レクサス CTは欧州に存在感を示すために産まれたハイブリッド専用車!

レクサスCT

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レクサス CTは、同ブランド初のハイブリッド専用モデルとして2011年1月に発売された。CTは「Creative Touring」の略で、2020年で9年目を迎えた長寿命モデルだ。

欧州Cセグメントのハッチバックとして、前年の第80回ジュネーブモーターショーにおいて世界初公開されたことからも分かるように、欧州の普及価格帯モデルであるCセグメントで存在感を示すべく投入された。その中身を改めて探ってみよう。

文・塚田 勝弘

塚田 勝弘|つかだ かつひろ

自動車雑誌、モノ系雑誌の新車担当編集者を約10年務めた後に独立し、フリーランスライターとしても10年が経過。自動車雑誌、ライフスタイル雑誌、Web媒体などで新車試乗記事やカーナビ、カーエレクトロニクスなどの記事を展開している。

塚田 勝弘
Chapter
欧州Cセグメントに投入されたハイブリッド専用車
なぜハッチバックなのか?
30プリウスと同じハイブリッドだが専用セッティングを施す
パワートレーンや駆動方式は1つ!グレードは4つ!
エントリーグレードの「CT200h」は?
コスパに優れる「“version C”」
押し出しの効いた顔つきが目立つ「F SPORT」
豪華仕様の「“version L”」
次期レクサス CTは?現行型は買いか!?

欧州Cセグメントに投入されたハイブリッド専用車

レクサスは、1989年にアメリカで展開し、2005年に日本でもビジネスを開始した。日本1号店であるレクサス高輪のオープンに伴い、報道陣に公開された際に筆者も取材する機会を得たが、レクサス流の「おもてなし」を確立し、さらにブラッシュアップを続ける姿勢に感銘を受けた記憶が鮮明に残っている。

今でこそ洗練されたショールームは珍しくないが、それまでのメルセデスベンツやBMW、アウディという、ドイツのプレミアム御三家とは異なった雰囲気の店舗作りや、時間はかかってもいつかは受け入れられるはず、という手応えらしきものもスタッフの佇まいから伝わってきたように記憶している。
それでも、「ブランドは一日にして成らず」というフレーズがあるように、その確立は容易にはいかなかった。米国での成功は、合理的なモノ選びをする同国の国民性が背景として必ずあるはずだ。 

また、欧州には1990年にレクサスを投入するも先述したプレミアム御三家などの厚くて高い壁に阻まれ、思うようにはいかなかったと聞く。そのため、トヨタ(レクサス)の強みである、「ハイブリッド」をはじめ、先鋭と精妙の美を追求した「L-finesse」という、デザインフィロソフィーを掲げて時間を掛けながら知名度向上を図っていった。

なぜハッチバックなのか?

その欧州市場をさらに開拓する1台として投入されたレクサス CT(発売当時はレクサス CT200h)は、トヨタの強みであるハイブリッド専用モデル。そして欧州Cセグメントの王道的なスタイリングである5ドアハッチバックとして投入された。

フォルクスワーゲン ゴルフ・アウディ A3・BMW 1シリーズ・メルセデスベンツ Aクラスなどの御三家だけでなく、フォード フォーカス・プジョー 308・アルファロメオ ジュリエッタなどがひしめく同セグメントでレクサスらしい個性を出すのであれば、ハッチバックでありハイブリッド専用モデルというのは理解できる戦略だろう。

30プリウスと同じハイブリッドだが専用セッティングを施す

車体は、CセグメントのFFモデル用である「MCプラットフォーム」がベースで、ハイブリッドシステムは3代目プリウスのそれと同じではあるが、CT200向けにリファインされている。

搭載されるのは、直列4気筒の1.8Lアトキンソンサイクルエンジンで、ハイブリッドシステムや横滑り防止装置の「VSC(Vehicle Stability Control)」、電動パワステの「EPS(Electric Power Steering)」の制御を変更するなど、よりスポーティな走りが可能になるセッティングが施された。

トランスミッションは、電気式無段変速機が組み合わされている。
その後、日本では2014年にマイナーチェンジしてお馴染みの「スピンドルグリル」を採用。2017年のマイナーチェンジでは、最新デザインのスピンドルグリルが与えられ、内・外装の意匠と質感を磨き上げると共に、先進安全装備である「Lexus Safety System +(レクサスセーフティシステムプラス)」が標準装備されている。

パワートレーンや駆動方式は1つ!グレードは4つ!

