BMW 523d M Sport・523d xDriveツーリングM Spirit試乗!完璧すぎる高性能マシンなのに唯一足りていない点とは何か?【新型車インプレッション】

高級セダンの代名詞ともいえるBMW 5シリーズ。内外装のセンスの良さとクオリティの高さだけでなく、ハンドリング・高速直進性・乗り心地・静粛性・動力性能など、動性能すべてが磨きこまれたセダンとして、代々ユーザーから支持されてきました。

現行モデルのG30型5シリーズもまた、そのポテンシャルは引き継ぎつつ、最新の先進安全技術によるセーフティも搭載し、「ビジネスアスリート」なるコンセプトで登場したクルマです。今回は、ハンドリングや乗り心地、ロードノイズといった走りについて解説します。

文・吉川 賢一/写真・鈴木 祐子

Chapter
操縦安定性【旋回性能・高速直進性】
乗り心地性能
ロードノイズ
エンジンのフィーリング

  BMW 523d(セダン) BMW 523d xDrive(ツーリング)
グレード M sport M spirit
全長×全幅×全高 [mm] 4,945×1,870×1,480 4,950×1,870×1,480
ホイールベース [mm] 2,975 2,975
車両重量 [kg] 1,700 1,840
駆動方式 後輪駆動 四輪駆動
エンジン排気量 [cc] 1,995 1,995
エンジン最高出力 [kW(ps)/rpm] 140(190)/4,000 140(190)/4,000
エンジン最大トルク [Nm(kgm)/rpm] 400(40.8)/1,750-2,500 400(40.8)/1,750-2,500
トランスミッション 電子油圧制御式8速AT 電子油圧制御式8速AT
フロントサスペンション ダブルウィッシュボーン式 ダブルウィッシュボーン式
リアサスペンション マルチリンク式 マルチリンク式
フロントタイヤ ミシュラン PRIMACY3 ZP RF 245/40R19 98Y ミシュラン PRIMACY3 ZP RF 245/45R18 100Y
リアタイヤ ミシュラン PRIMACY3 ZP RF 275/35R19 100Y ミシュラン PRIMACY3 ZP RF 275/40R18 99Y
燃費 [km/L] 21.5 [JC08] 15.8 [WLTC]

操縦安定性【旋回性能・高速直進性】

セダンは、走り始めはごく軽めの操舵力ですが、速度を増していくと、徐々に操舵力が増していきます。常時、適切で軽い操舵力特性にしつけられたEPSは、どのコーナーであっても軽やかにやり過ごします。

車幅1,870mm×全長4,900mm以上もあるラージボディですが、アクティブステアの恩恵もあり、その大きさを感じません。高速直進性も恐ろしく高く、LKASが無くてもまっすぐ走りやすいです。快適過ぎて「BMWらしさはどこにある?」と思ってしまうほどです。

対するツーリングは、フル転舵量がセダンよりも多く、ギア比がスローに設定されています。荷崩れを起こさないよう、多少ゲインを落とした設定とも取れますが、キビキビする印象は感じられません。その分、修正操舵時のクルマの動きが小さく済みますので、高速直進性はより高く感じます。

乗り心地性能

セダンが装着するのは、19インチの幅広扁平タイヤ。フロント245の40扁平、リア275の35扁平のタイヤは、見ためからも「薄く硬い」印象がありますが、突起など乗り越しのショックレベルは、19インチのランフラットタイヤを装着しているとは思えないほどです。突起のインパクト音は多少ありますが、低周波で抑えられており、耳障りな印象がありません。 

また、うねりのある路面を乗り越えた際のボディモーションも、コンフォートモードであっても小さく抑えられており、フワフワした印象は一切なく、ダンピングの効いた乗り心地です。

ツーリングもほぼ同様の印象があります。なお、ドライブモードをスポーツプラスにすると、更に足の引き締めが強まり、路面突起の情報がよく伝わるようになります。ボディモーションをさらに規制し、動きがシャープになるため、ひとりでのドライブであれば積極的にこちらを選びたいと感じました。

ロードノイズ

車速60km/hまでの中低速では、ロードノイズはほとんど聞こえてきません。ディーゼルエンジンの音も、車速30km/hを超えるとほとんど気にならなくなり、ごく静かな状態になります。車速を上げて100km/h程度になると、低い音質で「コー」と聞こえますが、遠くで鳴っているかのような印象の音です。

常にノイズが低周波側に押さえられているらしく、耳障りな音が出ません。これが、18インチのツーリングも、19インチのセダンでも印象が変わらないのが凄いところ。遮音や車体の音感度、サスペンションブッシュなどの特性…音の侵入経路に対して、しっかりとした対策が施されたことが効いているのだと、推測します。

エンジンのフィーリング

2.0L 直列4気筒ディーゼルの40.8kgmもの太いトルクは、1,700kgにもなるセダンボディを軽々と加速させてくれます。アイドルやスタート時こそ、コロコロという音が聞こえますが、車速が30㎞/hを超えると、ほぼ気にならなくなります。

