新型 アウディ A6アバント 最新のテクノロジー満載のユーティリティーカーに迫る

アウディのアッパーミドルクラスのセダン/ワゴンであるA6/A6アバント。1968年にアウディの主力車種として開発されたアウディ100がルーツです。A6は、その後継モデルとして1994年にデビューしました。今回のモデルチェンジで5代目。セダンのA6と、ステーションワゴンのA6アバントの2つのボディタイプを持っています。新型A6/A6アバントの特徴は、48Vマイルドハイブリッドドライブシステムの搭載と、進化した4WDシステムであるクワトロが作り出してくれる走りのパフォーマンス。そして先進のデジタル技術がもたらすインターフェースとドライバーアシスタンスシステムにあります。

文・斎藤聡/写真・宮越孝政

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新しいテクノロジーが満載 アウディ A6 アバント
アウディA8の高級感とA4のフットワークの良さを備える
マイルドハイブリッドが絶妙に加速のアシストをしている

新しいテクノロジーが満載 アウディ A6 アバント

A6/A6アバントはフルモデルチェンジされ2019年3月に日本に導入されました。起伏に富んだフェンダーの造形は、エレガントで上品なデザインに仕上がっていて、アッパーミドルクラス・セダン/ワゴンにふさわしいデザインとなっています。プラットフォームは、MLB-Evoと呼ばれる新世代のモジュラー(骨格)構造で、A4からA8まで採用されているものです。

エンジンは3リッターV6 TFSI(直噴ターボ)で、最高出力340馬力、最大トルク500Nmを発揮。これにベルト駆動式オルタネータースターター(発電機)とリチウムイオンバッテリーで構成される48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされています。

駆動方式は新世代のクワトロシステム(4WD)であるクワトロ・ウルトラテクノロジーを採用。これはA4に採用されたシステムと同様で、走行中トランスファー部とリヤデフ部の両方で機械的にプロペラシャフトを切り離し、FWD走行にもなるものです。マイルドハイブリッドシステムとウルトラテクノロジーの組み合わせによって、55~160km/hの間でコースティング(惰性)走行状態も可能になっています。

ドライビングパッケージのセットオプションになりますが、ダイナミックオールホイールステアリングと呼ばれる可変ステアリングギヤレシオと4輪操舵が組み合わさったシステムも用意されています。操縦性の向上はもちろん、後輪がおよそ60km/h以下で最大5度逆位相側に切れ、小回りが利く取り回しの良さも備えています。

このような最先端のテクノロジーを備えたA6ですから、ドライバーアシスタンスシステムも最新のシステムで、アダプティブクルーズコントロールとアクティブレーンアシストと、それらを組み合わせたトラフィックジャムアシスト機能で構成されています。0—250km/hの間で作動し、フロントセクションを中心にクルマ周囲に配置されたレーダー、カメラ、超音波センサーを駆使してクルマの周囲を監視し、あるいは衝突の危険がある時はアシストを行うというものです。

アウディA8の高級感とA4のフットワークの良さを備える

試乗してまず感じるのは、そのしっとりどっしりとした乗り味です。重厚というのとは少し違いますが、落ち着きがあり、それでいながら足腰の強さからくるフットワークの良さを備えているといった感じでしょうか。

MLB-Evoプラットフォームは、A8にも採用されその重厚で高級な乗り味を作り出している一方、A4では足腰の強靭さを感じさせるフットワークの良さを発揮しています。A6の乗り味はちょうどその中間といったところ。

と同時に感心したのは可変ギヤレシオステアリングと4輪操舵の絶妙なセッティングです。低速では最大5度逆位相に切れるというこの4輪操舵システムですが、その差動にまったくと言っていいほど違和感がないのです。ステアリングだけがやたらにクイックな印象、ハンドルを切るとクルマが予想より内側に切れ込んでしまう動き、が不思議なくらい感じられないのです。

それでいてタイトなコーナーはするりと小さく回れるし、速く大きなコーナーではドシッとした安定感があります。まるでホイールベースが伸び縮みしているかのような不思議な取り回し感を持っています。

