BMW 8シリーズ クーペ試乗インプレ|最上級クーペの乗り心地
更新日:2024.09.09
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約20年の時を経て2代目にスイッチしたBMW8シリーズ。その中でもフラッグシップモデルと言っても差し支えないクーペに試乗、その官能的とも言える走りの素晴らしさをお届けする。
文・高山正寛/写真・萩原文博
文・高山正寛/写真・萩原文博
BMW 8シリーズの最上級クーペにふさわしい美観と実用性の高い内装
新型8シリーズクーペの日本での発意開始は2018年11月9日、報道資料によれば「美しさと速さの新次元を提唱するラグジュアリー・クーペ」と記されている。
まあこういうプレスリリースの類いはそのプロダクトの最も訴求したい部分を記載するものだから試乗するまではあくまでも知識のひとつとして頭の中にインプットする程度にしていた。
しかし実車を見て正直驚いた。単純に美しい、と言うつもりも無いがフロント、リア、サイド、また視線位置を上下するだけでもこのクルマの多面的とも言える伸びやかさが伝わってくる。特にルーフからリアセクションへの角度などは絶妙で一瞬「まさか大型のハッチゲート?(そんなことはないが)」と思わせるほど。
全体的には初代の販売後にこのカテゴリーを牽引した6シリーズとそれ程サイズ感には差はないが、フロント周辺の力強さとリア周辺の流麗な仕上げが富裕層を納得させるだけど“アート”としての美しさも醸し出している。
クルマに乗り込んでみると昨今のBMWデザインの流れに沿った仕上がり、もちろん本革とメタル素材をバランス良く配置し、過剰な豪華さではなく、そこには風合いも含めた上質さうまく演出している。
操作系、特にセンターコンソールはドライバー側にオフセットされているが、一番良いと思ったのがいわゆるドラポジの調整幅が大きく、身長160cmの筆者でも適切なポジションを得ることができた点だ。どこのメーカーとは言わないが、欧米などを主要マーケットにする低く着座させるクーペの場合、スライド量は確保されていても筆者のように足の短いユーザーでは最も前にスライドさせた状態でもほんの少しだけ“足りない”ケースも実際にある。
そんな馬鹿な、という意見もあるだろうが、こればかりはそういう体型の人で無ければわからない悩みでもある。調整機構は十分なものでしっかりとしたドラポジはもちろん、インストルメントパネルから見える左右も含めた前方の視界の良さも手伝って、全幅1900mmの大型ボディをあまり感じさせない。
操作系、特にセンターコンソールはドライバー側にオフセットされているが、一番良いと思ったのがいわゆるドラポジの調整幅が大きく、身長160cmの筆者でも適切なポジションを得ることができた点だ。どこのメーカーとは言わないが、欧米などを主要マーケットにする低く着座させるクーペの場合、スライド量は確保されていても筆者のように足の短いユーザーでは最も前にスライドさせた状態でもほんの少しだけ“足りない”ケースも実際にある。
そんな馬鹿な、という意見もあるだろうが、こればかりはそういう体型の人で無ければわからない悩みでもある。調整機構は十分なものでしっかりとしたドラポジはもちろん、インストルメントパネルから見える左右も含めた前方の視界の良さも手伝って、全幅1900mmの大型ボディをあまり感じさせない。
また後席は基本はプラス2的なサイズではあるが、自分の身長であれば意外と我慢できるレベルでもある。背もたれの角度はやや立ち気味とはいえ、シートやクッション自体に手抜きはなく、近距離であれば十分快適だったりする。
昔から感じていることだが、BMWのクーペモデルは一定の後席快適性や実用性をキープできているモデルが多い。スタイリングを重視することで後席は子供程度しか座ることが出来ない国産モデルとは正直根本的に考えが違うのでは、と思えるほどだ。
実際、大型クーペとはいえ、ラゲージルームのスペースも420Lを確保、単純に数値だけで無く奥行きも深く50:50の分割可倒機構を活用すれば長尺物の積載も可能だ。日本市場だから、と言うつもりはないが、この奥行きならば9インチクラスのキャディバッグも2個縦に積載することができそうだ。
BMW 新型8シリーズは路面に吸い付く様にワインディングを駆け抜ける
走りの質感に関しては走り出してすぐに「ああ、高級クーペとはこういう物なのか」と感じさせるインフォメーションが伝わってくる。大型サイズのランフラットタイヤを装着しながら走り出し、特に最初にステアリングを切った瞬間の路面に対し吸い付くような感触、もっと言えばその後の余韻のようなものを感じる。
正直に言えば筆者はそれほど高感度なセンサーもドライビングスキルも持ち合わせてはいない。それでも自分が行きたい方向に対しあくまでも精緻な動きを見せてくれる点は見事である。
