ジャガーXEは、ドイツ御三家(ベンツ、BMW、アウディ)に殴り込みをかけた"ゲームチェンジャー的"スポーツセダン

スポーツサルーンを再定義する「ゲームチェンジャー」を掲げて登場した現行ジャガーXEは、欧州プレミアムDセグメントに分類されるモデル。メルセデス・ベンツCクラス、BMW3シリーズ、アウディA4という、ドイツプレミアム御三家が長年の間、激戦を繰り返してきたマーケットに参入した意欲作だ。2020年夏で登場から約5年が経ち、熟成の域に入っている。その歴史やパワートレーンの違いなどを改めて振り返ってみよう。

文・塚田 勝弘

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ジャガーXEは、スポーツサルーンを再定義する「ゲームチェンジャー」
ジャガーXEは、ジャガーXタイプの後継者的スポーツセダン
ジャガーXEは、ボディの約75%をアルミ化した意欲作
ジャガーXEは、Fタイプ由来のスポーティな内外装に変身した
ジャガーXEは、デビューから5年経っても色あせない魅力がある

ジャガーXEは、スポーツサルーンを再定義する「ゲームチェンジャー」

メルセデス・ベンツCクラス、BMW3シリーズ、アウディA4という、ドイツプレミアム御三家は、それぞれ熱烈な顧客を抱えていて、その市場を大きく奪うのは容易なことではない。

2015年6月に行われた日本での新型ジャガーXEの発表会では、ブランドアンバサダーの錦織 圭選手がビデオ出演し、ジャガーXEは自動車業界、錦織選手はもちろんテニスで、「共にNO.1を目指しましょう」と語っている。

男子プロテニス界で日本人男子初となるランキングトップ10入りを実現した同選手は、ジャガーFタイプやXFスポーツブレークのプレス発表会でも拝見したが、スーツの上からも引き締まった肉体の持ち主なのが伝わってくる。

ジャガーXEも強豪ひしめく欧州プレミアムDセグメンで存在感を発揮するのは、確かに「ゲームチェンジャー」になるくらいの意気込みが必要なのだろう。

ドイツプレミアム御三家だけでなく、アルファロメオ・ジュリア、フォルクスワーゲン・パサートや新型ボルボS60、レクサスGSやESなど、駆動方式やプレミアムであることを問わなければ、Dセグメントのライバルは数多い。

ジャガーXEは、ジャガーXタイプの後継者的スポーツセダン

ジャガーXEは、現行モデルは初代だが、ミドルサイズでは、2001年から2010年まで販売されていたジャガーXタイプの後継的存在といえるだろう。当時は、フォード傘下であったため、モンデオとプラットフォームを共有。

ジャガーらしい内外装は与えられ、4WD化されていたものの(FFモデルも追加された)、走りや質感に関しては同ブランドの熱烈なファンからは、「ジャガーらしくない」など、芳しくない声も聞こえてきたように思える。

ジャガーに限らず、フォード傘下にあったメーカーは、企画から調達、生産まで多くの恩恵を受けてきた反面、フォードの徹底した合理性の追求という姿勢もあり、各ブランドの個性をいかに発揮するかに苦労してきたのも事実だ。

フォード傘下を離れ、インドのタタ・モーターズの傘下に入り、送り出されたジャガーXEは、開発の柔軟度合いが高まり、ジャガーランドローバーが得意とするアルミ製モノコックボディなどを武器に「ゲームチェンジャー」になるべく投入されたわけだ。

ジャガーXEは、ボディの約75%をアルミ化した意欲作

XEは、2014年の「ファーストエディション」に続き、2015年の「アドバンテージエディション」などの導入記念モデルに続き、先述したように、2015年6月に導入された。

Dセグメントでありながらボディの約75%をアルミ化することで、軽量化・高剛性化し、運動性能や燃費性能を高めるべく誕生している。

アウディ A4

なお、現行Cクラスは、ボディシェルの約50%をアルミ化し、現行BMW3シリーズは、ボンネットフードやフロントフェンダー、フロントサスペンションタワー、エンジンサブフレームなどにアルミを使っている。

また、現行アウディA4は、スチールとアルミの複合材料を使い、モジュールクロスメンバーにアルミ押し出し材、シートアルミを採用。さらに、フロントのクロスメンバーにもアルミの押し出し材を、フロントストラットの軸受け部分は、鋳造アルミ製になっている。

ライバルと比べてアルミの比率が高いジャガーXEは、軽やかなフットワークとしなやかな乗り心地を得ていて、フロントがダブルウイッシュボーン、リヤがマルチリンクという仕立てになるサスペンションの仕上がりもデビュー当初から、まずは上々といえる出来映えだった。

