なぜノーズが長いコンパクトカーが増えているのか?

ホンダ シティ

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コンパクトカーのスタイルといえば、ショートノーズ、ロングルーフが定番でした。これは、小さい車体でもより広くより快適な居住性を確保し、ファミリーカーとしての用途で「大人4人が楽々座れる」といったキャッチコピーで売り出していたためです。

しかし、最近は、コンパクトカーのジャンルに入るクルマでも、ノーズが長くなってきています。
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コンパクトカーの宿命「ショートノーズ・ロングルーフ」
コンパクトカーなのにロングノーズ?
ロングノーズ化する理由とは?

コンパクトカーの宿命「ショートノーズ・ロングルーフ」

ノートやフィット、ヴィッツといったコンパクトカーは、全長を短くしつつも、ファミリーカー用途として4人無理なく乗れる居住性を確保する必要がありました。

そこで、できる限りエンジンルーム部分の長さを短くし、そしてテールエンドを垂直に立たせることで、人間の居住空間であるデッキ部分の長さを確保するというのが定番なデザイン手法です。ホンダがシビックやシティ、トゥデイで実践した「マン マキシマム・メカ ミニマム」も同じ考え方です。

かつて、車は一家に一台で、家族四人で遠出もこなさなければならず、人も乗れて、荷物も積める、小回りも効いて、それでいて安い、そんなクルマが重宝されました。

今でも軽自動車ではこの流れが強く、タントやNBOXといったトールサイズの軽では、高さを活かしてエンジンルームの長さを極限まで短縮し、さらに前後左右ともに垂直に切り立ったスタイルとすることで、幅と奥行きを確保。軽自動車なのに普通車よりも断然広い室内空間を保っています。

買う側の心理としても、室内の空間が広い方が良いと思う傾向がありますので、これは自然の流れだったといえます。とはいえ、小型車クラスのコンパクトカーでも、日産のノートなど、ショートノーズ、ロングルーフをデザインに採用しているクルマは存在します。

コンパクトカーなのにロングノーズ?

しかし、最近は、コンパクトカーのセグメントのクルマでも、ノーズの長いクルマが増えてきました。

こちらの写真は、マツダ デミオの新旧比較。2代前と現行型を比べられるように並べています。全長や写真の縮尺が異なるため単純な比較はできませんが、車体全長に対するノーズの割合が明らかに伸びているのがお分かりいただけるかと思います。

さらにデミオの場合はリアも現行型は丸みを帯びたデザインとなっているため、居住空間や荷室は相対的に小さくなっています。

このような傾向は、マツダではCX-3、スバルではインプレッサにも現れており、また欧州車ではプジョーやルノー、ゴルフなどにも見られます。せっかく小さく作っているのに、なぜエンジンルーム部分を延ばすのか。軽で培った技術をフィードバックすればかなり短くできそうですが…。

ロングノーズ化する理由とは?

ロングノーズ化するメリットを考えてみましょう。

最近ではクルマは衝突安全性を非常に高いレベルで求められています。また、歩行者の被害を如何に軽減するかも課題です。安全性という面で、ロングノーズ化は「緩衝エリアの拡大」という観点で有利に働きます。

ロングノーズ化すると、デザイン的にフロントガラスの傾斜をつけやすくなるため、歩行者が衝突した際の衝撃が緩和されやすくなることから、歩行者被害の軽減にもつながります。

次のメリットとしては、「空力が良くなり、燃費や高速安定性が向上する」ということが挙げられます。エンジンフードからフロントガラスへ向かって流れるようなデザインとできることで、空気の流れが良くなり、空気の抵抗が減ります。空気の抵抗が減れば燃費にもよい影響を与えますし、高速走行時の安定性も向上します。これが第二のメリットです。

そしてなんといっても一番のメリットしては、デザインを良くできるということになります。ファミリーカーからパーソナルカーへとコンパクトカーの用途が変わっていくにつれ、よりかっこよい、よりスマートなクルマが求められるようになりました。以前はお父さんが買う車だったのが今は若い世代が購入層としてのターゲットですので、そういった世代にアピールできるデザイン性が求められています。そのため、ボリューム感やスピード感を表現する手段として、ロングノーズを取り入れていると言えるでしょう。
以前はファミリーカーだったコンパクトカー。居住性が求められていましたが、今はその購入層や用途の変化、また社会からの要請の変化などから、デザインや燃費、安全性にも配慮する必要が増大しました。そのことがコンパクトカーのデザインを変容させていると言えます。

今後クルマを購入される際には、自分の用途や利用シーンを念頭に、デザイン性の高いものを取るか、居住性や積載性を取るか、考えてみてもよいかもしれませんね。
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