CT200h誕生の背景や変遷はこれくらいにして、現在の日本仕様のラインアップを確認してみよう。ハイブリッド専用車なのでパワートレーンは1つのみ

グレードはベースモデルの「CT200h」、中間グレードの「CT200h “version C”」、スポーティグレードの「CT200h “F SPORT”」、ラグジュアリー仕様の「CT200h “version L”」が用意されている。

エントリーグレードの「CT200h」は?

エントリーグレードのCT200hでもリアスポイラーなどによるスポーティテイストが盛り込まれている。しかし、アルミホイールは樹脂カバー付でタイヤも195/65R15と、16インチや17インチになる上位モデルと比べるとおとなしい見栄えとサイズが与えられている。

一方で、先述したように先進安全装備の「Lexus Safety System +」が全車標準化されているため、安全装備でオプションから追加するとしたら「クリアランスソナー&バックソナー」くらいだろう。インテリアでは、シートがマニュアル調整式になるほか、シート地はファブリックのみとなる。

せっかくのレクサスに乗るのであれば、「“version C”」以上をチョイスしたいところだ。

コスパに優れる「“version C”」

一方で、レクサスのエントリーモデルでもあるCTだけに、予算はできるだけ抑えたいというニーズもあるだろう。「“version C”」はヤマハ製のパフォーマンスダンパー、切削加工が施されたアルミホイールと、205/55R16タイヤを履くなど、走りの面でも足まわりの見た目でもより上質感が追求されている。

シートはファブリックが標準だが、ファブリック/L texシート(合成皮革)をオプション設定している。触感と風合いは本革に近く、同ブランドらしい高級感を重視するのであれば選択したいシートだ。

押し出しの効いた顔つきが目立つ「F SPORT」

専用スピンドルグリル、専用リアバンパーとスポイラーをまとう「“F SPORT”」は、パフォーマンスダンパーに加えて、専用チューンが施されたサスペンションを装着する。
なお、レクサスCTは、フロントがマクファーソンストラット、リアがダブルウィッシュボーンというサスペンション構成。新型メルセデスベンツ Aクラスは、基本的に(導入エディションなどの一部をのぞく)リアサスペンションがトーションビームで、7代目ゴルフも1.2Lエンジン搭載車のリアサスはトーションビーム。

かつて、初代フォード フォーカスがリアにマルチリンクを使った際にはライバルも追従していたが、現在はパワートレーンやグレードなどによる使い分けが進んでいる。確かに、サスペンション形式でフットワークや乗り心地が決定的なものになるわけではなく、安価な形式でもしたたかな路面追従性や操縦安定性を披露するクルマはある。

それでもレクサス CTが「9年選手」という長寿命モデルになっても走りに古くささを感じさせないのは、おそらくサスペンションの熟成が進んだのと、比較的高価(手の込んだ)な足まわりを採用しているというのもあるはずだ。
そのCTにあって「“F SPORT”」は、スポーティな乗り味を示す上に先述したエクステリア、専用ディンプル本革ステアリング・専用スカッフプレート・専用オーナメントパネルの加飾。専用アルミ製スポーツペダル&フットレストなどにより、レーシーなムードを醸し出している。

パワーソースは、「“F SPORT”」の割には物足りない面もあるかもしれないが、結構な速度で高速道路を飛ばす30プリウスがいるように、「意外に走る」というモデルでもある。

豪華仕様の「“version L”」

最もラグジュアリーな「“version L”」は、215/45R17 タイヤにパフォーマンスダンパーを備え、オート電動格納式ドアミラーや、運転席ポジションメモリーと前席シートヒーター付の本革シートを標準装備するなどの豪華装備が特徴だ。

インテリアカラーもシックな2トーンカラーが用意されていて、小さな高級車というテイストが濃厚に漂う。駐車場や道路事情などから、大きなクルマには乗れないけれど、チープなモデルは嫌というニーズに応えてくれる仕様といえるだろう。

次期レクサス CTは?現行型は買いか!?

さて、次期レクサス CTは、ハッチバックからSUVになり、ハイブリッドからEVになるという予想記事も流れている。世界的なSUVブーム、そして電動化車両の中、エミッションの面からも少しずつでも着実に増やす必要がある「ピュアEV」になるというものだ。

どうなるかは分からないが、ハイブリッド専用車として敷居の高かった欧州市場などを切り拓いてきたCTだけに、先駆的な役割が与えられても不思議ではなさそう。また、現行モデルも熟成の極みに達していて、数少ない国産プレミアムハッチバックとして指名する手もアリかもしれない。
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