また、ジャガー初となる車速感応式電動パワーステアリングの違和感も電動パワステの中では少なく、軽快感のあるフットワークを阻害する要因でないことも走りの良さを印象づけている。

発売時のエンジンは、ガソリンエンジンが直列4気筒、V型6気筒で、ジャガー初となる「INGENIUM(インジニウム)」ディーゼルエンジンも設定。なお、「インジニウム」エンジンは、ガソリン、ディーゼルを問わず、ジャガーが自社開発したパワートレーンのことで、モジュール化することで、コストと開発期間の圧縮が図られた最新世代エンジンだ。

ガソリンは2.0Lの直列4気筒ターボが最高出力200PS/最大トルク320Nm仕様、240PS/340Nm仕様があり、3.0L V6スーパーチャージャーを搭載する「XE S」は、340PS/500Nmを誇っていた。駆動方式は、ドイツプレミアム御三家に対抗すべくFRが基本で、2017年には「インテリジェント・ドライブライン・ダイナミクス」を備えたフルタイム4WDも加わっている。

さらにジャガー史上、最もハイパフォーマンスを誇る「XE SV PROJECT 8」も登場した。最高出力600PS/最大トルク700Nmに達する5.0L V8スーパーチャージャーは、最高速度は約322km/h、0-100km/hは3.7秒という俊足ぶりを誇った。

ジャガーXEは、Fタイプ由来のスポーティな内外装に変身した

2020年モデルとなる最新仕様では、ジャガーのピュアスポーツカーであるFタイプ由来となるデザインが内・外装に与えられ、デビュー時の「スポーツサルーンを再定義する」コンセプトがさらに先鋭化されている。

快適装備では、「ワイヤレス・デバイス・チャージング」がジャガーランドローバーとして初採用され、スマホが容易に充電できるようになった。また、安全装備では、車体後方のカメラで撮影した映像をルームミラーに映しだす「ClearSightインテリア・リアビュー・ミラー」がジャガーで初採用されたほか、「レーン・キープ・アシスト」や「ドライバー・コンディション・モニター」などの運転支援システムを全車に標準装備するなど、ライバルと同等以上の標準装備の充実化も推し進めている。

さらに、2020年モデルでは、新グレードの「R-DYNAMIC」も加わり、グレードは全部で17タイプと非常に充実している。同イヤーモデルのエンジンは、2.0L直列4気筒ターボのINGENIUMガソリンが250PS/365Nm版、300PS/400Nmの2種類。同じく2.0L直列4気筒のINGENIUMディーゼルターボは、180PS/430Nmというアウトプットになる。

これは、ジャガーXEに限らないものの、街中中心で走行距離が比較的短く、静粛性も重視するのであれば、250PS/365Nmの2.0Lガソリンで動力性能は十分といえる。さらに、高速道路でのパワー、快適性を重視するのなら300PS/400Nmを選択する手もあるだろう。

また、スポーティな見た目を重視するのなら全エンジンバリエーションに設定される「R-DYNAMIC」が適任だ。

こちらには、エアロダイナミクス性能を高めるボディラインやダークメッシュ仕上げになる専用フロントグリルなどが用意され、内装にはコントラストステッチ付スポーツスタイルシートやサテンクロームのギアシフトパドルなどが備わっている。

一方、430Nmを誇るディーゼルエンジン車は、1660kg〜1740kgと、ガソリン車の1660kgとグレードによっては変わらないため、分厚いトルクをそのまま享受できる。低速域ではディーゼルエンジンらしい音・振動が伝わるものの、ガソリンモデルとは異なる中・低速域の力感は非常に魅力的。

それでいながらフットワークにもほとんど悪影響を与えていないため、高速道路からワインディングまで身を任せるには最高だろう。高速巡航の機会が多く、ストレスフリーな加速を味わうのであればディーゼルエンジン仕様を選択したい。

ジャガーXEは、デビューから5年経っても色あせない魅力がある

ドイツプレミアム御三家は、長年のお得意さんを抱える強力なライバルであり、新型にスイッチしたボルボS60など、FF系モデルも加えると、欧州Dセグメントの競争は依然として激しいものがある。

カタログモデルのデビューから5年が経とうしているジャガーXEは、マイナーチェンジで「Fタイプ」テイストのデザインを得たことで、スポーツ度合いを高めた。英国生まれのスポーツサルーンは、今が最も旬を迎えているといえるかもしれない。

塚田 勝弘|つかだ かつひろ

自動車雑誌、モノ系雑誌の新車担当編集者を約10年務めた後に独立し、フリーランスライターとしても10年が経過。自動車雑誌、ライフスタイル雑誌、Web媒体などで新車試乗記事やカーナビ、カーエレクトロニクスなどの展開している。

塚田 勝弘|つかだ かつひろ