャパシタを採用し、THS-Rの原型が誕生。
実戦では、燃費が10%以上向上、フロントのブレーキ摩耗が抑えられ、総合優勝を遂げました。準国際格式のレースで、ハイブリッドカーが優勝したのは世界初でした。
しかし当時のレースは、ハイブリッドが入る余地はなく、もしもハイブリッドレーシングカーで参戦する場合、運動性能をその他のガソリンエンジン車と同等にするには、ハイブリッドシステム搭載による大きなハンデを背負わされることになっていました。
状況が変わったのは、2012年のことでした。WECに出走できるLMP1クラスのハイブリッドカーに対する制限が緩和されることになったのです。
それを受けてトヨタは、2012年シーズンよりWECに参戦、ル・マン優勝に的を絞ったマシン作りになります。
開発されたレーシングカーTS030 HYBRIDは、当初、2007年に十勝24時間で戦ったスープラHV-Rとよく似たハイブリッドシステムを搭載していたのですが、後にレギュレーションが見直され(回生は前後いずれかの2輪のみ、放出も回生と同軸で行うこと)、前輪のMGUを外しました。
キャパシタは、蓄電量を高めたスーパーキャパシタに変更。NA 3.4LガソリンエンジンをコアとしたTHS-Rが搭載されました。
2014年シーズンではレギュレーションの変更により、前輪車軸上にMGUを追加。あわせてスーパーキャパシタの構造も進化し、性能向上が図られました。
2015年はスーパーキャパシタが安定して性能を発揮できるように改良しましたが、この年より新たに参戦した、リチウムイオンバッテリーを採用したポルシェに惜敗。レースのレギュレーション上、キャパシタでは好成績を収められないと判断し、2016年にはリチウムイオンバッテリーを採用したTS050に進化します。
2016年のTS050は、最後の周回を目前にしたストレートでマシントラブルが発生。ル・マン制覇まであと3分というところで、悔しいリタイアとなりました。
2017年シーズンのWECは、第1戦、第2戦で優勝。第3戦のル・マンは以降、ポルシェの後塵を拝するレースが続いています。そんなTS050が走行するWRC第7戦が、日本の富士スピードウェイで2017年10月15日に決勝レースが行われます。
世界で戦うトヨタを応援に行きましょう!
翌2007年には、当時、SUPER GT GT500クラスで戦っていたスープラに、前年の経験から開発されたレース専用ハイブリッドシステムを搭載。
十勝24時間レースに参戦します。
パワーユニットは、4.5L V8エンジンをコアに、トランスアクスルと左右前輪のインホイールにMGUを設置。エネルギー蓄電装置としてキャパシタを採用し、THS-Rの原型が誕生。
実戦では、燃費が10%以上向上、フロントのブレーキ摩耗が抑えられ、総合優勝を遂げました。準国際格式のレースで、ハイブリッドカーが優勝したのは世界初でした。
しかし当時のレースは、ハイブリッドが入る余地はなく、もしもハイブリッドレーシングカーで参戦する場合、運動性能をその他のガソリンエンジン車と同等にするには、ハイブリッドシステム搭載による大きなハンデを背負わされることになっていました。
状況が変わったのは、2012年のことでした。WECに出走できるLMP1クラスのハイブリッドカーに対する制限が緩和されることになったのです。
それを受けてトヨタは、2012年シーズンよりWECに参戦、ル・マン優勝に的を絞ったマシン作りになります。
開発されたレーシングカーTS030 HYBRIDは、当初、2007年に十勝24時間で戦ったスープラHV-Rとよく似たハイブリッドシステムを搭載していたのですが、後にレギュレーションが見直され(回生は前後いずれかの2輪のみ、放出も回生と同軸で行うこと)、前輪のMGUを外しました。
キャパシタは、蓄電量を高めたスーパーキャパシタに変更。NA 3.4LガソリンエンジンをコアとしたTHS-Rが搭載されました。
2014年シーズンではレギュレーションの変更により、前輪車軸上にMGUを追加。あわせてスーパーキャパシタの構造も進化し、性能向上が図られました。
2015年はスーパーキャパシタが安定して性能を発揮できるように改良しましたが、この年より新たに参戦した、リチウムイオンバッテリーを採用したポルシェに惜敗。レースのレギュレーション上、キャパシタでは好成績を収められないと判断し、2016年にはリチウムイオンバッテリーを採用したTS050に進化します。
2016年のTS050は、最後の周回を目前にしたストレートでマシントラブルが発生。ル・マン制覇まであと3分というところで、悔しいリタイアとなりました。
2017年シーズンのWECは、第1戦、第2戦で優勝。第3戦のル・マンは以降、ポルシェの後塵を拝するレースが続いています。そんなTS050が走行するWRC第7戦が、日本の富士スピードウェイで2017年10月15日に決勝レースが行われます。
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