レッドゾーンは5,500rpm。しかし、そこまでエンジンを回すシーンはほぼなく、3,000rpmあたりまでを使えば、速くはありませんが、期待値通りの加速が得られます。こうした走り方で、終始走行できますので燃費も良くなるのは必然です。

これまで高級セダンといえば、大きなボディを大排気量ガソリンエンジンで加速させ、涼しい顔で燃料を大量に消費する姿が当たり前だと思っていましたが(筆者の思い込みかもしれません)、ディーゼルの長所をしっかりと引き出し、クレバーな運転をすることで、15km/Lを超える実燃費を達成する姿は、ディーゼルエンジンの完成形といえるかも知れません。

2台の試乗を終えた後、G30型のBMW5シリーズのコンセプト、「ビジネスアスリート」が意味することが何かを考えていました。セダンとツーリング、走りに関する全てが優秀なのですが、「BMWらしさとは何か」が感じられなかったためです。

その昔、BMW M5に乗った際、「何て扱いにくくて癖の強いクルマだろう」と感じつつも、思わずにやけてしまうような「凄み」を感じたのを思い出し、少し残念に感じてしまいました。

先進安全技術を満載し、デジタル液晶メーターで時代の最先端を感じさせ、完璧すぎる高性能セダンになったBMW 5シリーズ。これが悪いことだとは思いませんが、静かで速いクルマならば、メルセデスやアウディなど、他にもたくさんあります。「BMWらしい」と唸らされるような一癖が欲しかった、と言うのが筆者の印象です。

総評

<BMW 523d M Sport>

■コーナリング性能 9点 軽めの操舵力でコーナーを軽やかにやり過ごす。ボディの大きさ感じない。

■高速直進安定性  9点 ステアリングは常にセンターへ戻る力が働く。補舵力は軽め。

■乗り心地     9点 段差でショック小さめだが衝撃音があるためあと一歩。

■ロードノイズ   9点 常に静か。ロードノイズはあるが気にならない周波数のため気にならない。

■エンジンフィール 9点 トルクフルで滑らかで実用的なエンジン。コロコロ音が走り出しだけ。

■加速フィール   9点 特別速くはないが、低回転からグイグイと加速させるフィーリングは優秀。

■走りの質感    9点 どこをはしていても安心。路面との辺りがマイルド。

■居住性      9点 フロントシートが秀逸。足元のサイドシルは太く高いが後席の居心地は快適。

■インテリアの質感 8点 直線的でシンプルなインテリア。運転に集中できるコクピット

■コストパフォーマンス 7点 先進装備も充実し走行性能もこれ以上何を求めるのかというほど高性能だがディーゼルのベースモデルで800万円超は高い。

総合点 87点

コメント:軽やかな操舵力やフワフワしないダンピングの効いた乗り心地、低ロードノイズにプラスして、優秀な先進安全技術など、長距離を疲れ知らずに移動できる快適なセダン。ビジネスアスリートのコンセプトが表すのは何か?全てが優秀なだけにBMWらしさとは何かが感じられない。静かで速いクルマならばメルセデスやアウディなど他にもある。BMWらしいと唸るようなどこか一癖が欲しかった。

<BMW 523d xDriveツーリングM Spirit>

■コーナリング性能 8点 軽めの操舵力。セダンよりも応答ゲイン低め。フル転舵量も大きい。終始安定している。

■高速直進安定性  9点 ステアリングは中央に落ち着きある。補舵力は軽めで安定している。

■乗り心地     9点 段差でショック小さめ、衝撃音も小さい。フワフワせずダンピング効いている

■ロードノイズ   9点 常に静か。ロードノイズはあるが気にならない周波数のため気にならない。

■エンジンフィール 9点 トルクフルで滑らかで実用的なエンジン。コロコロ音が走り出しだけ。

■加速フィール   9点 特別速くはないが、低回転からグイグイと加速させるフィーリングは優秀。

■走りの質感    8点 どこを走っていても安心。リア方向からのノイズがフロントに来る印象ある。

■居住性      8点 フロントシート形状良い。後席は広く快適。荷室も広く有効活用できる。

■インテリアの質感 9点 直線的でシンプルなインテリア。本革の質感や手触りなどどれも一級品。

■コストパフォーマンス 7点 先進装備も充実し走行性能もこれ以上何を求めるのかというほど高性能。荷物を載せて、旅行やツーリングへ行く相棒としてベストレベル。だが価格は800万円超と高い。

総合点 86点

コメント:セダンよりもゲインを落としたおとなしいツーリング。操舵力やフワフワしないダンピングの効いた乗り心地など、セダン共通の良さを持ちながらも、ツーリングとしての仕事を全うする姿勢が見て取れる。ただし、走行性能に関しては、BMWらしさが感じられない。良く走るツーリングであれば、価格が200万円低いVW パサートヴァリアント等もあり、BMWを選ぶ理由が思いつかないのも事実だ。

吉川 賢一|よしかわ けんいち

モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。

吉川 賢一|よしかわ けんいち