教習所では教えてくれない?運転に最適なブレーキの踏み方を自動車ジャーナリスト、岡崎 五朗氏が解説

ブレーキペダル

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先日Facebookにペダルの正しい踏み方について書いたところ大きな反響があった。皆さん、やはりペダルの踏み間違い事故に関心があるようだ。僕は踵をフロアに付けたまま、右足をひねるようにしてアクセルとブレーキを踏み換えている。他のモータージャーナリストも、レーシングドライバーも、ほぼ例外なくこの踏み方を実践している。ところがドライビングレッスンの講師をしている同業者に聞いたところ、受講生には踵を浮かせてブレーキを踏んでいる人が案外多いのだという。

文・岡崎 五朗

Chapter
足を浮かせてブレーキを踏んではいけない
なぜ足を浮かせてブレーキを踏んでしまうのか
正しいブレーキの踏み方は次のように

足を浮かせてブレーキを踏んではいけない


踵浮かせブレーキの問題は2点ある。ひとつは繊細なコントロールがしにくいこと。昔のクルマのブレーキは効きが悪かったから、踵を浮かせて足全体の力でしっかり踏み込んでやる必要があった。しかし最近のブレーキは軽い力でも十分に効く。逆に強く踏みすぎるとかっくんブレーキになってしまう。だから、踵をフロアに付けた状態で、足首の力を使ってジワリと踏むほうがスムースなブレーキングができる。

もうひとつの問題は、アクセルとブレーキの踏み間違いを誘発する可能性が高いということだ。踵を浮かせたまま踏み込むということは、当然、踏み替え時も踵を浮かすことになる。その際の足の動きは踵支点の「ひねり」ではなく、踵を浮かせた「左右移動」。実際に試してみれば実感できると思うが、踵を浮かせた左右移動では、足の下にアクセルペダルがあるのかブレーキペダルがあるのかを感覚として掴みにくい。

キーボード操作を想像すればわかりやすいだろう。左の人差し指をF、右の人差し指をJに置く「ホームポジション」があるからブラインドタッチができるわけで、手をキーボードから完全に離してしまったら、目で見ずに狙い通りのキーを打つのは至難の業になる。実際、「踵を浮かせて踏み換える人のほうが踏み間違いをする確率が高い」という研究結果もある。

なぜ足を浮かせてブレーキを踏んでしまうのか


ではなぜ踵を浮かせる人がいるのか? 実は教習所で「ブレーキは踵を浮かせて踏みなさい」と教えているのだ。理解に苦しむが、おそらくブレーキの効きが悪かった時代につくられたカビの生えたような基本をアップデートせず、後生大事に守り、教え続けているのだろう。その結果、踵を浮かせてブレーキを踏む人が後を絶たない。まったくもって迷惑な話しである。ABSが普及したいまなおポンピングブレーキを使いなさい、と教え続けているのと同じ構造だ。

時代が変わればクルマも変わり、クルマが変われば運転方法も変わる。となれば教習所の教え方も変わるべき。それをしないのは怠慢以外の何物でもない。ただし悪いのは教習所ではなく、技能教習指導要綱を定めている国にある。話はそれるが、警察の天下り団体である交通安全協会が仕切っている免許更新時の講習にも同じ臭いを感じる。

ABSESC(横滑り防止装置)に加え、多くの先進運転支援システムなど、クルマの技術はどんどん進化している。にもかかわらず、そういうことには一切触れず退屈なビデオでお茶を濁すだけ。すべてのドライバーが受ける免許更新時の講習は知識をアップデートする絶好の機会なのに、本当にもったいない。

正しいブレーキの踏み方は次のように


国が頼りにならない以上、クルマメディアがきちんと伝えるしかないということで、ここでは改めて正しいペダルの踏み方を紹介しておこう。

ペダルレイアウトや身長、足のサイズによって微妙に変わるが、基本は次の通り。

①踵はブレーキペダルの正面に置き、②ブレーキは踵を床に付けたまま踏み込む。③アクセルに踏み換えるときは踵を床に付けたまま足を捻る。④もちろんアクセルも踵を床に付けたまま踏む。⑤ブレーキに踏み換えるときは踵を付けたまま捻っていた足を元に戻す。

なお、危険回避時の急ブレーキはドンッと一気に強く踏み込むことが求められるため、踵は自然と離れる。とはいえこのときも踵を意識的に浮かせる必要はない。

クルマが停まっているときに試してみて欲しいのだが、ブレーキを徐々に強く踏み込んでいくと、ある時点から自然と踵が浮いてくる。つまり、踵を付けたまま踏む癖がつくと急ブレーキが踏めなくなるのでは?という心配は無用ということ。いざというときは躊躇せず力一杯ブレーキを踏む(感覚的には蹴るに近い)ことを意識しておけば大丈夫だ。

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