なぜ日本では『バック駐車』が主流になったのか?

日本の自動車運転の必須技能であり、かつ一般的なスキルとして、さまざまな場所で使われることになるのがバック駐車です。自動車学校では、バック駐車や縦列駐車の技能習得に時間をかけ、卒業試験でもどちらかの駐車方法が、必ず出題されるといっても過言ではありません。しかしよくよく調べてみると、バック駐車が多用されているのは日本だけで、欧米では前向き駐車(ヘッド in パーキング)が主流です。どうしてなのでしょうか?

Chapter
駐車の種類
なぜ日本ではバックで駐車する人が多いのか?
駐車スペースの広さによる、欧米と日本の駐車の違い
ますます狭くなる日本の駐車場

駐車の種類

郊外のショッピングセンターに行くと、広い駐車場がありますよね。あなたなら、どうやって愛車を駐車させますか?

入口付近で混み合っていながらも空いているスペースに駐車するのであれば、バック駐車ですよね。逆に入口から遠くて、周囲にほとんどクルマが駐車されていなければ、自動車の前方から駐車スペースに停めませんか?

自動車の駐車方法には、バック駐車、前向き駐車、縦列駐車の3つがあります。欧米では、前向き駐車や縦列駐車が主流ですが、日本ではバック駐車が一派的です。その違いは、どこにあるのでしょうか?

なぜ日本ではバックで駐車する人が多いのか?

その1、歴史的理由

バブル期の頃には、助手席の彼女が運転席の彼氏に、ドキッとする瞬間としてバック駐車が挙げられました。

バック駐車で目視の際、身体を固定するため、右ハンドル車であれば左腕を助手席のショルダー部分にあてます。そのときの仕草に、助手席の女性はドキッとするのだとか。助手席のショルダー部分に手をあてて、目視で行うバック駐車は、モテる男の条件でした。その名残りという説ですが…これは、弱いですね。

その2、習慣的理由

日本で自動車運転免許証を取得する際に、自動車学校で嫌というほど練習したのは、後方方向転換と縦列駐車です。前向き駐車は、習っていません。

つまり、日本人にとって駐車とはバック駐車と縦列駐車であり、習慣になっています。前向き駐車は邪道。騒音など問題が発生しやすい公共の駐車場では『前向き駐車でお願いします』という注意書きを見かけるほど、日本ではバックで駐車することが一般的になっているのです。

前向き駐車が邪道であるかどうかはさておき、広い駐車場でもバック駐車をする方が多いので、習慣的理由は意外と的を得ているのかもしれません。

その3、物理的および車体構造的理由

一番納得ができる理由が、物理的および車体構造的理由です。まず日本の駐車スペースは、1台分のスペースも、その前後の出入りする通路の幅もおしなべて狭いこと、そして自動車は進行方向に対し後方から操舵を行う方がコンパクトに移動できるということです。

フォークリフトを見るとわかるように、操舵は後輪で行ったほうが旋回半径が小さくなり、車両の小回りが効きやすくなるのです。つまり、乗用車であればバックの状態ですね。

駐車スペースの広さによる、欧米と日本の駐車の違い

国土の広い欧米では1台あたりの駐車スペースも広く、隣の駐車スペースまでの距離や駐車スペースが面する通路の広さも相当なものだそうです。そして多くが、前向きで駐車されているわけですが、国民性のためか多少自動車を斜めに止めても、隣の駐車スペースに入り込んでも気にする人は少ないようです。

というのも、前向き駐車は操舵輪が進行方向前方にあることで、タイヤの軌跡がハンドルを切った時点から鈍角にしか描けないため、狭いスペースで駐車がまっすぐになるよう車体を操作することは難しいのです。

対するバック駐車は、操舵輪が進行方向後方に位置することから、ハンドルを切った時点から鋭角に近い角度でタイヤが軌跡を描きます。つまり、狭い駐車スペースでもまっすぐに停めやすくなります。

日本の駐車スペースは、隣の駐車スペースとの距離も近く、面する通路も狭いので、ルーズな駐車が物理的に許されません。

国民性の観点から見ても、お弁当、盆栽、小型化といった縮小させる文化を持ち、細かい手作業を苦としないのが日本人です。いかに狭い駐車場に上手に駐車させるかに、闘志を燃やす人も少なくありません。

ますます狭くなる日本の駐車場

日本の駐車場が狭い理由に、都市計画が江戸時代にはすでに完成していたという事情もあります。

戦後の都市復興でも都市の基本形は戦前と変わらず、その復興期も日本のモータリゼーションの20年前です。現在の街は、自動車を考慮していないといえます。

それでも「5ナンバー規格」という独自規格で乗り切ってきた日本の都市計画ですが、国産自動車メーカーのグローバル化、輸入車の普及により、車体が肥大化し、特に全幅が広くなり5ナンバー規格にとどまる自動車はコンパクトカーくらいです。

相対的にますます狭くなる日本の駐車場に対応するには、バック駐車のスキルを身につけることがベストなのでしょうね。