ガソリン・ディーゼル・電気・水素…それぞれのメリットとデメリット

燃料電池車 トヨタ ミライ

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自動車を動かすためのエネルギー源といえばガソリンを思い浮かべるかもしれないが、軽油(ディーゼル)を使っているエンジンも多い。また、最近ではゼロエミッションといった排ガスを出さないクルマとして電気自動車が次世代車の有力候補となっている。

また、水素を用いた燃料電池も忘れることはできない。果たして、それぞれのエネルギー源はなにが異なり、どのようなメリットとデメリットがあるのだろうか。

文・山本 晋也

山本 晋也|やまもと しんや

自動車メディア業界に足を踏みいれて四半世紀。いくつかの自動車雑誌で編集長を務めた後フリーランスへ転身。近年は自動車コミュニケータ、自動車コラムニストとして活動している。ジェンダーフリーを意識した切り口で自動車が持つメカニカルな魅力を伝えることを模索中。

山本 晋也
Chapter
石油から3種類の燃料が生み出される
多様なエネルギーから電気は生まれる
水素はエネルギー消費が増えることも

石油から3種類の燃料が生み出される

ガソリンや軽油というのは石油(原油)を精製することで生み出される二次エネルギーである。そのほかLPG(液化石油ガス)も石油から生まれる燃料で、タクシーなど一部のクルマに使われている。

基本的なことをいえば、石油を精製するとガソリン・軽油・LPG・重油などが一定の割合で生まれると考えていい。石油由来の二次エネルギーについてはバランスよく消費することが無駄をなくすことにつながる。

さて、ガソリンと軽油についていえば大筋では炭化水素であるので特徴は似ている。炭素の成分が多いほど容積あたりの熱エネルギーは大きくなり、ガソリン1.0Lの持つ発熱量は7,973kcal、軽油は9,088kcalとなる。

軽油を使うディーゼルエンジンの燃費が良いというのは、こうした燃料自体の熱量が異なることも影響している。逆にいうと、最近の環境対策では重視されているCO2(二酸化炭素)排出量でいうと同じ燃費性能の場合は、ディーゼルエンジンのほうが多いということになる。

ディーゼルエンジンはその構造からNOx(窒素酸化物)の排出も課題となる。さらにPM(粒子状物質)についてもガソリンより軽油のほうが多い。そのためディーゼルエンジンというのは排ガスの処理にコストがかかり、車両代はガソリンエンジン車よりも高価になる傾向だ。

日本では税制の関係から軽油のほうが安くなっているが、そもそも同じ石油から生み出しているのでコスト自体は大きく変わるわけではない(実際には微妙にガソリンのほうが高コスト)。そのため、世界的にみると地域によっては軽油のほうが高くなっていることもある。

多様なエネルギーから電気は生まれる

このところ急激に市販車のエネルギー源として存在感を増しているのが電気だ。電気は石油・石炭・太陽光・風力・原子力など様々な一次エネルギーを転換して生み出すことができる二次エネルギーである。

そして、どの一次エネルギーから生み出しても使い勝手が変わらないというのもメリットだ。再生可能エネルギーで発電すればCO2の排出はゼロとカウントできるのも環境対応の観点からはアドバンテージとなっている。

ただし自動車のエネルギー源として使うときの課題は充電にかかる手間や時間だ。急速充電でも10分単位で時間は必要となるし、急速充電自体がバッテリーを傷めてしまう。

かといって普通充電では一晩コースであり、現実的には駐車場などに個人で充電設備を用意しなくてはならない。どうしても運用面でのハードルが高くなってしまうのはデメリットだ。

さらに、バッテリーの単価はまだまだ高く、バッテリーを積むほど車両価格は上がってしまう。車両価格を抑えようとバッテリー搭載量を減らすと、航続可能距離が短くなってしまうというのは電気自動車のジレンマだ。なお、生産時のCO2排出量削減を考えると電気自動車バッテリーは必要最小限にしておくべき、というのが最新のトレンドだ。

水素はエネルギー消費が増えることも

電気と並んでゼロエミッション(走行中に排ガスを出さない)なクルマのエネルギー源として期待されているのが水素だ。かつては水素を使うエンジンというアプローチもあったが、現在では水素と大気(酸素)を反応させて発電する水素燃料電池を積んだクルマを想定しているケースが大多数となっている。

水素というのは工業製品の副産物として生まれることもあるが、「水素社会」という呼び方をする場合には、電気によって水分解をして水素を生み出すことを前提としていることが多い。つまり水素は三次エネルギーといえる。

なぜゆえに電気を使ってわざわざ水素を生み出すのかといえば、電気を溜めておくことがコストの面から難しいからだ。太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電は、需要に応じて発電量をコントロールすることが難しい。そのため、いったん電気を溜めておく手段を考えなくてはならない。

ひとつにはバッテリーを使うという手もあるが、それだけではカバーしきれないということで、電気を水素に変換して溜めておくという方法が考え出された。それを、ある程度の地域全体での安定したエネルギー供給として利用するのが、いわゆる水素社会モデルだ。

水素というのは、再生可能エネルギーによる発電に比率がもっと高くなったときに有効になる手段であり、火力発電や原子力発電が主流の世界においては未来の話といえる。そのためゼロエミッションの現実的な解としては電気自動車が主流と考えられている。燃料電池車が主役になるには、まだまだ時間がかかるだろう。

ただし水素の充填というのは、電気を充電するのに比べると非常にスピーディーであり、使い勝手でいえば現在の化石燃料を使う自動車に近い。そこがメリットとして強調されるが、水素の充填には多くのエネルギーを使ってしまうのは課題だ。

各自動車メーカーが考えている燃料電池車は圧縮水素を使うタイプだが、その圧力は70MPa(約700気圧)以上であり、充填や水素タンクの製造時に消費するエネルギーも少なくない。
パリ協定で決められたCO2排出量の削減を実現しつつ、文明的な社会を維持するには、再生可能エネルギーによる発電を増やすのが目指すべき道といえる。ロードマップを考えると、しばらくは電気自動車が主流となり、その後水素社会へとなったときに燃料電池車がクローズアップされてくるという未来が想像できる。

仮にCO2を分解して炭素と酸素にわける人工光合成のような技術がコスト的に可能なレベルで確立して、大気中のCO2濃度を自由にコントロールできるようになれば、ゼロエミッションにこだわる必要がなくなるわけだが、未来はどのようになるのだろうか。
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