AT車の「N」モード、古い車で低回転走行など…燃費に貢献しない間違ったエコドライブとは?

ドライブ(足成・あけぼの撮影)

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「たぶんこうすると燃費が良くなるだろう」と思ってやってるエコドライブには、「本当にそんな気がするだけ」なものも多いです。何が正しいかは車によっても異なりますが、明らかに間違っているものやそれどころか危険なものも。今回はそのようなエコドライブを解説します。
Chapter
オートマ車の「N」(ニュートラル)は無意味どころか危険
最近の車は暖気不要かと言えば?
燃費計の数値を良くするのが正しいとは限らない
古い車で無理にエコドライブを行うのは逆効果

オートマ車の「N」(ニュートラル)は無意味どころか危険

赤信号で止まっている時など、オートマ車で「N」に入れてみます。駆動力が切断された状態の車は、何となく振動も少なくなり、抵抗が減ったような…もしかしてエコ?思ってしまうところですが、そのようなことはありかせん。

エンジンが回っている以上は燃料を消費していますし、タコメーターがついている車なら、回転が下がる事も無いのがわかります(抵抗が減った事で、むしろ上がる場合も)。燃費には何の影響も与えないどころか、発進時にNに入れたままなのを忘れて空ぶかし、慌ててDに入れて危険な急発進…と、何もいいところがありません。

また、走行中のNレンジ、特に下り坂でのNレンジも無意味どころか燃費が悪化する上に、危険。それで燃費が良くなるなら…と思っても、もう何十年も前から電子制御インジェクション(燃料噴射装置)のエンジンは、スロットルを閉じているのに回転数が上がるような状況では燃料をカットする制御を行っており、今では全ての車がそうなっていると行っても過言ではありません。つまり燃費対策としては無意味。

さらにNレンジに入れている以上、エンジンブレーキが効きませんからフットブレーキ頼りになります。長い坂道でエンジンブレーキを使わない危険については言うまでも無い話で、フットブレーキの加熱や摩耗だけでなく、緊急回避でアクセル操作が求められた時のタイムラグはどうしようもありません。

フットブレーキが回生ブレーキとなって充電するハイブリッド車でも、緊急回避の必要性は変わらないので、Nに入れるべきではないのです。

オートマ車のNレンジは、事実上「レッカー車による牽引」や「エンスト時に人力で押し出す」など、緊急時のみの使用と考えた方がいいでしょう。

最近の車は暖気不要かと言えば?

ここ10年ほどで自動車用エンジンの組み立て精度が上がり、暖気運転は不要という考え方が主流になってきています。確かに、EV走行が可能なハイブリッド車の中には暖気しようにもバッテリー残量が少なくなるまでエンジンがかからないものもありますし、アイドリングストップ車など走り出すまでエンジンがかからないものもあります。

そうした車は暖気運転そのものができないのですから、もう暖気運転しない!という前提にあると思っていいでしょう。

それでは暖気運転が全く無用かと言えば、そうとは言い切れません。「暖気」とは単純にエンジンだけを暖めるものではなく、ミッションやデフなど駆動系の負担を減らす効果もあります。

もっとも、ただ止まってエンジンの熱で暖めようにも、前述のようにエンジンがかからない車も多いですし、止まっているだけでは駆動系は動かないので、中のオイルの攪拌などもできません。

正解には「ゆっくりと動かして駆動系をなじませる」で、家の前がいきなり流れの良い道路で急加速を余儀なくされるならば仕方がありませんが、そうでなければ極力、走り出しは徐行で少しずつ車の目を覚ましてあげるのが良いでしょう。

人間で言えば、運動前の準備体操のようなものですね。

燃費計の数値を良くするのが正しいとは限らない

信号が青になった時、燃費計を見ながらジワジワと加速する車をたまに見かけます。もしかすると、その人の車だけは最高の燃費で次に赤信号で止まるまで走り続け、アイドリングストップでガソリンを消費しないので満足、と思っているかもしれません。

では、そこで視点を少し変えてみましょう。その車の後ろには、たくさんの車が数珠つなぎになっているかもしれません。

もっと高い視点から見てみましょう。その後ろでは、流れが悪くなった道路で滞留した車が、渋滞を起こしているかもしれません。それらのほとんどがハイブリッド車やアイドリングストップ車であれば問題も少ないのですが、あいにくまだそういう世の中にはなっていません。

結果として、1台の車のエコドライブが、他の多くの車の燃費や排ガスの著しい悪化を招いている可能性もあるのです。かといって、とにかくガンガン飛ばせという事では無く、ただ普通に交通の流れも重視して、流れの良い道路だけでも制限速度近くまでは通常の加速を行うだけで良いのです。

「一台の車のちょっぴりの燃費悪化が、多くの車の燃費を向上させる。」たくさんの車が行き交う公道では、それもまた一つの真実だと思います。

古い車で無理にエコドライブを行うのは逆効果

今のように燃費を最重視という時代以前の車で、エコドライブをすることの多くは逆効果。ジワジワと発進してタコメーターを睨みながら極力低回転で走ったとしても、それがその車にとって「非効率」な場合もあります。

CVTと電子制御スロットルによる協調制御をしている車のタコメーターを見ていればわかりますが、常に低回転で一定ではありません。その時、その速度によって最適な回転数を目指して常に変動しているわけで、基本的な理屈は昔の車でも同じです。

勝手に制御してくれるわけではないので、どのように加速して、どのような回転数で走ればいいかの回答は自分で燃費データなどを蓄積して考えるしかありませんが、闇雲に「アクセルを踏まなければエコ」という考え方は無駄にストレスを貯めるだけなのでやめた方が良いです。

アイドリングストップも同様で、現代のようにアイドリングストップを前提としてバッテリーを強化したり、あるいはセルモーターに頼らないエンジン始動を行う車とは違います。

昔の車でやたらとアイドリングストップを行うと、セルモーターやバッテリーの負担が激しく、不足する発電量を補うためにエンジンの負担も増えて燃費が悪化したり、電圧低下でスパークプラグの火花が弱くなり、パワーダウンを起こすなどのデメリットもあるのです。

ただ普通に発進し、巡航速度に載せたら高いギアでスロットルを極力一定のまま流すだけで十分エコドライブになるのですから、見るべきはタコメーターではなく、スロットルを一定に保つための適正な車間距離ということになります。

どの時代の車かによって、何がエコドライブに繋がるかは変わってきますから、自分の車にとっての最適解を探してみてください。
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