生産台数419台のフェアレディZ432…搭載されたS20エンジンは何が良かったのか?そのエンジン音は?

直列6気筒エンジンと言えば、車好きなら一度は乗ったことのある、もしくは乗ってみたいレイアウトではないでしょうか。第2世代のスカイラインGT-RのRB26DETTやBMWのシルキーシックスなど、フィーリングや排気音質は4気筒やV型とも異なる正統派の魅力を備えています。

国産車の中で、伝説の原点となった直6と言えば日産のS20。もはや若い世代の方はその名を聞いてもピンと来ないかもしれませんが、生粋のエンスーな方ならご存知の方も多いかもしれません。今回はハコスカGT-R、フェアレディZ「432」に搭載されたS20直列6気筒エンジンの魅力を振り返ってみたいと思います。

Chapter
初代フェアレディZ 432とはどんな車か
20年サイクルでもたらされる変革
S20エンジンが持つ魅力とは
S20とフェアレディZのボディ

初代フェアレディZ 432とはどんな車か

フェアレディZ 初代 S30

初代となるフェアレディZ S30型の登場は1969年までさかのぼります。それまでフェアレディの名を冠したモデルは存在しましたが、ルーツとなる先代モデルは1500ccの4気筒エンジンを搭載したオープンカーでした。

S30の発案は米国日産の片山豊社長でした。当時はスポーツカーの需要が不明確だったため、日産本社は否定的な態度だったようですがアメリカでのマーケットを察知した片山社長は動きました。

ジャガー Eタイプの様なスポーツカーをデザインイメージとし、既存のコンポーネントを駆使することで、先発のジャガーやポルシェに対抗できる性能を持ち、かつ購入しやすい価格設定のフェアレディZを世に送り出したのです。あえて高回転でない実用的なSOHCエンジンを搭載。アマチュア精神にあふれ、愛されることになったフェアレディZはここから始まったのです。

そんな初代ZもレーシングシーンではGT-Rと同じ珠玉のエンジン「S20」を搭載して活躍しました。432の名称は4バルブ・3キャブレター・2カムの由来となりました。

20年サイクルでもたらされる変革

ダットサン240Z(S30)

1969年以前の車はモノコックではなくフレーム構造で、ミッションも4速どころか3速、2速だったり、軽自動車でもないのに排気量は1000cc未満など、現代では想像もつかない車がたくさんあった時代でした。もはやオースチンヒーレーと見間違う勢いのノスタルジックなデザインばかりです。

自動車は概ね20年くらいで大きな変革を遂げる傾向があります。89年のR32GT-Rの登場で280馬力規制などの様な圧倒的なスペックの世代交代が生まれ、2008年の境目ではR35GT-Rによるさらなるハイパワー時代の幕開けとともに環境性能にも配慮した車づくりが求められました。

1969年のフェアレディZの登場はこれらと同じ様にデザイン面で新しい時代の到来を告げるとともに、100馬力を優に超えるエンジンの搭載など、それまでとは決別した「新しい時代」の車だったと言えるのではないでしょうか。

S20エンジンが持つ魅力とは

標準モデルに搭載されるL型エンジンとは異なり、高回転高出力を前提としたS20エンジンはあらゆる点で特別でした。

「432」の名称から読み取れる様に、SOHCエンジンとは異なりツインカムとなる事で4バルブ化し、ヘッド構造自体もターンフローからクロスフローに。キャブレターを気筒数分に対応できる3連装とすることで高回転に対応した装備が盛り込まれました。

しかし、最も異なる点は432の心臓ともいえるエンジンの「腰下」部分でしょう。ベースエンジンより0.2㎜少ないストロークはギリギリまでボーリングされる事を想定したレーシング向けのマージンであったり、冷却水の経路も各シリンダーに配される様に工夫されたりするなど、最終的に2000ccながら250馬力、9000回転まで耐えられる内容だったのです。

2000ccで250馬力というとホンダS2000が全く同一ですが、6気筒と4気筒の違いはあれど、約30年の時代差を飛び越える性能は驚愕ものです。F1を経験したホンダが到達したスペックをこの時代に送り出した日産のエンジニアの努力は並々ならぬものだった事でしょう。

こちらは432に搭載されたS20エンジンのサウンドです。

S20とフェアレディZのボディ

スカイライン C10

S20エンジンはハコスカGT-Rのエンジンと言うイメージが強いのではないでしょうか。ですが、フェアレディZ432にはハコスカにはない優位性も。

ハコスカに対して約100㎏も軽量な車体は、回転半径も50㎝ほど小さくコーナリング性能が良いことに加え、ボディ形状のおかげで空力性能も優れていました。スカイラインとフェアレディZで、その役割が異なる事は現代においても変わりはありません。しかし、間違いなくS20エンジンとフェアレディZの組み合わせは他にはない価値を持ち合わせています。

現代の日産には直列6気筒エンジンは存在しません。他メーカーでもV型への移行が進み、直6は今や少数派のエンジンとなってしまいました。しかし、RB26やシルキーシックスのBMWの様に一時代を築いた「直6」の功績は、今後も語り継がれることでしょう。