また関心させられたのは、ちょっと急いで高速道路やワインディングロードを走った時の動きの穏やかさです。ドキッとさせられるようなクイックな動きが上手に抑えられ、それでいて路面を正確にトレースするような安定感と安定性があります。

では4WDはいったいどんな具合に仕事をしているのかというと、予想よりもFFで走っている時間が長く、駆動方式からくる軽快感が感じられました。

特に高速道路の一定速での巡航や、郊外路軽い下り区間では、すぐさまFFになってフリクションロスを減らすような感覚があります。

正直に言うと、この時は4WDならではの安定感は(当然ながら)ありません。それを感じさせる軽快な感触も確かにあるのですが、その一方で、シャシーの良さからくるヒタッとタイヤが路面に接地する安定性と安定感があります。

もちろん横風や路面のうねりなど外乱があれば知らない間に4WDになっていて、安定性を作り出してくれます。

以前ドイツを1,500kmばかりドライブした時、アウトバーンでもっともアベレージスピ―ドが高いのがアウディでした。他の欧州車が130km/hくらいで落ち着いているのに対し、アウディは150km/hくらい出ている感じ。1台や2台ではなく、多くのアウディがそのようなスピードで走行しています。”飛ばしている”感じではなく、そのスピードが”通常”なのです。そんなシチュエーションになった時、A6どのくらいのスピードで走るのか気になるところではありました。

マイルドハイブリッドが絶妙に加速のアシストをしている

エンジンは、3L V6 TFSI (直噴ターボ)+マイルドハイブリッドのみで、最高出力340馬力、最大トルク500Nmを発揮。このパワーのあるエンジンに7速Sトロニックを組み合わせます。正直、このパワーのあるエンジンにマイルドハイブリッドのモーターの効果があるのか?という疑問が頭の隅にありましたが、効果は想像以上に大きなものでした。エンジンが物理的に苦手なアイドリングから2,000回転くらいのトルクの細さを見事に補完して滑らかに加速してくれます。

アウディはアクセルに対するレスポンスが比較的マイルドにセットアップされています。これはこれでエンジンを神経質にしない効果があるので好ましい面もあるのですが、マイルドハイブリッドは、モーターのレスポンスの良さがピックアップのマイルドな部分を補う形で、素早く反応してくれるので、案外シャキッとしたストロットル感覚になっています。そしてちゃんと過剰にならないようにモーターの駆動トルク制御しているので、注意深く観察していないとモーターの存在感さえ感じさせないほどです。

ターボが効きだすまでのラグも上手く補っているし、80キロ巡航で高速道路を走っているとコースティングモードに入って、滑るように(というのがクルマに適切な表現かわかりませんが)スーッとタイヤが転がっていってくれるフリクション0のライド感覚も味わえます。

また、荷室の最大容量は530L(セダン)、1680L(アバント、座席も全て倒した状態)という広大なスペースを確保するなど、セダンとして、ワゴンとして、素晴らしい実用性と、上質な乗り味を備えたクルマに仕上がっていることは間違いありません。メルセデス・ベンツのEクラスやBMWの5シリーズをライバルに置く激戦区であっても十分に存在感と魅力を発揮できるクルマであると思いました。

そうした魅力や恩恵を感じる一方で、フルタイムで4WDでない物足りなさも感じないわけではありません。今のシステムでは、むしろ常時4WDにする方がデメリットになるのでしょうが、無駄の面白みとか愉しさが一つ少なくなってしまったのが、個人的にはちょっと残念な部分ではありました。

斎藤 聡 | SATOSHI SAITO

モータージャーナリスト。車両のインプレッションはもちろん、タイヤやサスペンションについて造詣が深く、業界内でも頼りにされている存在。多数の自動車雑誌やWEBマガジンで活躍中。某メーカーのドライビングインストラクターを務めるなど、わかりやすい解説も人気のヒミツ。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カーオブザイヤー選考委員。

斎藤 聡 | SATOSHI SAITO