制限速度の中でワインディングを走ってもその感覚は同様、というかコーナリング時の速度に対しての車両の動きが本当に正確なのである。もちろん電子制御4WDである「xDrive」や後輪操舵機構である「インテグレイテッド・アダプティブ・ステアリング」の恩恵による部分は十分にあるのだが、根本的にそれらが介入していることを極力感じさせない仕様になっている。
搭載する4.4LのV8エンジンに関してもスペック云々で語る必要はないだろう。正直8シリーズクーペより最高出力の高いクルマは存在する。
しかし、軽く足をアクセルペダルに乗せた直後から十分なトルクを発生し、1990kgという重量のボディをスムーズに加速させるトルクの厚さなど市街地から高速道路までそれぞれのシーンで最適な加速を得ることができるほうが日々の使用には適している。
もちろん、アクセル開度を増やせば“未体験ゾーン”な加速が得られることは言うまでもない。
しかし、軽く足をアクセルペダルに乗せた直後から十分なトルクを発生し、1990kgという重量のボディをスムーズに加速させるトルクの厚さなど市街地から高速道路までそれぞれのシーンで最適な加速を得ることができるほうが日々の使用には適している。
もちろん、アクセル開度を増やせば“未体験ゾーン”な加速が得られることは言うまでもない。
BMW 新型8シリーズには最新UI、BMWオペレーティングシステム7.0を導入
最後に今後のBMW車にも搭載されていくであろう新時代のUI(ユーザーインターフェース)である「BMWオペレーテングシステム7.0」にも触れておく必要があるだろう。将来の自動運転なども視野に入れた際、車両が持つ情報を正確かつ必要に応じてドライバーに伝達させる機能は重要な要素である。
もはやメーター類は液晶パネル等を使うことで表示項目も含めたデザインの自由度は圧倒的に向上しているし、インストルメントパネルに設置されるディスプレイもカーナビや空調だけで無く、走行モードの設定など多彩な機能が求められていくことは間違いない。走りやデザインも重要ではあるが、今後自動車メーカーの腕の見せ所も含めUIの差別化も求められていくことになる。
もはやメーター類は液晶パネル等を使うことで表示項目も含めたデザインの自由度は圧倒的に向上しているし、インストルメントパネルに設置されるディスプレイもカーナビや空調だけで無く、走行モードの設定など多彩な機能が求められていくことは間違いない。走りやデザインも重要ではあるが、今後自動車メーカーの腕の見せ所も含めUIの差別化も求められていくことになる。
ディスプレイは大きく2つ、メーター系は12.3インチのフルデジタル仕様、インパネ系は10.28インチが採用されている。表示項目に関しては各社独自のデザインを行っているが、昨今の流れとしてはメーター内にナビ画面などを表示することで横方向への視線移動を低減させるなどの効果も狙っている。
またUIとしてはこれまでも採用されていたステアリングスイッチやBMW独自のiDriveなどにプラスして音声認識や市販カーナビなどでも使われてきたジェスチャーコントロールを備えるなど進化してきている。ただジェスチャーや音声認識に関しては人によってはうっとおしいと感じる部分もあるかもしれない。
それでも空調系のメカスイッチ類は残っているし、要はそれらを全部使う必要は無く、自分が使いやすいUIの利用比率を高めれば良いだけだ。そのための間口の多さをこの8シリーズクーペも用意してあるという認識でいいだろう。
またUIとしてはこれまでも採用されていたステアリングスイッチやBMW独自のiDriveなどにプラスして音声認識や市販カーナビなどでも使われてきたジェスチャーコントロールを備えるなど進化してきている。ただジェスチャーや音声認識に関しては人によってはうっとおしいと感じる部分もあるかもしれない。
それでも空調系のメカスイッチ類は残っているし、要はそれらを全部使う必要は無く、自分が使いやすいUIの利用比率を高めれば良いだけだ。そのための間口の多さをこの8シリーズクーペも用意してあるという認識でいいだろう。
高額車であることは当然として富裕層からすればブランド力や走りの良さ、さらに快適性や所有欲まで全てを満たす存在でなければならない。多忙なオンタイムに対し、休日などのオフタイムの夫婦でゴルフや小旅行時にも移動の楽しさを満たしてくれる存在であることは間違いないだろう。
高山正寛|たかやませいかん
1959年生まれ。自動車専門誌で20年以上にわたり新車記事を担当しフリーランスへ。途中5年間エンターテインメント業界でゲーム関連のビジネスにも関わる。カーナビゲーションを含めたITSや先進技術のあらゆる事象を網羅。ITS EVANGELIST(カーナビ伝道師)として自ら年に数台の最新モデルを購入し布教(普及)活動を続ける。またカーナビのほか、カーオーディオから携帯電話/PC/家電まで“デジタルガジェット"に精通、そして自動車評論家としての顔も持つ。リクルート出身ということもあり、自動車をマーケティングや組織、人材面などから捉えるなど独自の取材スタンスを取り続けている。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。