BMW 330I Mスポーツ "単なる正常進化"だけではない注目の最新技術を解説

サステナ 島下泰久 BMW 330i

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欧州Dセグメントと括られるミディアムサイズセダンのベンチマークであり、またスポーツサルーンの定番。歴代BMW3シリーズは、これまで常にそういう存在であり続けてきたわけだが、昨年発表された新型がまず驚かせたのは、実はその凄まじいほどのハイテクカーへの変身ぶりだった。このクルマ、単なる正常進化ではない。

文・島下 泰久/写真・難波 賢二
Chapter
改めて気付かされる運転支援のありがたさ
ステアリングから伝わるレベルの高さに思わず顔が緩む
OK、BMWから始まる、クルマとの新しい対話

改めて気付かされる運転支援のありがたさ

たとえば、今や当たり前の装備となっている衝突回避・被害低減ブレーキやアダプティブクルーズコントロールには、初めて3眼カメラとレーダーの組み合わせが用いられている。

3つのカメラは約300メートルまで検知して視野角度は28度という遠距離、約120メートル先まで検知して視野角度は52度という中距離、そして検知距離は20メートルほどだが150度もの視野角度を持つ短距離と役割が分かれていて、これとレーダーの組み合わせにより、周辺状況の認識性能を格段に高めているのだ。

実際にアダプティブクルーズコントロールを試してみると、はるか前方の車両の存在までよく認識し、奥の深いコーナーでの追従性、そして車線内の位置取りの精度も明らかに向上している。

前走車に続いて完全停止したり、再加速する際の挙動もスムーズで、心地よく走ることができる。衝突回避支援ブレーキも、より素早く、精度の高い介入が期待できるだろう。

そして、駐車可能なスペースの検知にはステアリング操作だけでなくアクセル、ブレーキ、前進と後進のギア選択まで自動で行ない、縦列駐車も並列駐車も完全に自動でやってのけるのがパーキング・アシスト・プラス。縦列駐車した車両を発進させる際のアシスト機能まで備わるから、これがあればもう駐車は苦手なんて言葉、過去のものになりそうだ。
また、狭い路地や駐車場などで、50メートルまでの距離をそのまま戻ることを可能にするリバース・アシストも用意される。スーパーの狭い駐車場に入っていったら奥まで空きが無いと分かり、しばらくバックで戻らなければならない……なんて時に、まるで巻き戻しをするかのように今走ってきた軌跡を忠実に戻ることができるのだ。

そんなに頻繁に使う機能ではないかもしれないが、一度でも使うことがあれば、きっと「あって本当に良かった」と思う機能だろう。

そして室内では、IPA(インテリジェント・パーソナル・アシスタント)によって、会話をするようにクルマを操作することができる。「OK,BMW」という発話で起動して、音声によってナビゲーションやオーディオ、空調の操作等々を行なうことが可能なのだ。

更に、呼びかけのコマンドは、たとえば「サンサンマル」でも「おいお前」でも「優ちゃん」でも「しずちゃん」でも自在に設定できるから、クルマとの関係、更に親しく感じられるようになるに違いない。

走りがどうこうということよりも、まず将来の自動運転に繋がるような運転支援技術や、高度なインフォテインメント機能への注目が集まるのが、今の時代である。新型3シリーズは、圧倒的な先進性でそうした世の流れにしっかりと応えてみせたわけだが、そこはBMWだけに、当然それだけに終わるはずはない。

実はクルマの愉しさの基本であり、BMWのアイデンティティと言ってもいい走りの基本性能に関しても、新型3シリーズは徹底的に作り込まれている。

ステアリングから伝わるレベルの高さに思わず顔が緩む

試乗したBMW 330i Mスポーツで、何より頬を緩ませたのが、そのフットワークである。まさに意のまま、ステアリングを切り込んだ通りに正確無比に向きが変わるコーナリングは、交差点ひとつ曲がるだけでも爽快な気分になれるほど。

その快感はペースを上げていっても失われることはなく、余計な姿勢変化を抑えつつもクルマの状況はしっかりとドライバーに伝達しながら、美しいフォームで旋回していく。

唯一、オプションの19インチタイヤを履いていた試乗車の乗り心地は結構締め上げられた感触で、路面によっては車体が細かく上下するのが気になった。しかしながらボディ剛性高く、安っぽい感触を伝えてくることはないし、何よりこのフットワークを味わってしまうと、まあ及第点かなと個人的には思えた。

更に言えば、走り込めばもう少しこなれてくるだろうという話もある。クルマを育てるつもりで乗るのも悪くはない。

330iという名前でも、エンジンは今や2リッターターボとなるが、最高出力258ps、最大トルク400Nmというスペックは十分なものだし、吹け上がりやレスポンスに過給ユニットのネガを感じさせることもなかった。

実は昔からBMWは4気筒だって気持ち良いエンジンを作ってきたのだ。もちろん、これまでだってBMWは、あるいは3シリーズは、走りの気持ち良いクルマだった。それを踏まえて新型は、更に高いレベルの操る歓びを備えている。

OK、BMWから始まる、クルマとの新しい対話

このクルマは単なる正常進化ではないと評したのは、ひとつにはハイテクの充実ぶりから。それらは装備表を賑やかすためのものではなく、実際に非常にツカエるものばかりで、人とクルマとの付き合い方を変えてしまいそうなほどの説得力がある。

そして、もうひとつがその走りっぷりで、その仕上がりは従来の延長線上、期待通りというレベルではなく、これまでにないほどの跳躍ぶりを感じさせるのだ。

冒頭に、このセグメントのベンチマークだと書いたBMW3シリーズだが、近年はライバルたちも強力で、セールスにしても存在感にしても圧倒的というほどではなくなっていた。新型は、そんな現状を打破するべくあらゆる面で、今の時代に相応しい大幅な進化を果たすことで、定番としての地位を奪還せんとする超・意欲作なのである。

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